私はそんな瞬間が嫌いではなかった。
人が何かを乗る越えていく瞬間ー私にはそんなふうに思えるからだ。人は強いのだと、教わるような気がするからだ。
本書より
すごいものを読んだ。
始まりは、こうだ…。
2007年、日本テレビ報道局に席をおく
この本の著者の清水氏は、部長に報道特番の話をふられる。
「未解決事件とか、どうですか?」
96年に群馬で起きた
「横山ゆかりちゃん誘拐事件」。
4歳の女の子がパチンコ店から姿を消し、防犯ビデオに写っている男が重要参考人として、何度もその情報を日本中に伝えられたが、犯人逮捕にいたっていない。
ゆかりちゃんは、いまだ行方不明のまま。
周辺を調べていて、ある事に気付く…
6年前にも幼い女の子が、隣町でパチンコ店から姿を消し、翌日遺体となって渡良瀬川の河川敷で発見されている。
90年5月に起きた松田真実ちゃん事件。
通称、足利事件。
…共通点は、パチンコ店。
更に6年前の84年11月に、同じ足利市のパチンコ店で、5歳になる長谷部有美ちゃんが姿を消し、1年4か月後に遺体となって発見されている。
更に調べると、79年8月には足利市で福島万弥ちゃん5歳が自宅横の神社から行方不明
群馬県太田市で、87年9月に8歳の大沢朋子ちゃんが公園から姿を消し、二人とも渡良瀬川の河川敷から遺体となって発見されている。
17年間に半径10キロ圏内で起きている幼女誘拐殺害事件。
警察も認めていない、マスコミも報道していない、79年から96年の間の連続幼女誘拐事件。
埼玉と東京で起きた幼女連続誘拐殺人事件、通称宮崎事件は、88年から89年の出来事。
それよりはるかに狭い、この半径10キロ圏内での事件。
同一犯という仮説立てるが、その連続性で警察やマスコミが騒ぎ立てない理由とは
解決済みとされる事件が一件、その中にある。
足利事件と呼ばれるもの。
犯人が捕まり無期懲役の実刑が降りている。
日本で初めてと言われるDNA鑑定の証拠採用と本人による自供が裁判の決定的な有罪の証拠とされている。
連続性の見える事件でも、その中一件でも逮捕・有罪となると全てが解決したかのようなイメージで世間では、ウケとらえる。
しかし実際は…足利事件犯人逮捕後に横山ゆかりちゃん事件が起きている…。
事件を調べだした清水氏が、ある日奇妙な事実に突き当たった…。
ある男の存在。
その男こそが…事件の真犯人ではないか…と
目撃者の証言で出てきた特徴で、通称ルパン。
真犯人を立証するには、足利事件を否定しなければ、その男のもとにはたどり着けない。
当時の関係者に会う。話を聞く。
被害者家族…取り調べに関わった警官。
現場に行き調べる…
現場に行き調べる…。
そしてついに足利事件の犯人とされる菅谷氏が、獄中で無罪を訴え続けている事を知る。
足利事件の冤罪を立証するには、当時最新と呼ばれた警察の科学捜査と真っ向から対立するしかない。
そこに立ちはだかる組織ぐるみの壁。
桶川ストーカー事件で、警察よりも先に犯人にたどりつき、県警組織の矛盾とぶつかり続けた著者の執念がたどり着いた、足利冤罪事件。
その先にある国家権力の更なる壁。
迫る時効…。
犯人は、まだ捕まっていない。
そして、ゆかりちゃんの行方も…。
小さな声を聞き続けた著者は
本書のラストをこうしめくっている。
今も耳の奥から消え去ることのない、小さな声。
「つらかっただろうね。夜暗くなって、知らない人にこんなところに連れてこられて」
「おねえちゃんに会いたかったよ…なんで真実ちゃんだったの?」
「お母さんもそれがわかんないんだ。返して欲しかった」
何度も何度も報じたぞ。
ルパンよ、お前に遺族のあの慟哭は届いたか。
お前がどこのどいつか、残念だが今はまだ書けない。
だが、お前の存在だけはここに書き残しておくから。
いいか、逃げきれるなど思うなよ。
これ、文庫X版の表紙です。
