これまでの鉄道作で、僕は事あるごとに、『いま日本で唯一残っている夜行列車は、"サンライズ瀬戸・出雲"だけだ』と書き続けてきました。
しかし・
あ、そういえばまだ乗った事なかったなぁ・
こりゃダメだという事で、先日『出雲』のほうに乗ってきました^
今回これに乗る事にしたのは、ほかにも目的があります。
当別荘で2014年に訪れましたが、ついに廃止が決まってしまった島根~広島県を結ぶ三江線の一部にもう一度乗る事と、その三江線に匹敵する"超ローカル線"というべき、同じく島根~広島県を結ぶ木次線にも乗りに行くという作です。
ではスタートです
夜のとばりが降りた東京駅
いよいよこれから~
ホームへ昇ると、既に入線していました!
もうちょっと早めに来たらよかった(汗)
東京22:00発、寝台特急『サンライズ瀬戸・出雲』です
現在日本で定期運転されている唯一の夜行列車である『サンライズ瀬戸・出雲』、国鉄時代からブルートレインの『出雲』号として運転されていた伝統ある夜行列車の流れをくむ列車です
1998(平成10)年に電車寝台車両・285系を新造し、その際に別運転されていた高松行ブルートレイン『瀬戸』号と統合、東京~岡山間は併結運転されるようになりました
この車両を造るにあたり、当時のJRが謳ったテーマは"夜明け"
かつて、国鉄各線の夜を駆け抜けていた"ブルートレイン"の客車は濃紺に塗られていました。あれは勿論『夜』を表した塗色ですが、そのイメージを打破すべくこの285系は、暁を想起させるサーモンピンクを基調とする明るい塗色にしました。
↑のシンボルマークも、まさに”日の出”を表しています
さらなる鉄ネタですが、↑マークの下の形式番号の字体、JR西日本の文字体です。285系はJR西日本と東海が共同開発したという事になっていますが、実際には国鉄時代から関西以西の夜行客車を主に担当してきたJR西が主導して造られました。
かつて東京~大阪を結んでいた伝説の寝台急行『銀河』も、大阪鉄道管理局→JR転換後も引続き西が担当していました
窓の形状が、↑各車さまざまに違うのも面白い。
サンライズはA寝台とB寝台の個室が主ですが、一部”ノビノビ座席”という、一昨年廃止された急行『はまなす』(※vol.217参照)にあった”カーペットカー”のような席もあり、バラエティ豊富なのも魅力のひとつです
14両編成で、岡山方7両は高松行『瀬戸』号、東京方7両がこれから乗る『出雲』号です(※編成内容は両者同じです)
では乗り込みます^
お~
車内に入って第一印象は、『20年経ったと思えないほどきれい』
それもそのはず、数年前に大規模リニュが施されたんだそうです。
↑僕が予約していた13号車9号室、Bシングルです
僕の頭にある"B寝台"のイメージって、激狭の3段ベッドが並ぶ光景を思い浮かべるんですが(古)、そういう時代を生きた人間からすれば『B寝台で個室!こりゃ贅沢』という感想です(笑汗)
なお、個室ドアは番号設定式のロックが付いています
浴衣と、なぜか紙コップが備付け
勿論ベッド幅はB寝台サイズなので狭いですが、でも何より”個室”というのがgoodです。窓もひとつ占有だし、いびきもかき放題w
22:00定刻、雨が降る東京駅を静かに出発!
非日常の列車の車窓から見る、日常の電車、いい感じですw
このサンライズ号、停車駅がなかなか"特急"の面目躍如で、東京駅の次はいきなり横浜(※品川通過!)、その次も大船・小田原にも止まらず熱海まで通過と、かなりの停車駅厳選ぶりで、かつて東京駅から多数発車していたブルートレインたちと同様の停車駅厳選ぶりです
又、乗り心地も"さすが特急用車両"と思える快適さで、これは内装のようにリニューアルで簡単に改善するものでもなく、車両のつくりそのものを初めから丁寧に造っていた、というのが乗ってみればわかります^
人心地ついたところで、編成全体を見ていきますw
残念ながら食堂車や車内販売はありません。↑自販機のみです
半車分ですがラウンジも付いています。10人程度でいっぱいになる感じかな・
シャワー室もあります
利用する際は↑で"シャワーカード"を購入(※A寝台利用客には1枚支給)
・とか何とかいってるうち、各車内は眠りにつき始めました
僕も、仕事終りで乗ったので眠気が・w
東海道本線で夢の中へと入ります
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東京から下りに乗ると、乗降扱するさいごの停車駅は静岡ですが、その後夜中の間にも、"運転停車"というダイヤ上の停車をする駅があります。豊橋に停まったところで目が覚めたんですが、それから起きてしばらく車窓を見ていると・
なんと名古屋駅は通過(!)、でもなぜか岐阜駅に少しだけ停車、どういう基準で決めているのか謎です・
