神戸岩の、二つの巨岩の間を流れる沢を遡って山の上の方を目指しますと、標高一千百九メートルの鋸山のすぐ下に至ります。檜原村神戸(かのと)地区から神戸岩を経由してトンネルを抜けて鋸山方面へ行く道を鋸山林道といい、山を越えて北へ進むと奥多摩町の、奥多摩駅の近く(南西)に出て、青梅街道にかさなります。この林道は舗装されていますが、崖崩れが起きやすく雨の日は危険だということです。
鋸山の東には標高一千二百六十六、九メートルの大嶽山があります。この大嶽山の山頂付近に「大嶽神社」があり、神戸岩の「神」とは大嶽神社のことを指すのです。つまり、大嶽神社への入り口の戸のような巨岩だから「神戸岩」と名づけられた、ということなのです。神戸岩の前に立つと、古くから土地の人々が岩を信仰と結びつけたことがよく分かるような気がします。
檜原の人にとっては、神戸岩・鋸山経由で大嶽山へ登るのが一般的なルートだったのでしょう。大嶽山の東には御嶽山の御嶽神社の奥の院があります。まさに大嶽山・御嶽山は信仰の山で神戸岩もまた聖なる地の入り口という意味があったのでしょう。 神戸岩の狭間は人一人なら何とか歩いて北側へ行けるようになっています。段差があり、鎖を使ったりします。桟道のようになっている道で、すぐ下が沢で道そのものも少し濡れているのでなかなかスリルがあります。昔は全く整備されていなかったはずですが、今は、しっかり気をつけて通れば大丈夫です。ただし、天候が悪い時や周囲に誰もいない時などは万が一のことを考えて、歩くのを避けた方が無難でしょう。
巨岩に挟まれた狭い地に流れ落ちる谷川の水が綺麗で、いかにも冷たそうです。
(2011年7月 7日の「石川鏡介のブログ」より転載)

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