実際にある企業が決めたルールに対して反旗を翻した同業他社が団結して当該企業を公正取引委員会に通報しようとしたこともあるくらい給与額や待遇等に関する格差は業界全体の企業の立ち位置や影響力にも関係してくることになるため、適正な採用活動が出来なくなる可能性を秘めているのだ。

 

 しかしながら、この問題に関して十分な対策がされているとはいいがたい状況にあることから、現在も企業間の公平性が担保されていない状態が継続的に見受けられるなど企業の待遇改善の道筋が十分に示されていないように思える。

 

 その背景として考えられるポイントはいくつかあるのだが、これらの背景を生んでいる原因としては合致しない部分も多い。

 

 これは私の観点から見た考察なのだが、現在は業種によっては何百社・何千社という大規模な企業の集合体になっている事も多く、これらの相互関係性を見ていくとその業界内のみで展開している企業よりも異業種を含めた幅広い業務内容を持つ企業の方が多い事から当然後者が力を持ちやすいという事が想定できるのだが、これらの企業においても“年功序列”に近い考え方があることから力を持っている企業が一方的に“取引ルール”や“転職ルール”などを決定して、同業他社に遵守させるという越権行為が横行しているようにも感じる。

 

 その他にも社内規定等の社内独自のルールが同業他社と解離していることで取引などを行う際にトラブルになることや転職をした際に同業他社に移ったとしてもこれまでの価値観や捉え方・考え方が異なってしまうとその環境に順応するまでに適正な精神衛生を維持する事が難しくなる可能性やその間にハラスメント行為が発生する事で体調不良に陥ってしまうという可能性もあるのだ。

 

 このように企業におけるルールというのは“協調”や統率“といった部分で良い効果をもたらす反面、このようなルールが個人の”拘束“や”束縛“といった問題を引き起こす可能性もあることから業界内共通ルールを作成するなど1社毎に完全に異なるルールを持つのではなく、共通部分を保持しながら企業独自のルールを併用することも同業他社と足並みを揃える意味でも重要である事や共通部分を持たせる事で給与等の企業紛争の原因となるポイントでの争いを減らす役割を担えるという事も考えられるのだ。

 

 そして、現在過熱しやすいと言われているのが“同業他社による人材引き抜き行為(ヘッドハンティング)の横行”だ。

 

 この部分に関してはこれまでもあらゆる業種において行われてきたのだが、これまで明確なルールなどが存在していないことから企業間のトラブルの原因として挙げられるなど人材を引き抜く側と引き抜かれる側それぞれの企業における“雇用義務”や“人事権”などが十分に行使できないという懸念もあるのだ。