<これまでのあらすじ>

若かりし頃、貧困ゆえ手が出なかった酢豚を
心ゆくまで食べ歩いてみたい。
ある権力者の協力を得て、その夢は叶うかに思えた。
だが、行く手を阻む謎の組織、さらには
悪夢の酢豚体験により、俺の心は折れてしまったのだ。

(詳しくは「旅立編」「怒涛編」を読んでくれ。)

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「もう酢豚なんてコリゴリだ!」

夢を失った俺はヤケ酒をあおり、喧嘩に明け暮れた。

酢豚3_野良猫


路地裏でボロ雑巾みたいに転がっていた俺を
救ってくれたのは「スナック かさぶた」のママだった。

傷ついた人の心が一日も早く“かさぶた”に変わりますように。
そんな思いを込めて付けた名前だそうだ。

酢豚3_snack


俺は涙ながらに一部始終を話した。

無言で頷いていたママは「ついておいで」と立ち上がると、
俺を街に連れ出した。

向かった先は、ある一軒の四川料理店。

酢豚3_金蘭1


「いや、もう酢豚は・・・」と躊躇する俺の腕を掴んで中へ。

テーブル席とカウンター、奥には座敷。
中国人らしき男女二人で営む、アットホームな雰囲気の店だ。

青椒肉絲、回鍋肉、麻婆豆腐、酢豚、八宝菜などの定食は800円。

ママに促され、俺はしぶしぶ酢豚定食を注文。

ママは麻婆豆腐定食。
「とびっきり辛くね!」と店主に念を押した。

メイン料理以外はバイキング形式。

ライスは白飯と炒飯。キャベツサラダ、ポテトサラダ、キムチ、
冷奴、燻製玉子、バナナ、玉子スープの全てが食べ放題!

つい最近まで、大半の定食が700円だったというから驚きだ。
遠慮なく、炒飯、サラダ、惣菜をてんこ盛りして席に着く。

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酢豚3_金蘭5

酢豚3_金蘭3


酢豚登場!玉ネギが多めではあるが、
角切りの肉がたっぷり。甘酢あんの味付けも良いな。

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ママの麻婆豆腐もひと口もらってみる。
ほう、唐辛子をかなり効かせた本格派だ。
辛いだけでなく、旨みもしっかりしているぞ。

酢豚3_金蘭麻婆


炒飯を片付けたら2杯目は白飯。惣菜もお替りして大満足。

酢豚3_金蘭お替り

酢豚3_金蘭デザート


これだけでも十分なのに、デザートまで出てきた。

美味いものを出来る限り安く、腹一杯食べてもらおうと
努力している良心的な店もあるのだ。

この店なら“回鍋肉を中華一番人気にするの団”の奴らとも
和解し、ともに食卓を囲むことができるかもしれないな。


どうやらアンタの心の傷も
“かさぶた”に変わったようだね


俺の気持ちを見透かしたようにママが微笑む。

涙を見られるのが恥ずかしくてトイレに立つ。

戻ってくるとママの姿がない。

「もうお勘定は済んでますよ」と店主に言われ、
慌てて外へ飛び出すが、辺りに人影は見えない。

急いで「スナック かさぶた」に戻ってみる。
が、店があったはずの場所には「テナント募集」の貼紙。

酢豚3_金蘭貼紙


夢を見ていたのだろうか。

またいつか心が傷ついたとき、再会できることを期待しよう。

久々に走ったので腹が減ったな。
美味い酢豚でも食いに行くか。





  
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[店舗データ]
店名:四川料理 金蘭 (キンラン)
住所:広島市西区南観音町20-7 1F(地図)
営業時間:11:30~14:30 17:30~22:30
定休日:月曜
訪問日:2015/05/03