しなやかな日本列島のつくりかた 藻谷浩介対話集 | 石川巧オフィシャルブログ「すべては三浦のために」Powered by Ameba

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一期一会を大切に、神奈川県議会議員石川たくみのブログです。
<私の目指す政治活動>
 ○自立的な生活経済圏     ○誇りの持てる教育
 ○一人でも多くの三浦ファンを ○より身近な市政に

『藻谷浩介対話集 しなやかな日本列島のつくりかた』を読了しました。

商店街、限界集落、観光、農業、医療、まちづくり…
「自立した地元経済」を育てる、現場の智慧が詰まっています。



「商店街」は起業家精神を取り戻せるか>vs.新雅史『商店街はなぜ滅びるのか』著者
「長らく続いてきた(家族以外の人間も取り込んだ近世商家的な)「イエ」を
ぶち壊して個人を解放した(親子だけの)「近代家族」も、実は過渡期のものだった。
商店街をはじめ、近代家族が労働者を再生産することを前提にした
戦後システムも長くは続かない」藻谷

「自分の命を超えて何か引き継ぐべきものというのが、
何もない気がするんです。それは多くの若い人たちも同じだと思うんですが、
自分にとって一番重要なものは命しかなくて、
死んだ後もこの世に残したいものがあるかというと、哀しいことに見当たらない。
近代家族が成り立っていた両親の世代ぐらいまでは、
毎年必ず墓参りに行く習慣がありました。
それはおそらく先祖のためということよりも、
「墓というのは自分の命を超えて残るものだ」という、
ある種の信頼だったように思います。
…墓を残すことを知らない世代として、墓に替わるものって何がある?
と自問自答したときに、それが商店街なんじゃないか、と思ったんです」新

「近代家族崩壊後の問題点として重要なのは、
今後、資産のマネジメントをどういう形で行っていくかということでしょう。
個人を超えた存在として、企業というのは一つの解ではありますが、
あくまで利潤を追求するための組織です。
これからは何か別の、地域の資産管理をしていくための
仕組みを考えないといけないでしょうね」新

「道路の修繕や整備、除雪までをすべて公のお金で賄うというシステムを、
今の規模のまま、人口の減る時代にずっと維持できるとはとても思えません。
片やそれによって区分けられた土地は、近代家族の解体に伴って相続人も減り、
スカスカに空いていくばかりなのですから。
夕張市の高台住宅地に行くと、行政がお金をかけて維持している道路が
空き地を囲んでいて、たまに家があるという景色が広がっている。
夕張限定の問題ではなく、これがこれからの日本の姿なんです。
道路は共有地、土地は個人所有のままで、私有地部分に人がいなくなる」新

「(被災地石巻の商店街では)ボランティアだけでなく、
津波のあとも商店街に住み続ける人たち、
商売の再開を願っている人たちがたくさんいたんです。
商店街は単なる商業集積地区ではなくて、人々の生活への意思が
あふれている場所だということを身をもって感じました。
被災地に行くことで、新しい希望の形として商店街を提示できる、
そう確信して拙著の方向性が定まったのです」新

「今私たちに突きつけられているのは、
「まちづくりとか言ってるけど、そもそも町ってもう要らなくない?」
という根源的な問いではないでしょうか。
…近代家族が崩壊しても人間にはやはり何か拠って立つものが必要で、
だけど今時、多くの人は、家族や会社が続いていくことを期待できない。
国では余りに大きすぎて実感が乏しい。そこで地域だと思うんです。
…比較的オープンな地域主義。顔の見える範囲で何かを築いていこうとする人は、
どんどん増えるんじゃないでしょうか」藻谷

「町、あるいは都市とは何か」。その定義は数多くありますが、
僕が最近読んで「なるほど」と思ったのは、
「アントレプレナーシップが発揮できる空間である」という定義です」新



「限界集落」と効率化の罠>vs.山下祐介『限界集落の真実』著者
「(農村部から)あふれた人口は都市に向かい、そこで消費される」。
労働の中で消費されてしまって、子孫を残さずに消える。
少子化という現象は、人が都市で消費された結果だと。

「限界集落も、まさに、「この場所は効率が悪いからいらない」
と切り捨てられる対象になりうるわけですよね。…
効率とか何が無駄かっていう話を突き詰めていくと、結局、
「生きているのが無駄」になりますよね」藻谷

