少年と犬 | Times goes on

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とても満足いく作品でした!

ストーリーもボリュームも連作の短編のテンポや展開も

私的に大満足の高評価です。

じれったくなくスッキリしている。

そして、犬が出てくるかといってただの動物物の感動作ではなく

各章で飼い主となる人物の人生模様が複雑で良いドラマとなっていました。

 

 

そして、この作品のストーリーの裏側には東北の大震災から

熊本の大震災まで繫がってるんですね。

被災地から自分の愛する人を求めて犬「多聞」が熊本まで旅をしていく最中に

男と出会い、泥棒と出会い、夫婦と出会い、娼婦と出会い、老人と出会い、

そして少年に辿り着く。

驚くようなシーンも数々ある壮絶なドラマです。

最終的に辿り着居たところには感動があるのですが、

単純な感動ではない複雑な感動でした。

最終章の「少年と犬」では涙がこぼれる場面がいくつかありました。

喜びであったり悲しみであったり、暖かさであったり。

心に染みました。

私の中でお気に入りの本の1冊となりました。

 

 

そして、この本のカバーの絵がとてもステキです。

老人と犬の場面で、

「麓の里の方に顔を向け、鼻をひくつかせる。耳が立ち、尾が持ち上がっている。

自信に満ちたその姿は美しかった」

まさしくこの表紙の絵面を思い浮かべる一瞬のシーンでした。

賢く誇り高き犬「多聞」の5年に渡る旅路は

人間にも犬にも幸せばかりじゃないけれど

それでも犬との絆に幸せを感じられるところに

暗いことばかりじゃないという勇気をもらえました。

 

 

南の方向をいつも見ている「多聞」が健気でした。

会いたい人に会えるのだろうか??

会えたら良いな。。。と思いながら読みました。

多聞がペロッと頬や鼻を舐める仕草が想像出来て愛しく感じます。

作者もきっと犬が好きなんだろうな。と伝わってきました。

それでないとこの様な物語は作れない事でしょう。

そして、その犬が死んでしまって姿を消した後も心に居るという事。

私の心の中にも同じように、天に召された我が愛犬が居るので

きっと物語と同じ気持ちだと思います。

姿形は見えないけれど、そんなに悲しくはないんですよ。

実感してます。

 

 

涙目で読了して本当に満足でした。

良い本に出会えて気持ちよかったし嬉しかったです。

馳さん、直木賞おめでとうございます!