放送局:日本テレビ
番組名:「THE DANCE DAY 2024」
放送日時:2024年5月27日(月) 19:00~21:54
番組オフィシャルHP:https://www.ntv.co.jp/dance/
https://youtu.be/85XqBbug0Vk?si=N5fzMaf-qtkCEasD
「東方神起」チャンミン出演ミュージカル「ベンジャミン・バトン」…“あなたのスイート・スポットはいつですか?”
「あなたのスウィートスポットはいつですか?」
映画でも制作され広く知られている、フランシス・スコット・フィッツジェラルドの短編小説「ベンジャミン・ボタンの時間は逆に行く」(映画は「The Curious Case of Benjamin Button」で、これを直役した「ベンジャミン・ボタンの奇妙な事件」としても翻訳出版された)がミュージカルとして再誕生した。
11日、ソウル世宗文化会館Mシアターで開幕したミュージカル<ベンジャミンボタン>は、特に調光化演出、稲尾作曲家など国内創作陣が集まった創作ミュージカルという点でその意味が大きい。チョ・グァンファ演出によると、2013年から作品開発が行われたとのことから、試みから初演まで10年以上の歳月がかかったわけだ。
小説の主人公である「ベンジャミン・ボタン」は、古い体で生まれ、ますます若くなる。時間を逆に買うわけだ。だが、古い老人から生まれたばかりの赤ちゃんまで、一人の俳優が舞台で演技することは不可能に近い。それでミュージカル<ベンジャミンボタン>は人形人形である'パペット(puppet)'の力を借りた。ベンジャミンを演じる俳優とパペットが力を合わせて時間を逆に生きるベンジャミンを舞台に具現するものだ。
<ベンジャミンボタン>はグループ東方神起メンバーチェガンチャンミン、シムチャンミンのミュージカルデビュー作として知られ、早く話題を集めたことがある。シム・チャンミンがミュージカル俳優キム・ジェボム、キム・ソンシクと共に主人公'ベンジャミン'を演技し、ベンジャミンが愛する女性'ブルー'はキム・ソヒャンとパク・ウンミ、イ・アルソルが交互に演技する。続いてベンジャミンの世話をするジャズクラブの主人「ママ」役にはハウン島とキム・ジソンがキャスティングされ、ブルーのマネージャー「ジェリー」にはミン・ジェワンとパク・グァンソンが扮する。他にもカン・ウンイル、ソン・チャングン、グ・ベクサン、イ・スンヒョン、シンチェリム、パクククソンが作品に参加する。 <ベンジャミンボタン>は6月30日まで公演される。
▲ミュージカル<ベンジャミンボタン>パフォーマンス写真ⓒEMKミュージカルカンパニー
あなたのスウィートスポットはいつですか?
ミュージカル<ベンジャミンボタン>を貫通するテーマは「スウィートスポット(sweet spot)」だ。野球が好きな筆者にとって、スウィートスポットという言葉はおなじみだ。バットにボールが当たったときに理想的な打球が出てくる最適点を意味する単語だが、今作では少し違った意味を与えた。人生で最も華やかで輝く瞬間を置き、スウィートスポットと名付けたもの。
他人とは異なる時間の流れを経験するベンジャミンはそれによって挫折することもある。そんなベンジャミンにママは人生にはきらびやかな瞬間、つまりスウィートスポットが必ず訪れると言ってくれる(ナンバー「SWEET SPOT」)。スウィートスポットの存在を知ったベンジャミンには愛する女性が一人いたが、まさにジャズクラブのレディースブルーだ。いつのまにか自分の年齢に合う姿をするようになったベンジャミンはブルーに会ってスウィートスポットを夢見る。
