「地方自治体におけるEBPM(証拠に基づく政策立案)勉強会」に出席しました。
講師は、経済産業研究所(RIETI)でコンサルティングフェロー 津田広和氏。
「今私たちが問わなければならないのは、
大きな政府か小さな政府かではなく、機能する政府か否かです」オバマ前アメリカ大統領
国や自治体などの政策が、引き継がれてきた「慣習」や
ステークフォルダーの意向、政策立案者の「直観」、
他団体の模倣・引き写し、果ては担当者のメンツや意地により形成される場合が少なからず存在します。
このように形成された政策が当初の政策目的を果たさずに
終了する場合も多く見うけられます。
一方、様々な政策課題が国や自治体には山積しており、
限られた予算・資源のもとでの政策は実効性(effectiveness)と
効率(efficiency)がますます求められるようになっています。
こうした中、証拠に基づいて合理的に政策判断を行う、「EBPM"Evidence Based Policy Making"」は、
国だけでなく自治体においても取り入れるべき政策ツールです。
今回、横浜市の財政担当課長であり、経済産業研究所(RIETI)で
コンサルティングフェローとしてEBPMの研究をされている津田広和氏をお迎えし、米国におけるEBPMの最新事例を紹介していただきました。
〈Per Scholasのインパクト〉
ITスキルに特化した就業支援プログラム"Per Scholas" →
所得2倍・卒業率85%・プログラム参加者1,000人・就職率80%…
果たして因果関係はあるのか?
因果関係 ≠ 相関関係
因果推計 = 介入効果(政策活動によって因果関係としてもたらされた効果)の推計
※インパクト評価とも呼ぶ
ゴールドスタンダードと言われる因果推計手法が、
「ランダム化比較試験"RCT"」…実験的に介入グループと対象グループを作って比較する。
ポイントは、両グループを無作為に分けること。
〈多くの政府や自治体における現状〉
1.そもそも目標指標を設定していない。
2.目標指標として、アウトカムではなく、アウトプット又はインプットを掲げている。
3.アウトカムを目標に設定しているが、評価手法が厳格ではない。
〈EBPM(証拠に基づく政策立案)とは?〉
エビデンスとは何か?…狭義には介入効果の因果推論。
広義には、政策を支えるデータや事実。インパクト評価のみならず、
業績評価、プロセス評価、その他データ分析全般を含む。
米国等においては、インパクト評価を特に重視しつつも、
複数の質の高いエビデンスがバランスよく整っていることを重視(=エビデンスのポートフォリオ)
〈EBPMの実践〉
①アウトカム志向
アウトカム志向になるには、二つの課題
1.複数部局間の連携
2.首長や担当者等の任期を超えた継続性の担保
(例)NY市の生徒長期欠席対策→
正確なデータの把握と情報共有→
幾つかのプログラムを実施し、メンタープログラムに効果があることごRCTで実証される
→結果、出席率向上に加え、学力も向上
②既存エビデンスを最大限活用
米国等では、エビデンスを一覧性のある形で分かりやすく公表するクリアリングハウスの構築が進んでいる
③エビデンスベース構築
効果あるプログラムを開発するためには、効果の見込めるプログラムをパイロット的に導入し、評価し、
その結果をプログラムの拡充、改善、廃止につなげるサイクルを確立することが必要。
「効果のないプログラムは効果の出るように改善しよう」
④イノベーションの導入・活用(行動経済学)
2010年イギリス キャメロン政権が"Behavioural Insight Team"(ナレッジユニット)、行動経済学の活用で政策効果を大幅に改善(納税督促で16%の税収増)。
〈英国ナレッジユニットが開発した枠組み〉
Easy…簡潔に!簡潔かつ障害がないならば取り組みやすい
Attractive…人々はキャッチーかつ魅力的なものに弱い
Social…人々は他人がやること、やったことに大きく影響されがち
Timely…介入は、悪習が身につく前、もしくは良い慣習が失われる前にこそ効果あり
〈EBPM実践のポイント〉
●目的に応じた質の高いエビデンスがポートフォリオときてバランスよく整っていることが重要。
●エビデンスで特に重要なのは、政策介入と介入効果との関係を
因果推論にするインパクト評価。
●エビデンスの活用に強い情熱を持ったリーダーやスタッフの存在。