武蔵野三十三観音霊場の三十三番札所は八王寺です。正式には医王山薬寿院八王寺といい、宗派は天台宗、観音霊場札所としての本尊は聖観世音菩薩、所在地は埼玉県飯能市大字南七〇四番地です。
三十二番の「子ノ権現」こと天龍寺から行く場合、天龍寺の黒門前、二本杉の近くから南へ向かう林道があり、クルマの場合はその道を行きます。他に、舗装されていない登山道もあります。
天龍寺からの林道は舗装されていますが、とんでもないくらい急な下りの坂道です。しかも狭いので、通りにくいことこの上ない、という感じで、凄い山の中だなあ、という実感が持てます。おそらく、この山道を南側からクルマで登ろうとするなら、ジープのような車両でなくては相当苦労するのでは、と思います。
そのような道を進んで行くと、両脇に民家があったりします。道が狭くクルマ一台通り抜けるのがやっとで、しかもバス通りから遠く離れているので、この辺りに住んでいる人は不便だろうなあ、などと考えたりもします。
四キロちょっと進んで、やっと、少しは広い(それまでの道が狭すぎるのですが)道に出ます。そこで右折し、西の山の中へ。二キロちょっと進むとまた山道らしい坂道を上ることとなり、しばらく行くと八王寺の駐車場に着きます。
天龍寺の本坊の脇からの山道(徒歩道)で行く場合は、約三キロの道のりで約一時間かかるとのこと。
武蔵野観音霊場も、もう、二十八番札所あたりからは「武蔵野」の「野」というイメージの場所ではなく「奥武蔵」の山中の札所になっていますが、天龍寺や八王寺はまさに山の奥のそのまた奥のお寺という印象です。特に、八王寺は三十三観音霊場の最後をかざるに相応しい、一番奥まった所のお寺です。
そのようなお寺だけに、ちょっと特殊なお寺でもあります。
神仏習合の形態が守られているという事情によります。
そして、鳥居をくぐってすぐに、何故か奇妙な像(彫刻)があります。ここが奥武蔵の山中のお寺なのか、と一瞬とまどうような像です。
そして、きわめつけは、北欧のバイキングの戦士のような像です。これは「牛頭天王(ごずてんのう)」という神です。神仏習合の八王寺には牛頭天王が祀られており、その社もありますが、牛頭天王の本地仏として薬師如来が瑠璃殿という建物にまつられています。
瑠璃殿はけっこう大きな(このお寺としては)建物ですが、その瑠璃殿の前に小さなお堂があり、それこそが武蔵野三十三観音霊場の結願所、観音堂です。