大阪駅に停まったかどうかは、その後また寝たのでわかりませんがw、次に気がついたら、翌朝最初の客扱停車駅である姫路駅でした
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やがて、白々と夜が明けてきました。
まさに”サンライズ”です
↑窓の外を流れる川は、岡山県東部を流れる吉井川です(※熊山駅付近)
夜行列車最大の魅力は、『目覚めたら、昨夜同じ車窓から見たのとは全く違う地方の光景』、僕はこれだと思うんです。
しかし今や我国で唯一、この醍醐味を味わえるのが、このサンライズだけとは・
サンライズ号、岡山駅に到着します
岡山駅、6:27着。
同駅で、『出雲』/『瀬戸』の切離し作業があるため7分停車します。東京駅以来初めて、車外で撮影出来ました^
東北新幹線とかでもおなじみの光景ですが、この『列車の切離し(※解結)』って鉄ちゃんならずとも↑の人気。なぜか撮影したくなる人が多いみたいですw
先に『瀬戸』が四国へ向かって旅立ち、身軽になった我が『出雲』も、再び西へ走りだします
↑倉敷駅で、朝の通勤電車を待っている沢山の足w
(※1階室だったので窓が低い)
サンライズ号は倉敷駅から山陽線を離れ、伯備線に入ります
山陽側と山陰側を結ぶ中国地方の”陰陽連絡線”(←※当別荘でよく出る単語)の中で、唯一全線電化されている伯備線。
車窓には山が迫ってきます。
昨夜からの雨は降り続き、山も雲にけむっています
高梁川と何度もクロスします
伯備線の昼行特急、↑『やくも』と離合します。
JR他社ではとっくに引退している『元祖・国鉄振子電車』・381系が今も活躍しています
岡山・鳥取の県境に近い、伯備線で一番の主要駅・新見駅に7:43到着。当別荘過去作で度々出る、姫新線&芸備線の起終点が、この新見駅です
山越え、谷越え、サンライズ号は日本海めざし本州横断^
鳥取県に入り、車窓から見える川も日本海側へと流れはじめます。
9:03、米子駅到着。
ここから山陰線と合流します
雨の中でもしっかり定刻で運転をつづけるサンライズ出雲号、ついに終着駅のある島根県へ入りました。
9:30松江駅到着、一昨年の"神有月の出雲"シリーズ(vol.239~241)以来の島根県入りです^
車窓から↑宍道湖が見えると、ラストスパートです
そして~
東京駅から約14時間の長旅を終えたサンライズ号、
9:58定刻、終点・出雲市駅に到着しました
所要時間・約12時間とはいっても個室寝台、全然快適で、疲れるどころか逆に、昨日の仕事の疲れがとれてしまいました(笑)
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1年半ぶりに降り立った出雲市駅、大社造を模した駅玄関が独特です。
おととしの神在月ツアーの時には、この駅をスタートとして一畑電車や出雲大社等へ行きましたが、今回は・
再び普通列車に乗り、先程サンライズ号で通ったばかりの米子方面へ戻ります
山陰線を3駅、米子方へ戻り、宍道駅へ
今作もう一つのハイライト、ここから分岐している、知る人ぞ知る超ローカル線、『木次(きすき)線』に乗ります
ここ島根県・宍道駅~広島県・備後落合駅間、約80kmを結んでいます。
JR西管内のローカル各線で使われているワンマンDC、キハ120型です
宍道駅を11:18発車
これから約3時間の、夢の中のような天空トリップへ旅立ちます(※何が天空トリップなのか?は、この後ご覧下さい^)
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宍道を出ると、まずは・
田園風景と山が織りなす、中国山地定番の風景が車窓に広がりますが、意外と住宅も多く見受けられます
2014年に行った三江線(vol.180)との比較も混ぜながら書いていきますが、この木次線は途中の出雲横田まではそこそこ乗客数があり、全線に亘って乗客希薄な(涙)三江線とは少し違った面もあります。
そのため、乗客の多い途中主要駅の木次・出雲横田両駅までの区間運転車が1~2時間おきに設定されています。
一方、県境の秘境区間となる、その先の終点・備後落合まで全線を走り通す便は1日3本しかありません
沿線に、名もない木々が可憐な花をつけています
こういう何気ない光景を眺めて走るのが、ローカル線最大の魅力ですね
線名にもなっている主要駅、木次駅へ11:52着。
同駅には、木次線の車両基地があります。
木次駅にあった神話の獣、↑"おろち"の絵
木次線全18駅の名も記されています。
休日等には機関車+客車を使った臨時観光列車『奥出雲おろち号』がここから運転されます(※一昨年の神在月シリーズ中に画像あり)
木次を出ると、森が深くなってきます。県境近しの感です
山地へ近づくにつれ、また雨が強くなってきました
とはいえ、出雲横田までの区間はまだ家も多く、駅ごとに街も現れます