「「効率」という尺度だけで議論してしまうと、暮らしの多様性が見失われてしまう。
そうではなく、「効率が悪いのならもっと早く消えていてもおかしくないはずなのに、
なぜ残っているのか」を考えることが、
本当の意味での効率性を議論することになると思うんです」山下

「今では日本全体が限界集落のようなものですがね。
このまま行けば75年で14歳以下が消え、100年で64歳以下が消えるペースで、
人口が減っているのですから。
限界集落を他人事だと思う人は、自分自身が
「限界国家」に住んでいることに気付いていない」藻谷



「観光地」は脱•B級志向で強くなる>vs.山田桂一郎/地域経営プランナー
「2020年の東京五輪開催が決まりました。
効果が東京だけでなく全国に波及するか?、
スポーツや土建関係に限らずいろいろな産業が潤うか?、
それは今後7年間に日本の「観光」分野が
どれだけ高度化できるかにかかっています」

「どこの地域でも、とにかく「入込数(宿泊•日帰りを区別しない単純な来訪者数)」
を重要視するのが、とても不思議でした。
ヨーロッパの観光統計はすべて延べ宿泊数が基本なのですが、
私がツェルマットを紹介するときに「年間200万泊です」と言うと、
「で、トータルで何人来てるの?」と必ず聞かれる。
でも、その数を数えることにどれほどの意味があるのでしょう?」

「日本の観光地がダメになった原因の一つは、
まさにらこのような「一見さん」を効率よく回すことだけを考え、
リピーターを増やす努力を長く怠ってきたことにあると思います。
観光地として一番重要なのは、実は顧客満足度とリピート率」

「ツェルマットのように住民が幸せそうに生活している場所は、
訪れた人が「自分も住んでみたい」と感じ、何度も足を運びたくなる。
いわば、テーマパークのような一時的な「非日常」性ではなく、
地域に根付いたライフスタイルの「異日常」性が、最大の売りポイントです。
そういう魅力ある地域にするためには、幅広い層の住民が
主体的に参加しながら、まず地元が抱える問題点を明らかにし、
長期的な視野に立った地域全体のマネジメントを話し合う場が必要です。

…ツェルマットでは、
「将来世代も含めて、自分たちのコミュニティが幸せに生きていくために動く」
という目的意識が浸透しています」山田
「「ブルガーゲマインデ」はスイスのほぼすべての市町村にありますが、
行政とは違う独自の住民組織で、強いて訳せば「住民地域経営共同体」、
「民間事業者の共同体」くらいのニュアンスでしょうか。
要するに住民自らが町としての「公益」を追求する自治経営組織です。
「それは官ですか、民ですか」とよく言われるんですが、
そのどちらでもなく、"パブリック(公)"なのです。

…(スイスは)直接民主制の国なので、リーダーがどうというより、
国民全員が何を選択してどう合意形成をしていくかという議論が多い。
(まさにボトムアップですね)
…地域振興をやろうとする際に持ち上がる問題って、
大抵、住民のエゴや利害が絡んでいます。
個人の損得や好き嫌いを越え、町の将来のために合意形成していくとなると、
住民一人ひとりの教養度が高くなければできない。
スイスでブルガーゲマインデがうまく機能しているのには、
こういう背景があると思います」山田

「スイスでは、まず地元のフラッグシップになり得る地域に合った最上級ホテル、
例えば五つ星ホテルをつくり、次に他のカテゴリーのホテル、四つ星、三つ星…
と広げていくことで、ラグジュアリー層からカジュアル層までを
取り込むことに成功してきました。
最初に富裕層を相手にすることでサービスの質も上がり、
観光リゾート地としての全体的なレベルも向上するのです。

…地元産の良いものを、地元の旅館やホテル、飲食店が直接、
一円でも高く買うことが重要で、それをさらに手間暇かけて調理し、
より付加価値を高くしてうるということを考えるべきです。
…地元にわざわざ来て、食べてもらう、買ってもらう。
地域に来て消費するだけの価値があるもとをちゃんと産み育てましょう、
という意味での「地消地産」です。
…一方、お客様の側から見て求められるのは三つの「だけ」、
「今だけ」「ここだけ」「あなただけ」と提示されたものです。
これが揃っていないと、その地までわざわざ赴く必然性がなくなってしまう」山田



