「エイレングラフ弁護士の事件簿」(ローレンス•ブロック 文春文庫)


高額の報酬で、どんな被告人も無罪にする弁護士エイレングラフ。

有罪になったら報酬も経費もいらないが、無罪になったら、たとえ彼が「何もしていないように見えても(法廷に立つことすらなくても)」全額を支払うのが条件。


私も好きな「八百万の死にざま」「おかしなことを聞くね」などブラックユーモア漂うミステリの作者ローレンス•ブロック氏の連作短編集です。


このシリーズが普通の弁護士ものと違うのは、

殺人の容疑者である依頼人がエイレングラフのとんでもない条件を承諾したあと、1行空いて、当の依頼人が「真犯人が判明した」などにより無罪放免になって出てくるところです。

この1行の間で、エイレングラフが何をやったのかは、読者が想像するわけです。

そして無罪になった依頼人が「あなた何もしていないよね」と報酬を値切ってくるのも、それにまた反撃するのも一連の流れ。


12編ありますが、1978年から38年にわたって書かれたとのことで、この名作をこうやってまとめて読めるのは贅沢ですね。