アフターダーク (講談社文庫)/講談社
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 灯台もと暗し、という言葉を実感する出来事があった。2004年9月に書き下ろしで刊行されたという村上春樹の「アフターダーク」を読んだことだ。

 レーゼシナリオ文体への考察のため、地の文が現在時制の小説がオースターの「幽霊たち」以外に無いか探していたところ、このアフターダークを見つけた。春樹作品としてはいくつかの話題作の合間にひっそりと書かれたため、そして、私は彼がさほど好きでないため、それ以前にこの作品の存在に注目したことが無かった。だから読む前は単なる現在時制小説の一例として読んだのだが・・・これってほとんどレーゼシナリオじゃん!「限りなくレーゼシナリオに近い小説」という感じ。プイグの「蜘蛛女のキス」やデュラスの「破壊しに、と彼女は言う」よりもレナリオ的と思った。

 メルトン四世はどう言うか分からないけど、私はこれをレーゼシナリオと言って良いと思う。冒頭(厳密には第二章)で、作品内世界を映像作品と見立てて、かつ読者の視点をカメラ視点に固定する姿勢をとることが宣言されているからだ。このような前提で書かれた文芸が、シナリオ形式でないわけがない。柱書きは無いし、台詞前の役名表記も、ホテル・アルファヴィルの従業員間の会話の幾つかに限られているから、一般的なシナリオ・フォーマットを十全に導入しているわけではない。でも、カメラワークについての言及と現在時制は終始貫徹されている。タイトルにダークとつくだけあって、病気にたとえるなら「陰性レーゼシナリオ」という感じだ。

 作品自体への評価を言うと、マリやタカハシやカオル等ホテル従業員たちが登場する快活な場面群を「動」とするなら、姉エリや白川や仮面男の登場場面は「静」と言えるが、後者の部分が退屈で冗長に感じられた点が難点か。この部分がもう少し量的に切り詰められて、少ない文章量なのにブラックホールのごとく不気味で強烈な存在感を誇示するようになれば良いのになぁと思った。あとの部分は、内容的にも分量的にも悪くない。「ダッチ・シュルツ 最期のことば」「ニグロフォビア」はマイナーに甘んずるしかないような表現だが、本作品は前衛臭、実験臭が抑えてあり、メジャー感を手放してないのも好ましい。

 これが発表された2004年と言えば、綿矢りさと金原ひとみが芥川賞を取った年で、阿部和重が後の自身の受賞作でグランドフィナーレと揶揄したような年であった。いまわの際に初期レーゼシナリオを書いた芥川の二度目の死期に、現代を代表する作家(ミリオンセラーを二回出しているし、国際的な賞を複数回もらっているし、国内的にも芥川賞は取れなかったが谷崎賞は取ったし、後者の方が玄人筋に認められた賞と言われるから、代表的作家と言っていいだろう)である春樹がこういう「ほぼレーゼシナリオ」を書くという現象は面白い。あれからもう十年弱が経つんだな~、来年でちょうど十年。振り返ると90年代ゼロ年代は本当に空白の時代であった、と深い感慨とともに言うしかない。巨大なる停滞に乾杯。

 これが出された2004年下半期は生涯を通して暇な私にとって珍しく私にとって「激務の季節」で、読書する余裕どころか出版状況に関心を持つ余裕さえも無かった。年が変わって余裕ができた2005年に、90年代のウォン・カーウァイ来日時の雑誌インタビューで、この監督が映画技法を学べる作家としてマヌエル・プイグの次点として春樹を挙げていたことを突如思い出して、「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」を読んだのだった。これもレーゼシナリオ研究の一環としての行為だった。それ以前に春樹作品で読んでいたのはデビュー作「風の歌を聴け」と幾つかの短編だけだったが、「世界の終わり~」を読んで「はぁ、確かに映画的な小説だな~」などと思っていたのだった。なんと間抜けな!ほぼレーゼシナリオのアフターダークが出た直後だというのに!本作品に出てくる、追跡目標である白川とすれ違ってるのに全く気づかない中国人のようだ。俺は駄目だ。しかし、これがシナリオ風であることに注目して騒がなかった他の人たちはもっと駄目だ。村上春樹といったら、好き嫌いは人それぞれとしても、超有名な作家なのにぃ~。というわけで、逆にレナリオローグとしての自信を深めてしまった。春樹ほどの有名作家が、ほぼシナリオ形式で書いてたのにそれに注目する人はあまりおらず。私はその10年以上前、ダリウス・ジェームズがデビューする前からそれを追求していた。

