私は労働条件を賃上げと同時に見直すことで本人たちと企業が共にワークデザインをすることが出来るため、社員や従業員から見ると“会社に対して交渉できる機会”として捉え、企業側から見ると“社員からの意見や意思を確認出来る機会”としてそれぞれ捉えられるのが望ましいと思う。

 

 しかし、現在はどちらかというと企業が優位に立ってしまっていることで、あらゆる部分において不満や企業と社員および従業員の関係が好ましくないなど個人が尊重されるべき部分が適正な状態になっていないというケースが多く、本人たちがキャリアデザインを考えるときにマイナスイメージやマイナスポイントとして挙げられる部分である事は間違いないだろう。

 

 そのうえ、これらの問題を企業側がどのように捉えているかも重要なのだが、これらの問題に政府や厚生労働省がこれらの問題をどのように捉え、慢性化しているもしくは早急な事態解決を求められている場合であっても改善に動かないという事態も見方によっては“人材不足・人手不足”を誘発していると取れるポイントである。

 

 なぜなら、これらのポイントは人材活用の観点から見ると問題がないように見えるのだが、これらの問題を異なる複数の観点から見ていないことで問題の発生構造を十分に理解しないまま放置されていることで事態が時間の経過と共に悪化していっているという可能性があるのだ。

 

 例えば、賃上げによる人事評価の評価基準の改定が行われた場合にこれまでは一定の評価を得られていた人材の評価が下がるという事で雇用面や人間関係における他者評価の変化など本人の社会的評価に影響を与えることで、本人の社内における立ち位置や扱いに変化が起こる可能性があり、この事が本人の企業等における帰属意識の変化につながることも想定できるのだ。

 

 そして、このような状況が今後増えていくことで企業が求める人材が企業で長年活躍するのではなく、独立など異なるベクトルが存在することで企業が賃上げをしたとしても本人の価値が社会的に認められるなど社会的公益性が高まっている場合には残留を選択するということは考えにくいのだ。

 

 そのため、上位企業は採用人数に対して離職者の割合が少ないため、人材流出率は低いのだが、中身を見るとかなり致命的な人材流出が発生しているというケースもある。

 

 この事が社会において“人材不足・人手不足“だけでなく、企業の”役員・役職者不足“につながる可能性があることから、当該企業における問題が1つではなく複数の観点から起きる可能性が出てくるのだ。