「アンブレイカブル」(柳広司 角川文庫)
昭和初期から敗戦に向かう日本で、信念を貫いて生きた人達と、共産主義者や反戦主義者を弾圧してきた特高。
傑作スパイ小説「ジョーカーゲーム」の作者なので、特高を巡るスパイものと思って読み始めたのですが、ちょっと違いました。
「蟹工船」の小林多喜二、哲学者の三木清らを思想犯として監視する特高(特別高等警察)を動かす、内務省のクロサキ参事官が主人公。
「ジョーカーゲーム」の結城中佐はカッコいいスパイでしたが、クロサキは官僚的で、結局は現実を都合よくねじ曲げる日本政府の目論見どおりに動きます。
その結果日本は、そして官僚であるクロサキは何を間違ってしまったのか。小林多喜二、三木清、鶴彬(川柳作家)らが暗黒の時代に自分らしく生きるのと対比されています。
こんな時代には二度となって欲しくないですが、海外の情勢を見ると不安にもなりますね。