『縮小都市の挑戦』矢作弘 | 石川巧オフィシャルブログ「すべては三浦のために」Powered by Ameba

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一期一会を大切に、神奈川県議会議員石川たくみのブログです。
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正月には本を読みなさい。

吉田松陰が妹に宛てた手紙に
「正月はいづくにもつまらぬ遊事をするものに候間
夫れよりは何か心得になる本なりとも読んでもらひ候へ」と書かれています。


矢作弘著作『縮小都市の挑戦』を読みました。
財政破綻したデトロイトや産業転換に成功したトリノの事例から、
コンパクトシティを超えた、縮んでいく都市について議論がされています。
ポストフォーディズムの都市政策では、都市ブランディング戦略を作り上げ、
都市イメージに合わせて、大企業誘致ではなく、
多様な中小企業やベンチャー企業の支援育成、
近隣都市や大学、美術・芸術との水平連携が必要、
そして資本を呼び込むためのインフラ整備ではなく、
差別化された「生活の質」や「場の質」向上をしていくべきであると主張します。



都市の縮小は、地球規模で進行している…

縮小都市研究は、21世紀を迎えて本格化した新しいジャンルです。
ドイツ統合後、旧東ドイツには、20世紀末までに100万戸を超える空き家が発生し、
その対策として打ち出されたのが始まりと言います。

「都市の縮小を引き起こす要因は、個別バラバラに存在しているのではなく、
共通する環境を背景に展開される経済的、社会的な諸活動―
すなわち、「グローバル化」という同時代性―を抜きには語ることはできない…
日本の場合は、出生率の低下と、求職や郊外化によっておきる
都市間移動が縮小の主要なファクターになってきた」

「コンパクトシティ論は、都市空間の形成に関心が集約されている。
縮小都市論は、「都市の「かたち」」を論じ、働き方/暮らし方を含む
都市活動の総体を問題にしている。
…いずれの都市論も、目指すところは「持続可能な都市」である。
しかし、それ以外考え方の起点は、むしろ逆である。
…縮小都市論は、「縮小する都市の現実」を理解するところからスタートし、
それを踏まえて「持続可能な縮小都市の「かたち」」を考える。
一方、コンパクトシティ論では、まず「環境負荷の少ない、
スプロールしていない集約型の都市」という理念モデルがある。
…日本では、都道府県、あるいは市町村の関係(地方自治体の「かたち」)と
空間整備計画を両眼に据えて政策を立案したり、研究したりすることが少なかった。
そうなったことには、霞が関のタテ割り行政の影響がある。
空間整備や交通計画は国土交通省、自治の「かたち」に関する政策は総務省に属し、
省庁間の権限に対しては相互不可侵を原則としてきた。
コンパクトシティ論は空間計画が中心議題で、国土交通省の領域である」


「都市の縮小が常態化し、反転する気配がないとすれば、
都市の縮小力を望ましい「都市の「かたち」を達成する方向で
活用できないだろうか、というのが縮小都市政策である」

「自動車産業の拠点都市として20世紀を奔走してきた
デトロイトとトリノが、縮小都市となって久しい。
…デトロイトは継続して縮小している。…デトロイトは2013年7月、
連邦破産法第9条の適用を申請し、財政破綻した。
(21世紀の初めの10年間に、25万人の人口減少。
1950年のピーク時には180万人を超えていた人口は現在、70万人以下に落ち込んでる)
…黒人率は85%に達し、…失業率は全国平均の二倍である。
…市内には、破棄された住宅が7万3,000戸…大半は不動産税を納めていない。
督促通知を出しても所在不明で戻ってくる
(土地が雑草に覆われ、人間の暮らしが消滅し、土地が地代を生まなくなった)。
2002年度の歳入は19.5億ドルだったのが、2012年度には15.2億ドルに下落した。
…警察官を減らし、消防士を削減した。
その結果、緊急連絡してもパトカーが到着するまでの所要時間が平均58分、
重犯罪の90%が未解決、40%の街路灯が壊れていて夜間に点灯しない、
という破綻都市の悲しい風景になった」

「アメリカでは、プロスポーツとカジノは、「都市経済の活性化にはつながっていない」
という研究が圧倒的に多い(デトロイトにはプロスポーツ4チーム、カジノが三ヶ所ある)。
他山の石とすべし。…(カジノについては、)一般的に他の消費に向かっていたお金が
カジノに流れ、むしろマイナスの経済効果が発生する、と指摘されている。
デトロイトのカジノは、収入減が深刻である」


