子供たち、って言っても、


学生ではあるものの二十歳を過ぎた大人だし、


親権だの、養育権だの、って煩わしいことはないし、


旦那が今の家から出て行って、


近所すぎない近所に住む形をとったと言う。




つまり、彼女と子供は今のままの生活とあまり変わらない。


名字は悩んだ結果、旧姓に戻さないのを選んだという。



「同じ家に子供と住んでて、名字の違う名前を出すって


いうのに抵抗を感じたの。


それに、旧姓よりも、今の名前の方がもう長いのよ。


離婚したことを隠そうとは思わないけど


仕事してると


名字を変えるのは正直面倒だわ。」




彼女はそう言ってクスッと笑った。




私もその立場だと悩むな~。


離婚したんだから、


旦那の名字を名乗るのにも抵抗があるけど


確かに仕事先で、名字を変えるのは面倒。




取引先の人とか、


たまにしか合わない支店の人とか


いろいろいるじゃない。


全員に浸透するまで


「・・・あれ?」 


みたいな反応示す人がいるわけで。


それも忘れたころにそうされるとなると。


辛いと言うか、面倒くさいと言うか・・・。




そう。 煩わしい。




その点、男っていいよねぇ。 


目立たなくて。





若い子が結婚で名字を変えるのは微笑ましくていいけどさ。


オバサンが名字変えるのってなんだか微妙~~~。





皆さんなら戻します?旧姓に。





「戻したくなったら戻せるの?」


くだらない質問をする私に


彼女は


「そう自由に名字って変えられないのよ。


ただね、私が今後誰かと結婚したとするでしょう?


そしてまた離婚したとしても、


もうもともとの旧姓には戻れないんだって。」



知らなかったでしょ?


そんな目をして彼女は私をのぞき込んだ。


「へー。 そうなんだ。知らなかった。


この年からそうなるとなるとすごい話だけどね。(笑)」




「だよね。 もちろんそこまで


想定して心配していないけどさ。(笑)」




「そうだよ。それにもう、そこまでになってくると


どうでもいい気になるかも・・・。」





彼女の家族は、昔、プレ○デントファミリー とう雑誌に


載ったことがあった。



中学受験の体験記事だったように思う。


私は読んではいないのだけど、


彼女から説明を受けた記憶がある。




「出る気なんかなかったんだけど、


つきあいで断れなくて。


インタビューを受けたのよ。


もちろん本当のことしか話してないけど


何て言うか、最終的に出来上がった記事は


綺麗にまとめられていて。


なんていうか。


・・・綺麗すぎたの。


ウソとも違うんだけど、ウソっぽかった。




受験を家族が一致団結して乗り越えたとか、


夫も協力的、精神的な支えとして陰から支えた、とか。


いろいろ書いてあって。


笑顔で撮った写真まで載って。


その記事を読んだ人が思い描く家族と現実では


ずいぶん違うような気がしたわ。


飾ったつもりはなかったんだけど・・・。」





彼女の旦那は、仕事が忙しくて


子供が小さい頃は特に家に不在がちだった。

彼女は一人で子供の面倒を見て、


子供がスキーに行きたいと言えば


車にスキーを積んで出かけ、


バーベキューがやりたいと言えば


道具を積んで野外へ出かけ、


肉や野菜を串に刺して、


焼いてやったりしていたのだ。


少年野球チームにも入れていたので


その当番や、試合や、練習に翻弄されてた時代もあった。





「旦那は忙しくて家にいないから、


私がやるしかなかったのよ。


子供にやりたいって言われたらね。


だって、他に誰がやるのよ?」



彼女は訴えるような目で私を見る。



「そうだよね。でも大変じゃなかった?