 思い起こせばデビュー作「風の歌を聴け」にしても、断章形式であるということがまずシナリオ的だし、大筋に無関係なディスクジョッキーの場面が挿入されるところなどもカットインっぽい。谷崎賞受賞作「世界の終わり・・・」についても、二つの無関係な話が交互に書かれて同時進行する、という程度なら、映画発明以前に書かれた小説にもザラにありそうだが、この長編のように、その場面転換がリズムを刻んでアップテンポになってゆくような感覚は映画の影響抜きには難しいと思う。彼はそもそもシナリオライター志望で早稲田の図書館で洋画シナリオを読みまくる学生時代をおくっていたというのは有名な逸話である。彼は最初からレーゼシナリオに接近するものを持っていたのだろう。シネロマンやシネマティック・ノベルと呼ばれるものを追求してきたのは間違いない。

 ともかく、『アフターダーク』は、今まで読んだどのレーゼシナリオやそれに準ずるシナリオ風小説よりも、初心を思い出させてくれた作品であった。出来はともかく、こんな感じのことがやりたかったんだよな、と再認識した。
 レーゼシナリオって何ですか?って訊かれたら「春樹の『アフターダーク』をよりシナリオ形式に近くしたようなものだよ。興味があったら図書館で『ニグロフォビア』読んでみて」と言えば通じるな。時間の節約ができて嬉しい。
 ジョー!明日はこっちだ!

芥川賞を黒田夏子さんの横書き小説が獲得した。むかし、メイドインジャパンという横書き小説で文藝賞かなにかを受賞した黒田晶さんとは血縁あるのかな?


芥川賞を受賞するくらいなら、もう横書き小説は普通の小説です。しかも、いかにも今風なヤングじゃなく、高齢というところもイイ!


最近熟女の写真ばっかり貼ってるな。次は「きんさんぎんさん」か?w



例是道   ~レーゼシナリオ論など-o

検察の罠/日本文芸社
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年末の「未来の党」分党騒動には、呆れた。


で、森ゆうこという今回の騒動の主役に注目して、彼女の本を読んでみたわけですが、ここではマルサの女ばりに司法権力に挑戦する勇姿が描かれていて、大変面白かった。この闘争から生じた武者震いが止まらなくなって、無意味な党内抗争をやってしまったのか?

http://nicoviewer.net/sm12476826


今年の大ニュースは、冷泉が、ピエール・バルーのアルバム『花粉(ル・ポレン)』製作に携わった、高橋幸宏氏(YMO)、鈴木慶一氏(ムーンライダーズ)、清水靖晃氏(マライア)と、twitterでやりとりできたことだ。


それ以外では、スネークマンショーの桑原茂一氏とも。


感慨深い。


ちなみにエントリータイトルは、このアルバムの表題曲『花粉』が使用されたセゾン系のCMのキャッチコピー。仲畑高志によるものだったよな。そういや、このアルバム買ったのクリスマスだったよな。


ル・ポレン(花粉)(紙ジャケット仕様)/ピエール・バルー

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自民党の総裁選で、石破茂、石原伸晃、安倍晋三から、安倍が選ばれ総裁になったと聞いたとき、自民党は政権を奪還する気が無いのかと思った。総理の任期中に病気で退陣なんていうのは自己管理の甘さだろうが不可抗力だろうが資質に欠けると烙印されるのが普通だろう。病気が治ったから、再挑戦、などということが許されるはずが無い。ところが、そうなってしまった。


それだけに留まらず、衆院選で自民党が圧勝の予想が新聞で流され、「まさか。だって、そんなことになったら安倍政権が復活しちゃうじゃないか」と思ったのだが、どうもマジらしい。


16日、私は、あんなのが総理に再就任したら、日本が世界から舐められちゃうと思って、それを阻止するためだけに投票所に向かった。


翌日朝刊を見たら、新聞の予想を上回る自民の圧勝。不思議な悪夢を見ているようだ。


まあ、自民が下野して、いかにも老害という人は淘汰されたようだから(総裁選の3人は、みな1950年代生まれだから、政界の感覚ではかなりの若返りだろう)、その意味では政権交代は自民のほうには良い影響はあったのかもしれぬ。


よしりんの新刊『ニセモノ政治家の見分け方』も同じようなこと書いてたな。というか、病気で止めたような人に総理が任せられるか?っていう常識を言う人の声が小さすぎるのかもな。

ニセモノ政治家の見分け方 ゴーマニズム宣言ライジング/幻冬舎
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1969年ごろに、日本でも『断絶の時代』のブームがあったそうだ。そして2010年の『もしドラ』ブーム。1990年前後に『新しい現実』『非営利組織の経営』などが出たときも、ブームっぽかったな。ブームだとマスコミで騒がれたわけじゃないけど、最近、よく名前見るな~って感じが確かにあった。


アラウンド1970年、1990年、2010年と、20年周期でドラッカー・ブーム起きてるね。


http://mimizun.com/log/2ch/manage/994181576/

2chのこのスレ、アポロンというコテハンが、マルクスとドラッカーの類似性について語っている。


http://blog.livedoor.jp/h7bb6xg3/archives/51591325.html

ここにも、こんなこと言ってる人が。