8月最初の木曜日になりました。

台風5号、6号と立て続けに発生し、特に台風6号は奄美・沖縄地方などに大きな被害をもたらしています。

台風6号が接近した那覇空港では、テレビ局のインタビューに対して、

「2日から仕事なのにどうしよう」
「祖父母に預けたペットが心配だ」

などと、堂々と顔を出して答えていました。

たとえば、夏の沖縄や冬の北海道では、台風や大雪の影響で多くの飛行機がキャンセルになって、大きな混乱が起こるかもしれないことは想像の範囲内のはずです。

「帰宅予定日に帰れないかもしれない。余裕を持って計画を立てよう」

という「大人の判断」があってしかるべきだと思うのですが、みなさんはどうお感じでしょうか。

ちょうど、前回のメルマガに対して次のようなお返事をいただいたところでした。

『「子どもにみせたくない大人の姿が街に溢れている」や「親の緩みは、子の緩みという負のスパイラルが続いていく」とありましたが、その通りだと思います。子どもと横断歩道を渡ろうとしていても、知らん顔で通り過ぎていく車がたくさんいます。中には、子どもを乗せている車もあります。あんな姿を子どもに見せておいて、一方で「勉強しなさい」なんて子どもに注意するのでしょうか。人の親として恥ずかしくないのでしょうか。』

私も、たびたび同じような経験をしています。

横断歩道を渡ろうとしていても止まろうとしない車、ほんとうに多いですね。

電車の中で、人を押しのけるようにして座席に突進するおじさんもよくみかけます。

あのおじさんも、会社内では、若手の社員にしたり顔で説教しているのでしょうか。

「残念な大人たち」、ちょっと多すぎます。

さて、前回のメルマガでお伝えしましたが、灘中の平成22年の問題について、少し考えてみたいと思います。

たとえば、今回紹介した問題の中には、次のようなことわざや慣用句、四字熟語が出てきました。

九牛の一毛、氷山の一角、苦肉の策、面の皮が厚い、竹馬の友、勝てば官軍、一糸乱れぬ行進、合点がゆく、穴があったら入りたい、同工異曲、十年一昔、金科玉条、悪事千里を走る、自己満足、立志伝中の人物、不言実行

辞書的な説明は、親にとっても子どもにとってもなかなか難しいものですが、「なんとなく意味は分かって、正しく使うことができる」というレベルは目指したいものです。

例文を作ってみて、「なんか変だぞ?」と親子で笑うのもよし、「こうしたらどう?」と添削しあうのもよしです。

夏休みの楽しい一日になりそうですよね。

次は、<大問1の問6>の反対語の問題について一言。

おそらく子どもたちにとって、「回答⇔質問」という反対語の関係は理解しやすいでしょうが、それに比べて「回答⇔要求」は、なかなか想像しづらい関係かもしれません。

たとえば、労働組合側が「要求」を出して、会社側がそれに「回答」するような状況が考えられますが、「労使交渉」などは子どもたちには馴染みのないものでしょう。

灘中は、この「労使交渉」のような四字熟語も好きな問題の部類のようで、実際に、「牛歩戦術」「確定申告」「帰国子女」などが出されています。

ということは、思わぬところで「勉強の材料」がみつかるということでもあります。

ちょっと変わった四字熟語探しも、親子で楽しめそうですね。

また、前回も書きましたが、<大問3>の「ない」の識別のような文法問題も頻出です。

そもそも、中学受験で習う「文法事項」は、中学3年間で習う「言葉のきまり」とほぼ同等の内容です。

お父さん、お母さんも、中学生のころに習った「文法」を復習してみてもいいですね。

最後に<大問6>の熟語のしりとりですが、

①「用心」、②「学術」、④「降参」、⑤「談判」

などは、6年生にとって、特に難しい漢字ではないと思いますが、語彙としては難しいかもしれません。

この種の「漢字パズル」は、難しい漢字を使っている問題は少なく、どちらかというと盲点になりそうな、比較的簡単な漢字を使っています。

進学塾の低学年の公開テストで、「かこう⇔火口」という書き取り問題が出されるのも同じ狙いですよね。

次に、「プロの書評家による感想文指南」の記事(『東洋経済オンライン』)について考えてみます。

まず、<第1回>の

『「夜のピクニック」読書感想文をプロが書いた結果
書評家・三宅香帆さんが課題図書の定番に挑戦』
https://toyokeizai.net/articles/-/685094

を取り上げてみます。

『■読書感想文は「嫌い」がある人こそ有利
①自分の嫌いなモノについて書いた本を選ぶ
②その本を読んで「嫌いだったモノが、好きになった」内容の感想文を書く
 これだけで、「褒められる読書感想文」が完成してしまうのです。
 というのも、読書感想文は「この本が、面白かったです」だけで終わると、なかなか褒められません。なぜなら読書感想文というジャンルは、先生が「本を読むことで、この生徒はいい人間に変わっている」ことを確認したいために作られた課題だからです。
 そう、本当に重要なのは、本を読んだ感想ではありません。この本を読んで、学生さん自身がどう良い人間に変わったのか――その「読書体験」こそが求められているものなのです。だからこそ、褒められる読書感想文には、学生自身の体験がかならず入っているはず。』