「農業」再生の鍵は技能にあり>vs.神門善久『日本農業への正しい絶望法』著者
「農業というのは、一言でいってしまえば
「今降り注いでいる太陽エネルギーを、いかに効率的に生物エネルギーに変えるか」
という技能なのです。
…その技能を退化させ、枯渇性資源の化石燃料に頼ったり、
「能書き」や加工などで粉飾したりしても、動植物は健康に育たず、
環境破壊的で食生活の改善にも資しません。
つまり、農業の本来の良さを忘れたハリボテです。
…能書きに騙される消費者が多すぎるので、
農家は耕作技能を磨く意欲を失うのです。
耕作技能劣化の元凶をたどると、
農地の乱れという農家から見て川上の問題に加え、
消費者の愚鈍化という川下の問題にも行きつきます」神門



「医療」は激増する高齢者に対応できるか>vs.村上智彦『医療にたかるな』著者
「(夕張市の医療再生の経験から)医師だけでなく、
看護師や介護職、保健師も協力し、地元住民の参加を促しながら、
皆で地域住民の健康を支えあう仕組み、その名も「ささえる医療」を推進しています。

…この急激な高齢化に対応するのに、医療による「キュア(治療)」では、
いくらお金がらあっても足りない。
だから、これまで福祉が提供してきた「ケア(療養)」のネットワークを広げること
こそが、重要だと思っています。
…今、夕張で看護師や介護士をやっている人たちが、
自分たちで訪問介護ステーションを立ち上げたんですが、
それこそ本当の自立だと僕は思っています。
先ほど医師が10人来るようになったと言いましたが、
それは地元の住民たちが、そこに医者がいたいと思うような環境を
作れるようになったからでもある。
知恵や技術は外から授けられますが、それを生かすためには
中の住民が動くしかないんです。

…今、うちの診療所に勤めてる若い医師も、去年、東大病院を辞めて、
あえて夕張に来ている。捨てたもんじゃないなと思います。
だから、そういう人たちが働いていけるシステムをちゃんとつくっていき、
また「医療だけにたからない」という住民の意識改革を
徐々に進めていくことで、まだまだやっていけると思っています」村上



「ユーカリが丘」の奇跡>vs.嶋田哲夫/山万株式会社代表取締役
「あのとき(ユーカリが丘線軌道)は、運輸省の役人からも
「不動産会社が電車を走らせたいとは何事だ!」と怒られました」嶋田

「山万はもともとは繊維会社だったと聞いて、大変驚きました。
なぜ繊維から不動産開発に?」藻谷
「いきなり取引先の縫製業者が倒産してしまって、
担保に取っていた横須賀の2万8000坪の山が転がり込んできたんです。
それを何とかお金に換えないと、こっちまで潰れてしまうという状況になりまして…。
やっぱり横須賀で宅地分譲(「湘南ハイランド」の宅地分譲に成功する)をやってみて、
「作りました」「売りました」だけでは理想の街づくりはできないんじゃないかと。
環境にやさしい街づくりをやりたいと考えていたんです」嶋田

「ユーカリが丘の基本構想は、すべて嶋田社長がご自身で考えられたんでしょう。
まずドーナツ型に鉄軌道を敷いて、その外側を順番に開発して行こうなんて、
普通は思いつかないですよ。
そもそも新交通システム自体、民間では日本初だったんですから。
しかも、ドーナツの穴にあたる中心部分を農地•緑地として
丸ごと保全したというのは、度を越したご慧眼です。
…ユーカリが丘の中心には田んぼと緑地がきれいな里山として残され、
まさに理想的なビオトープになっている」藻谷

「都市機能がらないと、若い人たちが戻ってこなくなって、
いつか絶対に寂れてしまうだろうと。
だから、最初の開発コンセプトも
「自然と都市機能が調和した21世紀の新環境都市」としました」嶋田

「今後、第二、第三のユーカリが丘を作ろうというお考えはないんですか?」藻谷
「ですから、うちにはとてもそんな余裕はないんです。
これから先、最も大事なことは、この街の勢いを衰えさせずに維持することです。
その時その時に合わせて手入れをしていかないと、
絶対に街は劣化してしまいますから。
この先の日本の状況を考えれば、今から10年のうちに
フロービジネスからストックビジネスへ、
どんどん切り替えなくてはいけないと思っています。
…結局、この街に磨きをかけることが、われわれが生き残る道なんです。
おそらく、これから周辺の街はどんどん荒れていかざるえないでしょう。
…日本はもうとっくにリロケーションサービス
(地区内での住み替えや、空き室•空き家の賃貸を支援するサービス)
をやらなきゃいけない時代になっています」嶋田