新日本プロレスの強さの象徴、「IWGP」のベルトを巻いた、若きチャンピオンの試合を見たのがきっかけだった。
対戦相手は藤原。
組長の愛称で有名な、間接技の鬼である。
当然、会場の人気は藤原組長が圧倒していた。
声援は全て、組長に向けられていたもの。
その中で、その若きチャンピオンは戦い、そしてベルトを防衛した。
試合終了後のテレビのインタビュー。
「どうでした?大変な試合でしたね。会場の声援は、藤原組長をかなり応援してましたが?」
「いえ、僕もファンだったら、きっとそうしていたと思います」
「戦いにくくなかったですか?」
「その中で、良い試合をするのが僕の仕事ですから…。組長を応援しにきて、でも…今度のチャンピオン結構いいじゃんって言わせれば良いだけのことですから」
惚れてしまった…。
そのチャンピオンの名は橋本真也。
それから、彼の試合を見るたびに熱くなっていた。
気がついたら、すっかりプロレスファンになっていた。
彼が亡くなって、一年が経つ。
一年前の今日、何していたのかと言うと…。
悪いと思いつつ、機材準備を抜け出して、青山にいた。
橋本真也の葬儀に来ていた。
どうしても、遺族の方に香典が渡したくて。
戦う彼の姿を見て、熱くなっていた自分。
しかし、そんな彼はもういない。
これからは自分自身で熱くならねば…。
そんな事を一年前、思っていた。