武蔵野三十三観音霊場の散華の台紙に、番外の霊巌寺の散華を貼り付けるスペースがあったために霊巌寺へ行った、と書くと、そのためだけに参拝したかのように思われてしまいますが、以前から気になっていたお寺ではありました。
私が持っているガイドブック(満願寺教化部発行『武蔵野観音巡礼』)には二十五番札所の円泉寺の次に霊巌寺が紹介されています。
三十三観音霊場の一つに数えられているわけではないのに敢えて紹介されるほどの魅力的な寺院なのかと、興味がありました。
霊巌寺の所在地は埼玉県日高市新堀七四〇番地。近くに高麗川が流れており、川の対岸には高麗神社があります。最寄り駅はJR高麗川駅ですが、駅からずっと西へ、畑の中ののどかな道を進むことになります。ガイドブックにも高麗川駅から徒歩三十分とあるような距離です。
市街地から離れた、静かな場所にあります。高麗川がこのあたりで湾曲していて箕の形のように輪をなしているからということで「箕輪山」という山号がつけられたといいます。
宗派は真言宗智山派。本尊は聖観世音菩薩です。
本堂の南側に岩がボコボコと盛り上がって小山をなしたようなものがあります。岩石の表出で、もちろん天然のものです。ガイドブックには「自然の築山をなしている」と書かれています。まさにその通りだと思います。
その築山状の岩場の上に観音像があります。霊巌寺のシンボルであり、「霊巌」という名をよく表しているものです。むかしから人は岩石に神秘的なもの、パワーを感じ、信仰の対象としたのでした。岩そのものをご神体としている神社もよくあります。霊巌寺を開いた僧侶がこの地を観音菩薩をまつるに相応しい霊地と考えたのも頷けます。
霊巌寺の開山は室町時代前期に生きた宥仙という僧で、中興は七代目の秀照という僧だとのこと。その秀照が建てたのが現在の本堂だそうです。
真言宗のお寺らしく、境内には弘法大師の像もあります。