金山出石寺の本堂は、境内の一番高いところにあります。
境内そのものが山の頂上にあるのですから、まさしく金山という山の最高地点なのです。
仏をまつる本堂にふさわしいともいえますが、これは、なかなか無いことなのです。
山にある神社仏閣は数え切れぬほどあれど、山頂に本堂とか本殿があるのは珍しいです。
山の上にあるといっても、普通は七合目とか八合目くらいの場所でしょう。
例えば有名な高尾山の薬王院は山頂ではなく山全体からいうと七合目か八合目くらいの地点に建てられています。
四国八十八か所でいうと、太龍寺とか雲辺寺とか、八栗寺とか、山の上に建てられている札所は幾つもありますが、最高地点というわけではありません。
なぜそうなるかというと、山頂や山の稜線上ですと、まず、麓や中腹よりも落雷の被害に遭いやすいことが挙げられます。次に、山で火事が起こった場合、煙も炎も高いところに向かいますから、山の中腹のどちら側で発生しても、山頂にお堂があるならそのお堂に向かって行ってしまうということです。
そして、第二とも関連しますが、水の便が良くないことです。中腹や麓ならば、谷から沢の水を汲むこともできますが、山頂ではそうもいきません。ずっと下まで水を汲みに行くか、雨水をため込むしかありますまい。そうなると、飲み水や生活用水(洗濯とか)に困るだけでなく、いざ火災などの災害があった時に水で消火するというわけにはいかなくなります。
そしてまた、別の理由があります。山頂が広場のように広く平らになっている(もしくはそれに近いくらいなだらかな地形になっている)というのが珍しく、たいていは、山頂と言えば一等三角点というように三角の上の角のように鋭い角度になっているものです。
例えば先に挙げた寺院の例でいうと、高尾山の山頂は大見晴台といって広場のようになっていますが、太龍寺や八栗寺などでは、頂上は大きなお堂を立てられるほどのスペースはありません。
神社でいうならば、埼玉県の長瀞の宝登山神社とか、神奈川県の大山の阿夫利神社などは、山頂付近に上社、麓のほうに下社がありますが、上社のほうは小さなお社で、下社のほうが大きくて立派な建物です。
建築するための物資も運びやすいという面もあるでしょう。
そう考えると、金山出石寺の本堂や大師堂、宿坊などの諸堂が小さなものではなくそれぞれ立派というのは稀有なことであり、出石寺のすごさを示しているかのようです。
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