それでも乃木坂あたりでは~
私はいい女だってね~♪
都会の粋な大人の女を歌い続けてきた梓さん。
彼女を知ったのは小学校三年ぐらいの時でした。テレビの音楽番組で見た彼女はこってりとした厚化粧で真横にマイクを持ち、妖艶な視線を投げかけ、しかも直接床に座って歌うのでした。「二人でお酒を」という曲です。
当時の私は当然ながらアイドルしか興味なかった。真理・百恵・淳子・めぐみ・アグネス・美代子等々です。
テレビ画面に映る梓さんはどう見ても明らかにアイドルとは雰囲気が違う。匂いが違う。別世界の大人の女でありました。申し訳ないですが、梓さんの真っ赤な口紅がテレビに映るたび、「ぐわ~なんかこわいっ!」と思ったものです。小さな子供は自分とは異質の世界の人を見ると畏怖するものです。表現力もないからみんな怖い人とカテゴライズしてしまう。
それから数年後のこと。私の住む町に移動販売の八百屋さんが軽トラでやってくるようになりました。その軽トラからいつも流れてくる曲が「こんにちは赤ちゃん」だったのです。「優しい音色の歌だなあ、誰が歌ってるんだろう」と思っていたら、ある日、母が「梓みちよの歌ね」と言ったのです。
ええ~~っ!!
あの厚化粧で真っ赤な口をした怖そうな(失礼)
梓さんが歌ってたのかっ。信じられない、同じ人の歌だったとは。当時はネットなんてものはなく、テレビに映る姿がすべてです。調べようがない。これはずっと後にわかったことですが、彼女は長く「こんにちは赤ちゃん」を公の場で歌わず、封印していたそうです。だから彼女がこの曲を歌う姿を私は見る機会がなかった。私は「二人でお酒を」や「メランコリー」のイメージしか持ちようがなかったのです。「こんにちは赤ちゃん」を歌う姿を拝見したのはネットが我が家にやってきてユーチューブを見られるようになってからのことでした。
私は先日テレビ録画した彼女の映画(DVD)を見ました。
「夢で逢いましょ」という梓さんの女優としてのデビュー作です。昭和37年の映像に19歳の初々しい梓さんが登場しています。まだ「二人でお酒を」の「ふ」の字もないお顔でした。しかも女子高生役で紺の制服を着ている。トータル数分しか登場していないんだけど、彼女の原点を見るような想いでした。この作品のDVDを見て「二人でお酒を」と「こんにちは赤ちゃん」のどちらが本当の梓さんなのだろうと考えるのはやめました。どっちも梓さんの素なのだろうと私は感じたのです。
いままで素敵な音楽を聴かせていただきありがとうございました。どうぞ安らかに。
(終わり)
