相手の懐具合
『敵を知るには懐に入る方が手っ取り早い』と言い放ったのが、立川談志師匠である。
随分前にTOKYO MXで「談志・陳平の言いたい放だい」という番組で、談志師匠が自民党に入党する際、なぜ敵対していた自民党に入党をしたのか?と野末陳平氏に尋ねられ、『敵を知るには懐に入る方が手っ取り早い』と答えのがとても印象深かった。
確かに相手が何を考え、企んでいるのかは寄り添う必要がある。
でも相手が賢い場合、そう易々とは行かないのが世の常である。
要するに、一瞬の隙を見計らう必要があるという事だね。
てな具合で、今回は「THE INFORMER/三秒間の死角」という作品を紹介したい。
簡単に概要を説明すると、主人公ピート(ジョエル・キナマン)はFBIに雇われた囚人である。
マフィアの息の根を止める為、FBIはピートを潜入させ情報を得る。
FBIのウィルコックス(ロザムンド・パイク)はピートに対し、マフィアのボスを捕らえる事が出来れば残りの刑を帳消しする約束をする。
ピートに小型マイクを仕掛け、ウィルコックスは仲間と共にマフィアが尻尾を出した時を虎視眈々と狙う。
そこでウィルコックスは上司であるモンゴメリー(クライヴ・オーウェン)の許可をもらう義務がある。
勿論、この時を狙っていたモンゴメリーはウィルコックスにゴー・サインを出す。
だが、問題が起きる。
ピートはマフィアのボスの息子と共に行動をしていたのだが、息子が予定外の行動に出たのだ。
見知らぬ者にドラッグを売る約束をピートには知らせずに交渉する。
その相手を信用して良いのか解らない状況だ。
ピートは相手と交渉の前に私的な話を持ち出す。
すると相手は最近まで刑務所に服役していたと話す。
そこでピートも同様、最近まで服役していた事を話し、経験者でないと解らない質問をいくつか挙げる。
やや辻褄が合わない事を察したピートは、『お前は警官か?』と尋ねる。
相手はすぐに否定するも、『もし警官であれば、ここから出る事が不可能だ』とピートが告げると、相手はピートだけに解る様に警官である事を認める。
一瞬の隙を見てピートは相手を突然怒鳴りつけると、アイコンタクトで『このまま俺に任せろ』と相手に告げながら入り口に向かう。
すると、相手はピートの作戦を台無しにするかの様に、警察のバッチと拳銃を出しその場に居合わせた者たちを脅す。
恐らく潜入していた警官は身の危険を感じ動揺したのだろう。
この行動が仇となり警官は背後から息子の銃で撃たれ即死する。
ピートに隠された小型マイクから状況を把握した上で、この計画は失敗であると認め、ウィルコックスらはその場を去る。
警官を殺害した罪は重い。
この件がボスの耳に知れると、この場に居合わせたピートと息子が呼ばれる。
そしてボスはなぜ相手が警官だと解ったのかピートに尋ねる。
だがピートは答えをはぐらかす。
ボスは警官を殺害した事により警察は犯人探しに力を入れる事となる。
そうなると仕事(ドラッグの売買)がやりにくくなるとピートにぼやく。
そこでボスが提案する。
『お前がもう一度服役し、囚人にドラッグを売り捌け』と告げる。
事前にピートは仮釈放であると知らせてある。
こういった事を弱みだと察したボスは強かに提案したのだ。
この様に最悪な事に発展すると想定していたピートは、事前に家族を守る事を考えていた。
妻のソフィア(アナ・デ・アルマス)に予めピートが帰らなかった場合、娘と共に遠くへ逃げる様に伝えていた。
だが、ソフィアはピートが戻ってくると信じて遠くに逃げる事なくマフィアに捕まってしまう。
こうなるとピートに残された選択肢は無い。
不幸中の幸いな点は、ピートがFBIの協力者であるとマフィアに悟られていない事だ。
マフィアの目を盗みピートはウィルコックスと上司のモンゴメリーに相談する。
FBIからすれば、今回の計画は4年もかけて考えていただけに失敗に終わった事が遺憾である。
