『初級編』では、どこから手をつけていいのかわからないという人たちに向けて、

「感想文の基本技を身につけ、段落分けをして体裁を整える」

という、感想文のスタートラインについてまとめました。

「お話の中で印象(記憶)に残ったところを拾い出し、 そこを中心にして、自分なりの感想や似たような個人的な体験を付け加えていく」

という手法で、初めて感想文を書く1年生の子どもたち(+お母さん、お父さん)の足がすくんでしまわないことが主眼でした。

 「元になる本からスタートして、何とか自分の感想・経験にたどり着く」という図式でした。

 しかしながら、上記のようなスタンスで書いているとき、「自分なりの感想・経験」の部分のボリュームが減ると、

「なんか、お話のあらすじみたいだなあ」

となってしまう危険性があります。

 そこでこの『中級編』では、さらに足を一歩前に進めて、何とか「あらすじ感」を脱却する手順を考えてみたいと思います。

 ということで、『中級編』の大目標は、

「いかにして、オリジナリティあふれる感想文に近づけていくか」

で、そのアドバイスを<5つの原則>にまとめました。

 そのためには、 まず「本のテーマ=作者の主張」を読み取り、それを

「自分だけの感想・経験」

の方にグイッと引き寄せることが必要です。

「私もおばあちゃんちで、同じようなことがあったなあ。あのときはびっくりしたわ」
「ぼくも、優勝できてめっちゃ嬉しかった! 必死に練習したもんな~」
「私も犬を飼っていて、楽しいことがいっぱいあるわ。うんちの世話だってできるようになったしね」
「ぼくもキャンプで大失敗をして、みんなに怒られて悲しくなったことがあるよ」
「○○くんがトンチンカンな答えをいったときに、みんなと一緒になって私も大笑いしちゃった。ごめんね」

などと、

「本の世界」から「自分の世界」へ

という流れを作って、できることなら、

「私の経験が主で、本の中の出来事が従」

と、主従関係を逆転するのです。

本の中の登場人物たちを自分の世界に巻き込んでいくくらいの意気込みを持ちたいものです。

「もしあのとき、主人公の△△が私と一緒にいたら、どうしたでしょうか。何をいったでしょうか」

といった流れですね。


では、『中級編』の<5つの原則>を順に示します。

<第1原則> できることなら、「自分だけの感想・経験」に近づけやすい本を探す。

感想文を書くとき、自由に本を選べる場合も多いので、まず、自分にとって「書きやすい本」を探します。

本屋さんや図書館に出かけていって、「自分の趣味」や「自分の経験」に近いテーマの本を見つけるわけですね。

普段から、親子で「読書ノート」を作って、「感想文に使えそうだ」という本をストックしておくこともおススメします。

とはいえ、なかなか適当な本が見つからなかったり、「これだ!」と思って買ってきたのに読了してもピンとこなかったり、ということもあるでしょう。

また、「指定図書」として読む本が決まっている場合もあります。

私立中学の合格者に与えられる課題でも、読む本が決まっていることが多く、灘中学などもそうですね。

 そんなときは、

<第2原則> 自分から本の内容に近づいていって、何とかテーマに近い「自分の得意分野や守備範囲」を探し出す。

ですね。

普段から、「読書ノート」とは別に、「自分の体験ノート」を作っておくのもいいですね。

お笑い芸人さんたちの「ネタ帳」のようなもので、「この本のテーマなら、あのネタが使えるぞ」ということです。

<第1原則><第2原則>は、まちがいなくおススメの武器ですが、普段から用意しておかなければならない要素もあります。

となると、緊急時にすぐに役立つ救命法ではありませんね。

では、「とにかく目の前の感想文をなんとかしなくちゃ!」というときはどうしたらいいのでしょうか。

ということで、基本的な手順は『初級編』を参照していただくとして、「即効薬」になり得る原則に入ります。

<第3原則> 本のテーマ、つまり「作者が一番伝えたいことは何か」を読み取って、自分向けに加工する。

例1)科学者としては、物怖じせずに新しい研究に飛び込んでいくことが大切だ。
例2)少年は、愛犬の死から貴重な教訓を学んで大きく成長した。

などと、テーマ(何やら教訓めいた面白みのないものが多いですが)を読み取ります。

その上で、そのテーマに近い自分自身の経験を振り返ります。

もちろん、例1)や例2)に対して、

「私は小心者で、今まで一度も新しい環境に飛び込んだことがありません」
「ぼくは、一度もペットを飼ったことがありませんし、まだ身近な人や生き物の死に接したこともありません」

と、本のテーマとは正反対の経験を取り上げてもいいですね。

本の中の出来事を、少しでも自分の身近な世界へと加工していけたら大丈夫です。

もちろん、どうしても本のテーマに直結するような自分の経験が思い浮かばない場合もあるでしょうが、そんなときは、次の原則です。

<第4原則> 「本のテーマ」とまではいかなくとも、「本の中の一場面」でもなんとかする!

自分の経験した出来事と、少しでも接点が見つかれば「何とかなります!」、というか、「何とかする!」しかありませんよね。

「気になる場面」「自分の経験とリンクする場面」を抽出することからスタートするのが有効です。

例3)友だちと「秘密基地を作る」のは楽しいよね。
例4)いろいろな「実験に没頭する」生活って、どんなんだろう。
例5)「一人で留守番する」のは、やっぱりいやだなあ。

などと、本の中の一場面、「秘密基地を作る」「実験に没頭する」「一人で留守番する」を切り取って、自分の世界に引きずり込んでしまうのです。

ただし、このような場面を選ぶ基準は、選んだ場面が「その本の中でどれだけ重要か」ということではありません。

あくまでも、選んだ場面に関して

「自分にしか書けない感想や経験を思いつくか」
「自分の経験・感想を盛り込んでオリジナリティを発揮できるか」
「自分だけ野を世界のボリュームをどれだけ膨らますことができるか」

です。

<第5原則> 本のテーマや気になる場面に関連する「自分の経験・感想」をまとめる際には、詳細かつ大胆に記述する。

創作ではないので、子どもたちに「ウソを書いてもいいよ」とまではなかなか指導しにくいのですが、それでも、

例6)「腰を抜かす」ほど怖い思いをしました。お化けを見たらきっとあんな気持ちになるんだろうなあと、「妙に納得する」ほどの怖さでした。
例7)ぼくの人生の中で、一番うれしい出来事でした。次の日学校で、友達みんなに「鼻高々で自慢して」しまいましたが、ちょっと「イヤミ」だったと反省もしています。
例8)「清水の舞台から飛び降りる」なんて言い方があるそうですが、本当にそんな気持ちで思い切ってやってみました。あのドキドキは、「病み付きになりそう」です。

などと、少々大袈裟(話を盛ってる?)になってもいいので、魅力的な表現を探してみてください。

あとは、『初級編』の<手順2>や<どうしても書けないときのアドバイス>を参考に原稿用紙に向かってください。

それでは、オリジナリティあふれる感想文に向かって、「レッツゴー!」です。

注:多少加筆・訂正しましたが、基本的に以前のバージョンと同じ内容です。
  ご質問などがありましたら、『にしきた学習教室』のホームページからお問い合わせください。