よく頑張ったよねぇ。」




私にはとても無理、


そう思って素直に聞いてみる。




「そうね、大変だけど、子供が喜ぶしね。


またやりたいとか言われると、頑張っちゃうのよね。」




私はとても、スキーを積んでスキー場まで


連れて行ってやれないので、


そんな彼女の行動力を素直にすごいと思っていた。





「何て言うかね、


最初は旦那がいつもいない


ってことが不満だったんだけど


そういう擦れ違い夫婦だったから


上手くやってこれたようなところもきっとあったのね。


旦那に時間が取れるようになって


今更家にいられると、


お互い、気を使いすぎちゃって


疲れちゃった、って感じかなぁ。」




別に大喧嘩して別れたわけじゃないし、


どっちかの不倫とか


そういうどろどろしたものでもないので、


とりあえず、籍を抜いて 別居して


お互い自由になったってことらしい。




約束したのは一つだけで、


子供はこのまま、旦那の籍に置くこと。


それを条件に


今住んでいる家を彼女の名義にしてくれたらしかった。


籍を抜かないだけで、


子供とそこで一緒に住むのは変わらず、


つまり


今の生活にはさしたる変化はないのだった。





「ふーん。


じゃあ、南青山や、


松濤あたりに買っておけばよかったね、家。」


と言ったら


「そんなところにあったら


固定資産税が大変よ。」


彼女は笑ってそう言った。



「それもそうだね。」



住宅ローンは無くても、


固定資産税を始め、雑多な費用が家にはかかる。




今の家に10年くらい住んだだろうか。


そろそろ手を入れる時期にもきている。



「だからね、私、息子に働いてもらって


家に食費やら、家賃代わりの現金を


入れてもらわないと困るのよ。


就活しないなんて、冗談じゃないわ。」




成る程。



彼女の息子には


思うところあってのことかもしれないけど


仕事するって楽しいし、


合った仕事が見つかるといいな、


と思っている。











マリーにゃーと クーにゃーの物語 ⑦



猫の引き取り日にあたる日が迫ったころ


電話が鳴った。




ボランティアさんからだった。




訪問日程を決めるために


こちらの都合を聞いてきたのだ。




「どうですか? 猫たちの様子は?」



ボランティアさんは聞いた。



「あのお薬をいただいて、鼻水はすぐに良くなりました。


あれ以来、二匹とも元気です。」



「・・・そうですか! それはよかった。


だいぶ慣れましたか?」



「そうですね。もう、どこかへ隠れてしまうと言うことはないですね。


まだ小さいので、二匹で追いかけっこをして遊んでいますよ。」



ボランティアさんは


電話の向こうで安堵の声を出す。


そしてこう続けた。




「慣れたのだったら良かったです。


あの・・・。marimcreamさん・・・。


お話があるのですが。」




なんだろう?


と思って


「はい?」


と促すと




「その・・・。


猫を二匹とも引き取るおつもりはありませんか?」



相づちを打つ間もなくボランティアさんは続けた。




「その二匹は仲が良くて。


ずっとくっついているでしょう?」




私は受話器を持ったまま、


ソファで抱き合って眠っているネコズを見た。




「そうなんですよね。二匹で一つみたいな感じですよね。


お互い舐めあって、上に乗られてつぶされても


下の猫も怒りもしないし。


一匹ずついることの方が珍しいですよね。」



マリーの顔をなめてやるクー



「・・・あの。


無理にとはもちろん言いません。


一匹のお約束でしたし。


他に引き合いもありますし。


飼うとなると長い年月になりますから、


無理はなさらないでくださいね。


ただ・・・、二匹引き取ることも


よかったらご検討いただけませんか?


そして、そちらのご意向によって


すぐに引き取りに伺います。」





私は少し考えてみます。


また連絡します。と言って電話を切った。




二匹引き取ることは嬉しいことだけど。





イチローに文句はないだろうが


パパるに相談しなくてはならない。



猫が3匹になると、人間と同数になり


かなりの猫屋敷だ。




猫屋敷?にゃー





家も家具も傷むだろうし、


いくら掃除したって、猫毛があちらこちらにくっついてしまう。


猫餌代や病気になったときの病院代を考えると


かなりの経済的な負担も予想された。


特に老猫になったときに、いろいろありそうだ。





私はいろんなケースを思い浮かべて


シュミレーションしてみた。




猫の親になると言うのも、覚悟が必要なのだ。


一時の感情で引き受けてはいけない。




数日後、私の腹は決まった。




そしてパパるに


猫が3匹になってもいいかを確認することにした。











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