「自分の嫌いなモノについて書いてある本を選ぶ」、目から鱗のアドバイスです。

「自分の嫌いなモノをどう料理しようか」、そんな挑戦にかえってワクワクできるような子どもなら、まさにピッタリの「本の選び方」「読書感想文の書き方」です。

私がこのブログで公開している『感想文マニュアル 中級編』に、課題図書が決まっている場合の対処方法として、

『第3原則 本のテーマ、つまり「作者が一番伝えたいことは何か」を読み取って、自分向けに加工する。
(例1)科学者としては、物怖じせずに新しい研究に飛び込んでいくことが大切だ。
(例2)少年は、愛犬の死から貴重な教訓を学んで大きく成長した。
などと、課題図書のテーマを読み取った上で、そのテーマに近い自分自身の経験を振り返ります。
 もちろん、(例1)や(例2)に対して、
「私は小心者で、今まで一度も新しい環境に飛び込んだことがありません」
「ぼくは、一度もペットを飼ったことがありませんし、まだ身近な人や生き物の死に接したこともありません」
と、本のテーマとは正反対の経験を取り上げてもいいですね。本の中の出来事を、少しでも自分の身近な世界へと加工していけたら大丈夫です。』

と書きましたが、本を自分で選べるときは、「自分の嫌いなモノ」も良い選択になるわけですね。

嫌いな分野の本なら、読み始めは苦労するかもしれませんが、「子どもの視野を広げる」ことにも役立つのではないでしょうか。

『■フォーマット通りに書くのは、悪いことではない
 そもそも、作文が苦手な子に、「自由に思ったことを書きましょう」「感じたことをそのまま文章にしましょう」と言うのは、なかなかハードルが高いものです。
 であれば、いったんフォーマット通りに読書感想文を書いてみるのが一番良い、と私は思っています。作文には真似して良いフォーマットがあるものだ、と知ることで、むしろ気軽に「書くこと」に取り掛かれる子もたくさんいるのではないでしょうか??』

私も大賛成です。

書くことが苦手な子、あるいは、書き方がまだ身についていない子たちに、

「自由に書いていいんだよ」
「好きなことを書いていいんだよ」

などは、指導にもアドバイスにもなっていません。

いわれた子どもは、困って立ち止まってしまうだけでしょう。

最初は、「フォーマットに従って書く」練習が必要ですね。

次に、<第2回>の、

『辻村深月「凍りのくじら」感想文をプロが書くと…
学生必見!書評家・三宅香帆さんが書き方を解説
https://toyokeizai.net/articles/-/688654

を取り上げます。

『■課題図書が設定されている読書感想文の書き方
 読書感想文を書くとき、実際に原稿用紙へ向かう前から、準備は始まっています。そう、課題図書を読むときに、ある準備をする必要があるのです。
 自分が好きな場面や台詞やキャラクター、あるいは逆に気になった、違和感があった場面や台詞やキャラクターを具体的にメモするのです。
 せっかく読書感想文を書くならば、あなたにしか書けない感想を書いたほうがいい。というか、そのほうが、原稿用紙も埋まります。だとすれば、とにかく「具体的に」自分にとって印象に残った箇所や、好きな場面について、語ってみてください。ひとつだけの台詞や場面だと、文字数が足りない場合があるので、できるだけ細かく、たくさん、挙げるのがコツです。』

『■「なぜそう感じたのか」は、自分の体験を交えながら!
 読書感想文においては、メモで挙げた箇所に関して、自分はどう感じたのか? なぜ自分はそう感じたのか?を書いていきましょう。ポイントは、「なぜそう感じたのか」は、自分の体験を交えると、書きやすい!?ということです。印象に残った箇所について、その場面が印象に残った理由を、自分の体験と照らし合わせて考察しています。
 ここでは印象に残った場面について書いていますが、キャラクターや台詞でも構いません。とにかく「自分の体験と照らし合わせること」が重要です。自分の体験を細かく書けば、原稿用紙も埋まるので、ぜひ細かく書いてみてくださいね。』

このあたりの書き方も、私の『感想文マニュアル』と似たアプローチです。

「印象に残ったところ+感想+自分の体験」のセットをいくつか作っていって、それらのセットの中で、「自分の体験」の記述量が一番大きくなりそうなところを感想文の中心に据えます。

「自分の体験」が増えれば増えるほど、「自分だけに書ける感想文」に近づいていきます。

『■まとめは「未来の自分がどうしていきたいか」
 こんなふうに、いくつか印象に残った場面と、その感想の分析が書けたら、最後にまとめを書いて、終わりです。読書体験を経て、「自分はどうなりたいか」をまとめにするのです。
 前回の記事でも書きましたが、とにかく読書感想文で求められていること。それは、この本を読んで、学生さん自身がどう良い人間に変わったのか――その「読書体験」です。
 だからこそ読書感想文においては、「未来の自分がどうしていきたいか」を書くと、それらしいまとめになります。
①具体的に「好きな点」「良かった点」をメモ
②なぜそこが良かったのか??を書く(自分の体験も交えつつ)
③本を読んだ後「自分がこれからどうなっていきたいか」をまとめにする
 ぜひこの3点の流れを踏まえて、読書感想文を書いてみてください!』

まとめの部分は、具体的かつ大胆に書きたいものですね。

間違っても、

「これからもがんばろうと思います」
「これからもみんなと仲良くしようと思います」

程度の、陳腐なものにならないように気をつけてください。

最後にもう一つ。

タイトルは、感想文の中で一番うまく書けたところから「短くインパクトのあるフレーズ」を選んでくださいね。

『○○を読んで』では、あまりにも寂しいですね。