イチローは元来、優しい子である。


私はイチローほどやさしくないといつも思う。




ある日、家に帰ると、ネコズがニャ~ンニャ~ンと


鳴き出した。


餌をくれ~にゃー 餌をくれ~にゃー


と言ってるわけだ。


なんだか今日は特に激しい。






しつけとして餌は、


私たちが食事をする時に与えるべきだろう。


犬だと飼い主が食べ終わってからだろうか。


でも、こちらは気ままなネコズ。


お犬様のようにはいかない。


今日はいつもに増して鳴くので


私は根負けし、先に餌をあげることにした。



夕飯作りで手が離せないので


冷蔵庫に半端に残ってるネコ缶をあげてくれとイチローに頼んだ。



ネコ缶を取り出したイチローは



「わ、冷たっ!こんなの食べたらお腹が冷えちゃうよ。


この寒いのに。ねえ、マリちゃん。」



と言って優しい眼差しでマリーの方を見る。



そうなのよ、アイスみたいに冷たいのよにゃー



そして今度は


私の方を見てこう言った。



「大体さ、猫って、匂いで味を感じるんだから


こんなに冷たいと、


あまり匂いがしないから味もよく解らないよ。


ネコなんて食べるのだけが楽しみなんだって


いつも自分が言ってるじゃない。


これじゃその楽しみすら減ってしまうよ・・・。」



その目は 


母さんって冷たいよね と言わんばかりだ。


私のハートは、冷蔵庫の猫缶並みらしい。




「でも室温に戻す時間がないし、


新しいの開けたら、それが古くなっちゃうし。


いいわよ、それをあげれば。」




イチローは黙ってその猫缶をそれぞれの器に入れ


おもむろに電子レンジへつっこんだ。


そして短く チン した。



その行動は、


お母さんはこのひと手間が惜しいの?


そんな感じだった。



当然、猫が熱いものは食べないのは心得ており


温めると言うほどではない短い チン だった。


そして、フォークでもう一度よくほぐす。


そして猫なで声を出して




「はーい、マりちゃ~ん。


はーい、クーちゃんもー。」




と言って二匹に与えると


マリーは器の餌に飛びついた。


そして一口食べると、


驚いたように首を振り、後ろに退いた。



しばらく首を振り続け


ぺっ、ぺっ、ペっ


と言う感じで餌を口から出している。


クーも一口で食べるのをやめ、ただ匂いを嗅いでいる。



「やだ、熱かったんじゃないの?」


私はそう言うと、餌を指で触ってみた。


でも、熱くはない。


せいぜい人肌くらいだろう。


焼いた魚や、刺身をチンして冷ましたものなどを


あげたこともあるし、


この程度の温度は驚くほどでは無いと思うが。


なのにマリーは一口食べただけで


二度と口にしようとしない。



びっくりしたニャにゃー熱かったニャ?にゃー


あれほどお腹が空いた、と


なき叫んでいたのに、マリーは 


ニャンともいわなくなり、しばらくエサ入れを見ていたが


二度ほど匂いを嗅ぎなおすと、


窓ぎわへと移動し、外を眺めていた。





そして他のエサをくれとせがむこともせず、


どんなに冷めても、その餌を食べることはなかった。




イチローのやさしさが裏目に出てしまった。


余計なお世話って奴だ。





私はイチローが小さい時、


ピアノの練習に付き合ってやっていたことがある。


イチローは本人の強い希望で3才の終わりから


ピアノの個人レッスンを受けていた。




ピアノの練習と言うのは、


3才くらいの子が一人でやるのは少々難しいように思え


私はなんとなく手を貸してしまった。



今思えば



「ピアノの練習はいつやるのかな?」



の、声掛けのみにしておけばよかったと反省している。




私自身、昔ピアノを習っていたし、


なにしろいい大人なので、


3才の子がやるレベルなら、


今日の練習のポイントは何か見たらわかる。



ピアノと言うのはスイミングと違って


家でどれだけやるかにかかっている習い事だと思ったので


つい力が入ってしまったのだ。




自分がピアノが嫌いなのは、


その練習のルーティンが上手く軌道に乗らなかったこと、


何をどうすればいいのかが今一つ解っていなかったことが


原因だと思っていたので、


なんとか軌道に乗せ


自分と同じ轍を踏ませたくないという思いがあったのだ。





でも、内容が難しくなってくると、


ピアノのプロでない私は、


間違ったことを彼に教えてしまう。


イチローの自宅での練習を台無しにし、


先生はそれを教室で直すのに苦労していた。



それは



猫の餌をチンするくらい余計なお世話だったのだ。






人は愛があればこそ、


ときどき余計な行動を起こす。




受験が近付くと、この世で一番愛する子供が


窮地に追い込まれていく・・・。


愛があればこそ、母親は見ていられず


なんとかしようと奔走する。



大抵は


余計なお世話


要らぬお節介


有難た迷惑


なので気を付けた方が良い。




「ネコ缶あっためますか?」ときかれたら

返事ははノーだニャンにゃー








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