現在、政府や日本経済団体連合会や各業界の組合などが“賃上げ”に向けた協議が行われている。

 

 しかし、最近の経済動向を注視していると賃上げを出来る企業は少ないように感じる。

 

 なぜなら、現在の社会構造を見てみると大企業と上位の中小企業以外はかなり苦戦を強いられているだけでなく、賃上げを進めたいと思っても賃上げに必要な原資が不足しているもしくは確保出来ないという状況になることや固定費の高騰による内部留保の転用が必要になる状況も今後は更に拡大していく事が想定されている。

 

 そのため、賃上げをするために卸値や小売価格に上乗せする形で価格を値上げすることが求められるが、この値上げを行う事で取引先を失う可能性がある事や直接販売するにもある程度の社会認知度や市場を開拓し、ある程度のお客さんを確保しておかなくてはいけないため、マーケティングなどのアクションを起こすことが求められる。

 

 ただ、マーケティングするにも難しいのが“担当者の体験・経験がどの程度あるか”という判断だ。

 

 これは売上に直結する部分であるため、企業にとっては人材選択を慎重になるが、スタートアップ企業や小規模ベンチャー企業にとってはこの部分でつまずくということも考えられる。

 

 そのうえ、現在の転職市場を考えるとこれらの企業への転職をするにもある程度の実績を必要とすることもあり、給与額が高額であってもある程度の認知度を求められるため、人材確保の段階から苦戦を強いられる事も十分に考えられる。

 

 私は賃上げを進める事は大事だと思うのだが、忘れてはいけないのは“経済サイクルの安定”だろう。

 

 これは私が現在の社会状況から考えて、最も停滞する可能性が高いと推測している部分であり、経済サイクルが止まるということは連鎖的な影響が広範囲に及んでしまい、不安定要素の発生予防措置として一部で賃金を上げたとしても、それ以外で賃金が維持されているもしくは下がってしまい、安定的な利益を計上できない状況になってしまい、再び賃金改定が行われるというデフレサイクルの発生や賃金格差の拡大により、個人消費活動が困難になったことで個人単価が下がってしまい、経済が止まってしまうという状況になってしまっては元も子もない。

 

 そのうえ、仮に企業で賃上げが実現できたとしても取引先でお客さんが商品を買ってくれないと取引先の利益につながらないため、取引先の利益につながらないということは次回以降の受注に影響が出ることになるなど関係先の経済が回らないと次の賃上げにはつながっていかないということになるため、企業にとっても企業努力をしながら次の賃上げに繋げたいという心理がこれからの企業には芽生えていくことになるだろう。