デトロイトの再生では、政府が介在しないでー民間財団、企業、機関の協働、
あるいは「協働の企業スペース」ー民間活動ばかりが機能しました。

「都市政府が、再生ビジョンを提示し、リーダーシップを発揮し、民間を
まとめて一丸となって走るという「都市社会システム」が機能していない…
デトロイトは財政再建を急ぐと同時に、「統治」する力を養わなければならない。
それは官僚的、専横的な統治でなく、ステークホルダー間の利害を調整し、
デトロイトを持続可能な都市に先導する政府のパワーを育てる、という意味である」



「(自動車メーカー)フィアットを頂点とする垂直型「都市社会システム」が
トリノの一切を牛耳っていたが、それが崩壊し(1975年120万人いた人口が
2000年には86万人まで減少)、最近のトリノ復活の枠組みは、EU、州政府、
大学・美術館などの機関、民間財団、企業、経済団体、非営利組織が構成する
連携/協働のガバナンスー水平連携型「都市社会システム」である。
そこでは、トリノ市政府は、成長とイノベーション、都市のブランディングを重視し、
調整型のリーダーシップを発揮している」

「ポストフォーディズムでは、特定企業を贔屓/支援する都市政策は時代遅れになる。
都市政策はより広範囲を視野に、都市全体の質の向上を目指すようになる。
生産性の向上に直結する都市インフラを揃えて外から資本を呼び込むのではなく、
都市全体の「生活の質」「場の質」を改善し、
それを武器に都市間競争に打って出るようになる」

「「トリノの再位置化」が顕著になった2000年前後以降、それまでの人口減少傾向が反転し、
増加に転じた。人口増加を牽引しているのは、モロッコ、東ヨーロッパからの移民である」

「最近は、名所旧跡/景勝地を回遊する観光に比べ、いわゆる都市観光に人気がある。
都市観光は、「その土地の人びとの暮らしぶりを拝見、できれば体験したい」
という旅行である。その際、当然、都市観光を成功させるためには、
「都市イメージ」が大切である。「訪ねたい」街が多いほど「暮らしたい」都市になる。
「都市の質」アップは、「生活の質」の向上である。それがトリノの新しい
「都市イメージ」形成を目指す、都市ブランディング戦略になった」

「20世紀後半のトリノは、フィアットのワンカンパニータウン型モーターシティとして
灰色イメージの、労働者都市として差異化されてきた。
しかし、世紀末から21世紀を迎え、「都市イメージ」の
パラダイムの転換を目指すようになった。
建築、映画、デザイン、歴史、スポーツ、科学・技術などの大規模なイベントを展開し、
ヨーロッパ各地から多彩なジャンルの演奏グループを招聘する夏の歌祭を
開催するようになった。
これらの連催イベントは、トリノの「都市イメージ」を大きく変えることになった。
インターナショナルなイベントは、トリノが外の世界と遭遇する機会を作り出した」

「一般的に駐車場は、「良質な都市空間を達成するための妨げになる。
「生活の質」にとって邪魔になる」と考えられている。建築家の
クリストファー・アレグザンダーは、「駐車場9%限界説」を唱えている。
…駐車スペースが路上カフェにてんかんされて、「カフェ文化」が復権している」

「(ポストフォーディズムでは)物事の均一化を促進するグローバル化に対抗し、
歴史や文化、環境の優位性をもとに空間的な差異を創造し、
違いをアピールするとが公共政策の役割になる。そこでのキーワードは「ブランディング」。
そして質の高い、差別化された「場の創造」である。
…市域外から人々や資本を引き付ける、当該都市市民に対して
「わがまち」に自負を抱かせる、そして可能性を自覚させることのできる魅力的な
「都市イメージ」を形成し、イメージを内外に売り込む」
「「場の創造」は、コミュニティレベルから都市、都市間までを視野に、
健康的で人々の創造性を育む都市公共空間をつくり出すことである」


「ジェーン・ジェイコブズが提示した、
都市が活力を維持したり、復活したりするために守るべき四原則…
①街路は狭くて短いこと
②ふるい建物を残し、利活用すること
③人口密度が高いこと
④多機能的な地区が寄り添っていること、

である。四原則に通底していることは、
多様な人々の出会いや繋がりを育む「場の創造」である」ということ。

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