武蔵野三十三観音霊場の第十番札所は新光寺です。正式には観音院新光寺といい、九番の實蔵院と同じく、真言宗豊山派のお寺で、札所本尊もまた實蔵院と同じく聖観世音菩薩です。
所在地は埼玉県所沢市宮本町一丁目の七の三番地。字(あざ)が違いますが、實蔵院のすぐ近くで、實蔵院の北の「県道二四号線」に戻って通りに出て、さらに北へ行きます。それは路地裏に出るような狭い道で、大変窮屈な感じですが、その狭い道をちょっと進んだ左手が新光寺の入り口です。
實蔵院と新光寺の距離は二百メートル程度。二番の道場寺と三番の三宝寺の距離も短かったですが、ここもまた短い距離で、便利なものだなと思いました。所沢は昔から交通の要衝だったといいます。今でも西武池袋線と西武新宿線とが交わる大きな駅があるのが所沢で、その所沢駅から一キロ程度の距離に札所が二つもあるのは札所めぐりをする者にとっては便利です。これが山の中ばかりにお寺があったら、たいへんな苦労をすることになります。
所沢の街の中心部は交通の要衝らしい賑わいがありますが、その主要道路から脇道にちょっと入った古いお寺には、賑やかな街の雑踏を忘れてしまう静けさがあります。
新光寺の本堂は、札所にしては小さいなと感じるものですが、そこに安置されている聖観世音菩薩像は行基の作といわれているそうです。お寺の歴史は、源頼朝がこの地で狩猟をした時に仮屋を建てて休息所とし、田地を寄進して仮屋に観音像を安置したことに始まる、ということです。その後、衰微したものの新田義貞によって再興されたそうです。源頼朝や新田義貞などの有名武将にゆかりのあるお寺というのは、歴史に興味ある者にとっては結構興味ひかれるものがあります。
ここの境内で注目すべきは、奈良県の法隆寺の夢殿を模して造られたという「八角堂」です。