料理をもっと楽しくするために〜下処理と、鱈と、リアル料理教室。 | Keep a journal @ 山脇りこ/Riko's Kitchen

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料理をもっと楽しくするために~下処理と、鱈と、料理教室。

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鰯(イワシ)は百遍洗えば、鯛(タイ)になる・・なんて言葉が昔々からあるってことは、
鰯の下処理は、しっかりしたほうがいいと、
きっと食いしん坊の先達のみなさまも思ったのでしょう。

ともかく、魚も肉も、食べるのに、うん?とおもうような臭みがあるのは、いただけません。
たべておいしい香りや旨味とは違う、くさみです。原因は、主に、血と脂かと思います。
なので、昔々から、東西を問わず、和洋中も問わず、いくつかの臭み抜き、下処理のテクニック(方法)が考えられています。
主に、洗う、茹でる(湯引きする、ゆがくも含む)、焼く、ではないかなと思います。
もちろん、魚はとびきりに新鮮にこしたことはないのですが、
新鮮な魚でも、臭みをトルことが必要な場合も多々あります。
いわんや、家庭で手に入れる魚ならなおさらのことですね。

それは、牛乳につけるとか、ショウガを入れるとか、
そういうこととは、まったく別の次元のこと。

私は自分の教室ではいつも、下処理のことをかなりしつこくやっています。
そのときに言うのは、例えば、鯖を煮るとき、
ショウガやネギと一緒に炊かなかったら臭い・・っていうんじゃあ、やっぱりダメだということ。
そういうものがなくても、臭みなく炊けるようにした方がいい。
あくまでショウガやネギはお手伝いだし、しっかり下処理した魚と炊けば、
ショウガもネギもおいしく食べられます。

お肉も下処理が必要なものは、同じで、例えば、鶏レバーなどは、しっかりした味をつけずに
塩コショウで焼いただけでも、おいしく食べられるような状態にしておきたいと思います。
となると・・・いきなり牛乳につけても、効果はあまり感じられないはずです。
鶏レバー、私は、ゆっくりと流水の中を泳がせて、血を筋と塊で抜いていきます。
血は鶏レバー全体にぼんやりとあるのではなく、人の血管さながらに、筋であります。
それをすーっと、筋で無理なく抜いていくのです。
文字通り、少し蒼白になります。教室でやってみると、一目瞭然、歓声があがります。

さて、1月の教室はブイヤベースでした。
有頭海老、牡蠣、イカ、ほたて、アサリ、そして鱈(生)というラインナップ。
ブイヤベースは、料理としてはもう、手順は至って簡単です。
それを、家庭で作るからなおのこと、下処理が命の料理で、それぞれに必要な下処理があります。
中でも、みなさんが感激してくれたのが鱈でした。
鱈は、ちりなべにしても、寄せ鍋にしても、臭い・・と思って使うことが少なかったとのこと。
ご主人やお子さんが、生臭みを嫌うからと。
そう、鱈はやはり脂が臭い魚かなと思います。独特なだし、うまみ、香りがありますが、
それとは別に臭みがある。特に、焼いたり揚げたりして食べるわけではなく、
他のものと一緒に鍋に入れる・・・ということで、
切り身であっても、タフな皮と身の間にうっすらとある脂の臭みをぬきたいところ。
人で言えば、背中にうっすらある脂(うっすらならいいのですが・・)というところでしょうか。

鯖やイワシと違い、鱈とか鯛は皮もタフなので、焼くのも一つです(鯛はあら炊きの前に焼いたりします)。また湯引きもいい手です。温度にデリケートにならず熱湯でできます。
1月の教室では、二口大くらいの切り身を並べて、
皮目から、熱い湯をしっかりかけて湯引きしました。

仕上がったブイヤベースでみなさんが言ってくれたのが、
「鱈が・・・とてもおいしい」ということ。
まったく臭みはなく、だしはしっかり出ていて、身もふわっとおいしい、
という状態を目指しました。寄せ鍋にならないように、笑、魚貝がおいしいように
短時間で仕上げるブイヤベースで、とてもいい仕事をしていました。

