主夫の料理についてはもう何度か書きました。「これ、おいしいわ」と言ってくれると、それが励みにもなり、いつの間にか1年が過ぎて、1日3食、ほぼ1000食を作りました。

 

で、今日はキッチンに立つ主夫でなく、つくろいものをする主夫のことです。主夫の私は、ミシンや裁縫をするのが結構好きなのです。縫物をすること自体も好きなのですが、静かに椅子に腰かけ黙々と縫物をしたり、つくろいものをしているのが何とも言えないほど心地よいのです。心が落ち着くのです。恐らくその時、血行が良くなっているに違いありません。少なくとも血流が体内を平和に流れているのが分かるほどです。無心。現代人にとってこれほど贅沢な時間はないと思えてきます。

 

今では靴下の値段は知れたものです。ですから靴下をつづくって履いても別に家計が助かるというほどのことはありません。しかし、靴下のつま先に穴が開いたりすると同系色の端切れを探してきて裏からつぎを当てたくなります。私がこんなことをするとは以前は思ってもみませんでしたが、思ってもいないのに、どうしてか書斎の机の引き出しの奥、度が合わなくなった古いメガネの隣りに、ネクタイの端切れ、ズボンの端切れ、服やシャツの端切れなどがけっこうたまっていて、違った色や柄も結構あります。で、それを適当に取り出してはさみで切り取り、その時は靴下の裏側からつぎを当てると実に履き心地が良くなりました。

 

「女と靴下は強くなった」と言われ始めたのはもう50年ほど昔でしょう。ところが最近、女性の方はますます強くなった感じですが、靴下は次第に弱くなりよく穴が開くようになりました。これって、私の靴下だけではないでしょう?昔は、「鬼のパンツ」の歌のように何年履いても破れたためしがなかったですが、最近のはいつの間にか破れたり、穴があいたり、薄くなっているので驚いています。この分だと、私のように靴下をつづくる人が増えているかも知れません。

 

この冬はシャツの襟が傷み始めたので、そのシャツの下の部分から布を切り取って縫い目に沿って縫い付けました。襟のリフォームはなかなか難しいですよ!首が触れますからうまくしないと着心地が悪くなります。もういいかげん他のものに変えてもいいのですが、外国で買った愛用の服なので、自分の分身のような愛着があって手放せないのです。もう一着のシャツは、襟の芯を作って縫い付けるというなかなか工夫がいるリフォームをしたのです。この時は、丸2日、どういう順番でどこの糸をどう解(ほど)き、どう縫って、どう修理をするかと色々と算段して、食事を作っている時も、外出している時も考えるという、面白い日常生活の送り方をしてしまいました。

 

夏は半ズボンのジーパンをはいていますが、これは長ズボンを自分の好みの長さに切ってミシン針が折れないように慎重にまつったもので一点もの。野球帽はエンブレムにルッチェルンで手に入れたマッターホルンの絵柄のフェルトを縫い付けたもの。これも世界でたった一つの一点ものでお気に入り。ところがそれを、3週間前に石神井川の畔でなくしてしまったのです。すぐ引き返したのにどこにもありませんでした。まるで家族を失ったような気持ちになっています。見つけた人がいればご連絡ください

 

スリッパの修理はうまくなりました。底が擦り切れたり、足を入れる部分が擦り切れて破れたり、物によって色んな破れ方をしますが、破れた所に少し厚みのある布をノリで張り付けるだけでも結構長持ちします。底の場合は糸が入った厚目の粘着テープがいいですね。傘の修理はまかしときなはれ。ビニール傘でも骨を補強すれば実に長く持ちますし、強風にもメッチャ強くなります。骨は雨風の強い日に路上に捨てられたビニール傘を拾って来て、適当にペンチで切って補強用に使えばいいので割に簡単です。一番うまくなったのは、鋏一丁で自分の散髪をすること。最初は頭の後ろなどは多分見れたものじゃあなかったでしょうが、やれば結構うまくなるもの。やればやるほスキルは上達します。そろそろ長くなってきたので、今晩辺り風呂場で散髪しようと思っていた所でした。

 

主夫のつくろいもので書き出しましたが、最後はひとりものの生活術に近づいてしまいました。

 

「水の中を通るときも、わたしはあなたと共にいる。…火の中を歩いても、焼かれず、炎はあなたに燃えつかない。」(イザヤ43章)

 

       6月7日