石手寺の中の異世界(過去のブログ記事より) | 石川鏡介の旅ブログ

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四国霊場会公認先達(権中先達)&秩父観音札所連合会公認先達です。四国霊場を中心に、古寺名刹、神社、城跡、名所旧跡。さまざまな旅の思い出を綴ります。

 

 四国八十八ヵ所の第五十一番札所の石手寺は、仁王門が国宝、本堂や三重塔などが重要文化財と、歴史的遺産の立派な建物が多く、格式ある古寺名刹ですが、それだけではありません。

 本堂の裏手の山に洞窟があり、それもちょっと変わっているのですが、洞窟を抜けた先の狭い道の向かいに五百羅漢をまつる建物があり、まるで異空間ともいうべき特別な世界を作っています。

 私が初めて四国を訪れたのが一九九七年の八月で、その時、一日目は高松市内に宿泊、二日目は善通寺市内に宿泊、三日目は伊予小松に宿泊、四日目が松山の道後温泉の旅館に宿泊したのですが、この四日目、松山入りしてすぐに浄土寺を訪れ、次に繁多寺を訪れ、さらに石手寺を訪れました。炎天下の中を歩き回り、石手寺では仁王門や本堂、三重塔、大師堂などを見学したのですが、「なんだろう、この洞窟は」となんの気なしに入って驚きました。この時は、適当に明かりがついていたのですが、とにかく細長い洞窟で、しかも途中に分かれ道があって、曲がった先の行き止まりに密教の法具「金剛杵」の大きいのがあって、これに触れて下さいと書いてあったので触ってみると、パッと明かりがついて、正確な言葉の内容は忘れましたが「こんにちは、空海です。みなさんの健康と幸せを」云々という言葉がどこからともなく聞こえました。こういう「しかけ」があることにまず驚きました。

 信徒が多くて勢いのある寺院の中には近代・現代的な趣向を凝らす所があるので、そういうものか、と思いつつ、洞窟の向こうに出てみたら、そこはひと気の無い場所で、道の向かいに何があるのだろうと行ってみたら奇妙な建物がありました。それは金色の球体の建物で、入り口には獅子のような狛犬のような奇妙奇天烈な動物の像がありました。洞窟の中が涼しかったとはいえ、炎天下の中をずっと歩いてきて頭がボーっとしてきていたので余計に驚きました。覚めた目でみることができず、ただただ、「なんなんだ、これは!」と思いました。

 向かって右には成道前の苦行しているお釈迦様像(やせこけて肋骨など見えるので苦行している釈迦像だと思われる)があり、四国の古寺とは思えない光景でした。

 球体の建物に入ってみると、一階部分はガランとしていましたが、階段をあがった先の二階部分には細長い奇妙な木像が数え切れぬほどにありました。これが五百羅漢像だったのです。

 よくみる五百羅漢とはイメージが違っていたので、最初は何がなんだか分かりませんでした。異空間・異世界のような場所に迷い込んだかのような感覚で、驚きあきれるばかりでした。

 さて、今回、四国八十八ヵ所公認先達の方と共に石手寺に参詣して、この洞窟や五百羅漢の建物にも行きました。やはり特別な空間でした。

 洞窟は節電の関係なのか、明かりが全然ついていないで、真っ暗闇でした。中に入るとはるか先に白い光が見えるだけで足元も覚束ない。もし障害物があっても分からない。まさに「無明の闇」を行く心細さを感じました。

 そして洞窟を抜けた先には「ここも日本なのか?」といいたくなるような空間。

 また、衛門三郎の生まれかわりとされる子供が握っていたという石(赤ちゃんが握れるようなサイズではないが)などの宝物が展示されている宝物館にも行きましたが、その手前にも仏伝関係の彫刻がありました。こういう彫刻や釈尊像は、遠くインドから伝わる仏教の世界宗教としての姿を伝えたいということやグローバルな世界観を表しているのでしょうか?

 やはり石手寺はいつ行っても興味が尽きない、一種のワンダーランドです。

(2011年9月13日の「石川鏡介のブログ」より転載)

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