「雷神」(道尾秀介 新潮文庫)


30年前に新潟県羽田上村の雷電神社のお祭り、神鳴講で起きた、毒キノコによる殺人事件。

藤原幸人の亡き父南人は、当時この事件の犯人と疑われていた。

幸人はあることをきっかけに、姉の亜沙美、娘の夕見とともに羽田上村に還り、過去の忌まわしい記憶を掘り起こす。


「龍神の雨」「風神の手」と来た神シリーズの三作目ですが、この三作はお互いに関連性はないようです。

道尾秀介さんは、謎解き、どんでん返しと、ミステリの技巧はもちろん確かですが、その中に祟りとか、人間の業や因果とかいったちょっと怖い感じを入れるのが本当に巧いと思います。


この作品では、毒キノコ事件の犯人は亡父なのか、というのが主題なのですが、当時産まれていなかった娘の夕見に絡む出来事も重要で、親子三代の因果、村社会の因果などがどろどろと絡み合ってきます。


なお、途中で多くの読者は、事件の鍵となるあることに気付くでしょう。しかし、それも作者の掌の上です。

そして謎の決着の先に、印象的なラスト一行があり、最後まで気を抜けません。