だが幸せな瞬間もしばらくだけ、ブルーは恣意ではなく他意でベンジャミンを去ることになる。お金を稼ぐ目的で自分を利用するマネージャージェリーによってだ。その後、歳月が過ぎてベンジャミンとブルーはまた会い、ベンジャミンはブルーと再び愛を分かち合いたいがブルーは恐れている。ベンジャミンはますます難しくなるに反して自分は老いていくので、愛が永遠にできないという不安のためだ。ブルーは涙を飲み込んで愛を無視して再び去る。スウィートスポットを夢見て味わい、イライラする過程の連続だ。
そしてベンジャミンは第二次世界大戦に徴兵される。そして戦場で入隊前3日間愛を分けたと喜ぶ兵士に面する。その兵士は短いが強烈だったスウィートスポットを置いて覚えて幸せだった。この時、ベンジャミンは悟る。スウィートスポットを享受することも重要だが、そのきらびやかな瞬間を覚えることも重要だということを。たぶんスウィートスポットを覚えているその瞬間さえもスウィートスポットであるということを。
「スウィートスポットはいつの時点か一瞬ではない。スウィートスポットが終わっても、すでに私の心にいる」
- ナンバー「Before and After」の中から。
あまりにも短いスウィートスポットに失望し、思い通りに愛が成されず挫折していたベンジャミンは変わる。ベンジャミンは再びブルーを訪ねて愛を告白し、ベンジャミンが自分のしわさえも愛してくれるという真正性を感じたブルーは永遠の愛を誓う。ブルーが認知症にかかって自分を3分しか調べていなかったのに、ベンジャミンはその3分を覚えて幸せになる。そうベンジャミンとブルーのスウィートスポットは死がこれらを連れて行く瞬間まで続く。
<ベンジャミンボタン>は観客に各自のスウィートスポットがいつだったのか考えてみる力を持ったようだ。この記事を読んで、またはミュージカルを見て一度考えてみることをお勧めします。そして思いっきり幸せにしてください。あなたのスウィートスポットはいつですか?スウィートスポットを夢見ていますか?それとも今スウィートスポットを迎えましたか?
▲ミュージカル<ベンジャミンボタン>パフォーマンス写真ⓒEMKミュージカルカンパニー
「失われた世代」を再び考える
公演を見て帰る途中、そして翌日カフェでコーヒーを一杯にして作品をまた考えてみた。この時原作を書いた小説家ピッツジェラルドが浮かんだ。彼が「失われた世代(lost generation)」を代表する作家だという点も一緒に思い出した。なぜかフィッツジェラルドが属する失われた世代とミュージカル<ベンジャミンボタン>の間に意味が通じる地点があるようだった。
失われた世代は、第一次世界大戦以後社会に幻滅を感じた若い知識人と芸術家たちが指す用語で、ピッツジェラルドを含め、アーネストヘミングウェイやウィリアム・フォークナーが失われた世代の代表的な人物に挙げられる。この世代は物質的には豊かになったが、精神的貧困の状態からは抜け出せないままさまよう社会を見て通弾し、お金の前に挫折し、絶えず不安になった。
筆者は<ベンジャミンボタン>の中のブルーから失われた世代の姿がたくさん感じられた。平凡でない家庭で生まれ、幼年期中に不安を経験し、お金を追うマネージャージェリーの過度な拘束によって不安は持続する。ブルーを取り巻く環境の不安定さは当代社会の混沌を表現するようで、ジェリーはその社会に蔓延していた物質主義を代弁する人物と見られる。
しかしある知識人の言葉のように、理性では悲観的にも意志で楽観しなければならない法。スウィートスポットの存在を知らせるママと真のスウィートスポットを悟ったベンジャミンは、さまよう人々に「楽観できる意志」になってくれる。これは一つの指向となり、ブルーはベンジャミンのおかげでさまようを止める。たぶん<ベンジャミンボタン>には失われた世代が自分たちのさまようを止めてくれる希望に向けた渇望が込められているかもしれない。
このような観点から作品を眺めれば、もう一度彷徨っている現代人たちはもう一つのメッセージを受け取ることもできるようだ。十分に慰め、希望を発見し、そのようにさまようを止めなさい。