関東三十六不動霊場の第二十三番は橋場不動院です。正式には砂尾山橋場寺不動院といい、宗派は天台宗、所在地は東京都台東区橋場二丁目の十四の十九で、最寄駅は東武伊勢崎線の東向島駅、またはJR常磐線の南千住駅です。
本尊の大聖不動明王は秘仏で、かの東大寺初代別当の良弁僧正が自ら刻んだ三体のうちの一つだという。ということは大山不動と目黄不動尊と同じ木から作ったもの、ということになるのだが、『関東三十六不動霊場ガイドブック』の橋場不動院の説明では、目黄不動尊の記述と少し食い違っています。すなわち、目黄不動尊での説明では良弁僧正が隅田川のほとりで休んでいた時に夢に不動明王が現れ……、とあるのに、橋場不動院の本尊の説明では大山寺に留まっているときに不動明王の霊託を受け……、とあるのです。
このような伝説は、各寺院の本尊がいかに由緒正しきものであるか、霊験あらたかなものであるか、を強調するために作られたようなものと考えるべきですから、矛盾を指摘しても仕方ないかもしれませんが、読み比べてみて、つい「あれ?」と思ってしまいます。
橋場不動院の開創についてですが、良弁僧正の弟子の寂昇上人が「一木三体」の不動尊の一つを持って上総国に向かった途中でこの橋場の地にいたり、不動明王の夢告を受けたので此処を有縁の地だと感じて、村人に呼びかけて堂宇を建設したのだという。
このお寺の不動尊は火伏の不動尊とも呼ばれ、明治末の大火や関東大震災、太平洋戦争時の東京大空襲などでも橋場付近は災禍を免れた、とガイドブックに書いてあります。
隅田川沿いにあり、小さなお寺ですが、付近に平賀源内の墓があるなど、歴史を感じさせます。その一方で、「東京スカイツリー」のような建造物も大きく見えるので、江戸・東京の今昔を目の当たりにできるわけです。
(2013年8月22日の「石川鏡介のブログ」より転載)

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