↑の中間駅ですが、読書好きには有名な駅です。
この駅の名は~
亀嵩駅です。
松本清張原作の『砂の器』が映画やドラマ化され、一躍有名になった駅です。この木次線の駅です
そして亀嵩駅の次駅が、木次駅とともに同線もう一つの主要駅・出雲横田駅です。
ここから奥、県境越えの区間が前述の『1日3本』となります
20分程停車時間があるので、↑駅をみてみます^
瓦ぶきの風格ある駅舎ですが、外へ廻ってみてさらに驚き^
お~
↑へたな神社顔負けの立派な玄関!太い注連縄が印象的です。1934(昭和9)年、同駅が開業した時からの駅舎だそうです
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出雲横田駅を出ました。いよいよ県境区間、いわば"木次線の秘境区間"へ入っていきます。
更に深みを増す、森へと分け入っていく木次線
次の駅では~
お、↑左側からもう一本線路が合流してきます。
ここは~
出雲坂根駅です。
鉄ちゃん間では有名な駅ですが、この駅は、我が国鉄道屈指の"スイッチバック駅"なんです。
スイッチバックとは、鉄道が山を登るために線路を何度か折返しながら、つづら折り状に高低差を稼いでいく登坂方法ですが、JR東日本・篠ノ井線の姨捨SBとともに、特に壮大なスイッチバックとして知られます
駅前の道路標識も、↑『スイッチバックの駅』と明記、もはや名所扱いです
同駅構内には、↑"延命水"という名水が湧いてて、途中下車したら飲用必須です^
駅舎は近年建替えられたようで、地域の集会所と兼用の建物になっています。駅の活性化を期すため、近年ローカル駅に多くみられる例です。
20分停車のあと逆方向へ動き出すDC
いよいよ↑スイッチバック区間へ挑みます^
2分程走り、↑覆屋のある折返し所で一旦停車。
再び運転手さんは逆側の運転台に座り替えます
折返してさらにもう1段、登っていきます
信州姨捨のスイッチバックも壮大なものですが、軽快な高性能電車で登っていく姨捨に比べ、ここ坂根はディーゼルカーが喘ぎながらスローに登っていくのが"登坂感満点"、人気の理由です^
出雲坂根から、次駅の三井野原まで18分かかります。
山また山、トンネルまたトンネル・
この両駅間に民家はほとんど無く、霧に煙る深山を列車は進みます。
↑物凄い谷の横を走る区間もあり、まさに"天空の鉄路"と呼んで過言でないと思います。はるばる来た甲斐があったと思える区間です
夢の中のような景色に、乗客の目は車窓に釘付け
出雲坂根から18分、天空の鉄路を走り切ったDC、ようやく三井野原駅と民家がみえてきました
↑三井野原駅が、宍道から乗ると島根県さいごの駅です。
又、同駅はJR西日本で一番標高が高い駅(※標高726m)です。
三井野原を出ると県境越え、3月下旬でしたが、↑まだ雪が残っている場所もありました
広島県に入って最初の駅、↑油木駅がさいごの途中駅です。
そして~
おつかれさまでした!
大スイッチバックを登り切った小さなDCは無事14:33、終点・備後落合駅に到着しました^
1日3便でしか味わえない"天空の鉄路"、木次線の旅がおわりました
備後落合駅は、広島~新見を結ぶ芸備線と接続するターミナル駅ですが、その芸備線もここからは新見方面1日3本、広島方面も5本しかありません。
僕がウン十年前(汗)はじめて来た当時は、急行も多数走り、駅そば店もあった覚えがあるんですが、ホント寂しくなってました・
待合室の中には、かつて同駅の栄光の歴史を語る数々の写真があり、鉄ちゃんを楽しませます。
そして、この備後落合駅で奇跡が!
昨夜からの雨が↑ウソのようにパッと止み、ホームに日差しが注ぎはじめました
芸備線で三次へ向かったんですが、塩町駅を通る頃には↑の通り、澄み切った青空が車窓に広がります
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広島県中部の要衝、三次駅に着きました。
この駅、2014年の三江線の作で出ましたが、その三江線、報道等でご存じのように、ついに廃止が決まってしまいました。
ここからは、『再訪・三江線、わかれの時』です。
2014年の作では建替え工事中だった三次駅、↑新しい駅舎が完成していました。
作容量一杯になりました、今作ここまでです!
実はvol.180の作で、三江線で紹介してなかった名物駅がありました。次作で、三次駅→『その駅』までを往復し、まもなく消え去る三江線にわかれを告げたいと思います
なお、今作~次作では、当別荘初めての手法をとりたいと思います。
今作はvol.282ですが、これを『282-1』と『282-2』の2つに分け、それを同時upして1作扱いするという作数カウントを実験的にしてみます。
・という事で、この続きは次作の『282-2』をお楽しみに^
(※2023.7 文一部修正)