嗅覚は犬なみ。お、お、お、耳抜きがうまくできない。耳の奥がほのかにいたい、じっとりと漂う風は湿った土のにおいがする。電車を降りたら脳みそがぐらりとひとまわり。空は、まぶしい光のなかにほんのすこし闇をとかしたような、間接照明のようなふしぎな色。きっと嵐がくる、冬の終わりを告げる嵐が、振り返りたくなるようなつめたい夜をつれて、