また白紙に戻った状態なので次なる策がない。
そうなると考え方を改め、ウィルコックスはマフィアのボスの提案を呑むしかないと考える。
だがピートからすれば逆戻りとなる事が腹立たしく思う。
そしてピートは警官を守ろうと努力したと反論するが、ウィルコックスとモンゴメリーはマフィアのボスを捕まえたい一心で再度ピートに協力を求める。
ピートからすればFBIが下した結論は理不尽な要求でしかなく、単純に脅しだと感じた。
但し悪い様にはしないとウィルコックスが約束をする。
刑務所に入り、マフィアのボスが不利になる様なドラッグに絡む人間のリストを手に入れさえすれば釈放すると提案する。
この件の裏でもう一人の人間が動いていた。
殺された警官の上司であるグレンズ(コモン)である。
部下が殺された地区の防犯カメラを頼りに事件の真相を探る。
するとピートが映った画像を入手。
ここまでグレンズはこの件にFBIが絡んでいる事を知らない。
それにピートが協力者である事さえも知らないままだ。
グレンズが調べ上げる程、この事件は単なる殺人ではない事に気付く。
更に不可解なのがピートの存在だ。
最近まで20年の刑だった筈が、突然取り消され釈放されているのだ。
だが記録には明確な事実が記されていない。
仮に真実が存在するならば、この記録を扱ったウィルコックスの名前のみだ。
早速グレンズはウィルコックスとモンゴメリーの元を尋ねる。
しかしグレンズが納得する答えには至らなかった。
ウィルコックスとモンゴメリーは目障りなグレンズにこの件から手を引いて貰おうと嘘を重ねる。
痺れを切らしたグレンズは、犯行現場から近い場所に設置された防犯カメラに映ったピートの画像の他に、車の後部座席から見守るウィルコックスが朧げに映った画像を差し出す。
それでも二人は動じなかった。
二人と直接会って感じた事は、グレンズ自身が考えている以上に良からぬ事実が絡み合っている点だ。
そこでグレンズは独自の捜査を重ねる。
これ以上時間は割けられないと感じたモンゴメリーは、マフィアのボスを検挙する事を諦めた。
その事をウィルコックスに伝えると当然ながら反対される。
モンゴメリーの腹の中は、この件に警察が関与し始めると余計に厄介であると感じていたからだ。
ましてや服役囚を使い潜入させた上に警官が死傷している。
それにこの件から身を引くという事は必然的にピートを切るという事だ。
こういった背景も理解しているだけにウィルコックスはモンゴメリーの打診に納得できない。
しかもモンゴメリーは同僚であるウィルコックスに対し、これ以上この件に首を突っ込むのであれば、君が単独でこの件い関与し暴走していると上に伝えるまでだと言いつつ脅すのだ。
然し、時すでに遅し。
ピートはまだこの件が続いている物だと信じていた。
そして服役をしたのだ。
その後、ピートはFBIから裏切られる事実に直面する。
更に事態が悪化し始める。
理由はマフィアとFBIからも裏切られ刑務所内は正に生き地獄と化す。
また残された家族の安否や事実を揉み消そうとするFBIの在り方についてピートは立ち向かう。
果たしてピートと家族は生き残れるのか?
そしてマフィア以上に悪行を正当化するFBIの真実を告発する事ができるのだろうか?
サブタイトルである『三秒間の死角』は最後に至る時に発覚する。
何より、唯一正義に燃えるグレンズはどこまで真相に迫れるかが見所である🌟
展開が速く、緊張感が続く内容は良くできている。
豪華キャストで綴られた作品としては良作なのだが、唯一無駄遣いと考えられる点が、モンゴメリー役のクライヴ・オーウェンが生かされていない事だろう😩
時間の都合で仕方ないのかもしれないが、もっと捻りを利かしモンゴメリーの強かで悪徳上司に仕上げて欲しかった。
これ以上求めると何様だよ!と突っ込まれそうなのでお口をチャック・ウイルソンだ!
てな具合で、ばいちゃ👋