海老や牡蠣を、塩と片栗粉で洗う、ホタテを60度くらいでさっと湯引きする、
イワシの血をよく洗う、酢を入れた湯で湯引きか、焼くかする・・
なんでもない一手間なのですが、料理の仕上がりに大きな違いをもたらします。

ところが、料理本ではこういう部分はなかなか伝えられません。
実は野菜にもある、ほんの一手間の下ごしらえも、なかなか書けない。
理由は、概ね3つかな、と思っています。

ひとつは、レシピが長くなるから。内容の如何に関わらず、今は、長いレシピは嫌われます。
こういう部分こそ、勘所・・と主張しても、重要な料理の手順と見なされなかったりします。
ともかく、レシピは短ければいいという傾向があるのですね。
なぜそうするか?も書きたいのですがなかなか書けません。

次に、やったことがない人が多いからかな?と最近気がつきました。
多くの人が、ああ、やるよね!大事!あたりまえ!と・・・もしかしたら、母の世代(もうすぐ80歳!)なら思うようなことも、むしろ新しいこと。
やったことない人が多いので、想像がつかず、書いても共感されない。
やるとおいしくなることを説得、説明して納得させなければならない。
知らない=やらなくてもすむのではないか?と思う・・もちろん、それでもいいかもしれないけど、もしもやったなら、新しい不思議調味料を購入するより、格段においしくなるのですが・・・そこがなかなか伝えられません。

3つめは、どうやら、そもそも下処理が必要な食材は人気がない・・・ということのような。
いつも行く魚屋さんでも、丸の魚は売れない、青魚は売れない、一番売れるのは、刺身と焼き魚用の切り身(鮭とか)と聞きますし、レバーも売れないことが多いので、お肉屋さんの方で加工することが多いとのこと。
しかし、一度やってみれば、なんとも簡単。並べて湯をかけるとか、流水で泳がせるとか、片栗粉で洗うなんて、たいしたことはありません。教室でも、かんたーん、と声が上がります。
その手間を惜しんで、イワシが臭いとか、レバーが苦手とは、
食いしん坊から見たら、何とも残念です。

考えれば、こういうことをやるのは、なにしろ、とにかく、おいしいものが食べたいから!
というそのあっつい情熱によるもの。
ちまたでたまに、そのくらいできないとニッポン女子として・・・とか、
母として・・・なんて言う人がいますが、そんなことはまっーたく関係なし。
できなくても知らなくても何の問題もありません。
おいしいものが食べたい!一手間かけたら、おいしいから、やる!それにつきます。

たぶん、新しい複合調味料や、すごい食材をゲットするより、簡単においしくなるのではないでしょうか。結果的に、調味料も、種類も量も少なくなると思います。
臭いからと、砂糖や醤油をだばだばだーと、追加で入れることもなくなります。

よく、出版社さんが言う、どこにでもある材料と、基本的な調味料で・・・というのも、
実はしっかり下処理をすればこそ、かなうこと。
短いレシピが簡単ではなく、きっとそのあたりをちゃんと説明したら、
もっと料理は簡単でおいしく、作るのが楽しくなるのになあ、と思います。
とくに、こういうのは、いくつか覚えれば、応用が利きます。
1を知れば、10ステップくらい、ぐっと気分も実力もあがる、おいしさへの近道。
やったことがない人こそ、新鮮に、プロセスとして楽しくできるかもしれません。

簡単でも、おいしくなかったら、つまらないし、作る喜びもない。
一手間かかってもおいしいなら、うれしいし、作る喜びもあるというものです。

いつか、件の3つの壁を破って、笑、レシピは、30品くらいで、
プロセスたっぷりつけた本を作りたいな、と妄想しています。

とはいえ、書籍や雑誌といった平面では伝えにくいのもまた一方の事実。
そんな意味で、やはり教室でのリアル&深い時間はとても大切だなと、特に感じている日々です。

今や、高級魚になったイワシ。イワシのおいしさはたまらないので、鯛になってもらってもうれしくないわけですが、ひとつ、百遍、洗ってみませんか???

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