あっという間に、正月三ケ日が過ぎようとしている。
今年は、二人の娘達が、同時に大学を受験する年のため、旅行にもどこにも行けず、娘たちの邪魔にならないように気を遣いながら、ひっそりと暮らしているのだ。特に、ものを落としたりなどしようものなら、神経過敏になっている妻に、何を言われるかわからない。
ということで、妻と二人で、「お千代保神社」へ、お参りに行くことにした。
通称「おちょぼさん」とよばれて親しまれている、「商売繁盛」で有名な、「日本3大稲荷」のひとつである。
500年前室町時代に、森八海が開いた神社で、源義家が、宝剣などを「千代に渡って保て」と言って授けたことから「お千代保」と名付けられたのだそうだ。
ここの特徴は、事前に「油揚げ」と「ロウソク」を買って(セットで50円)、まずロウソクを本殿横の灯篭のようなところへ火を付けて立てるのであるが、ロウソクがいっぱいで空いているスペースがない。しかも火が消えてしまっては縁起が良くないということで、みんな必死で狭いスペースを探して、他人のロウソクを押しのけるようにロウソクを立てていた。私はすでに消えてしまっているロウソクを見つけたので、それを一本抜き去って自分のロウソクを立てさせてもらった。しかしこの熱気はさすが商売繁盛の神社だけあって「商魂逞しいなあ」と感じさせられるものであった。
次に本殿へのお参りであるが、この本殿が以外に小さい。幅3.4mくらいしかお参りをするスペースがないものだから、正面からの人の流れと、左右からの人の流れが本殿前でぶつかって、おしくらまんじゅうのように、押し合いへし合いとなってしまい、となりのおばさんなどは、「警備員はマイクで叫んでるだけで、何の役にもたたんわ!」と、怒りをぶちまけているほど、壮絶であった。
ところで、その「油揚げ」はどうするのかと、興味深くみんなの行動を見ていたら、遠くから、ブーメランのように、本殿に向かって投げ込んでいたので驚いた。前の人の頭にあたってしまったりして、こんなので本当に御利益があるのか心配になった。がしかし、本殿近くまで行くと、ちゃんと「油揚げ置き用の台」が設けられていて、乘せられた油揚げをせっせと係員が回収していた。あとで希望すれば、その油揚げは持って帰れるらしい。投げ込んでいた人は、あまりの混雑に本殿前までいけない腹いせに、遠くから投げ込んでいたものと推測され、そういうしきたりではなかったのだ。
さらに、参拝後に、短い列ができていたので、何気なく並んでみると、そこには一段と小さな神社があった。前のきれいなおばさん(おそらく、柳ケ瀬か栄の水商売系の経営者か)の行動が面白かった。その小さな神社には壁から床、賽銭箱に至るまで、いろんな会社の名刺が所狭しと挟んであったり、貼られてありしている。おそらく、その会社の名刺で神様により特定しやすくして、ご利益を授かろうとするものではないかと思われる。その女性は独り言のように「あ~名刺置くとこないわ、しゃあないわ、この名刺にはちょっとどいてもらって!」と、まるで周りの人にいいわけでもするかのようにいいながら、真正面の特等席に置いてあった一枚の名刺をさっと外して、自分の会社の名刺を置いて、何事もなかったようにお参りしていた。このくらいの厚かましさがなければ、商売を仕切っていくことは難しいいのか、と、ここでも「商魂の逞しさ」を感じた。
帰りに、有名な「玉屋」の串カツを買って、食べながら混雑する参道を歩いて、神社を後にした。「商売繁盛の神様」にお参りする人たちは、ほかの神社のそれとは違って、生々しく、よりストレートで、旺盛な生命力を感じさせる逞しき人々であった。皆必死で日々の商売に精進しているのだろう。
この1年が、多くの人たちにご利益をもたらす、実り多い年となっりますようにと、願わずにはいられない。
