この『初級編』は、感想文を書く際の大まかな流れをまとめたものです。ただし、これから紹介する書き方は、あくまでも「感想文を初めて書く人」「なかなか筆が進まない人」対象の指南書で、最低限「なんとか感想文の形に仕上げる」ことが目標です。
 このマニュアルからスタートして、オリジナリティを加味しながら、少しずつ自分の力で羽ばたいていってほしいと願って書いています。
 すでにある程度書ける人には、かなりまだるっこい手順だと思います。よろしければ、『中級編』にお進みください。


<手順1:感想文の下拵え>

① 親子で同じ本を、全体の流れが頭に入るまでしっかり読み込む。

② 流れが頭に入ったら、本を閉じて、親子で内容について話し合う。

注:以下、③~⑤は、本を見ないで作業することをおススメします。本を読みながら作業すると、本の字面や挿絵に引っ張られて「あれもこれも」となってしまい、子どもの頭の中に残っている「印象や感想」が生きません。少々内容が間違っていたり記憶があやふやだったりしても、原稿用紙に書く際に訂正できますから、この段階では大胆に頭の中から引っ張り出しましょう。

③ 登場人物・時間・場所などの変化に注意して、お話をいくつかの場面に分ける。あまり神経質にならず、大きな流れをつかむ。この段階からメモを残す。

④ ③でメモしたいろいろな場面の中で、印象に残っていることを書き出す。断片だけでも、セリフだけでも、箇条書きでも、形式は自由。特に印象に残っていることがない場面なら、無理をして書く必要はない。次の場面に進む。あくまでも「子どもの記憶や印象の整理」が狙い。

注:③、④の作業がまったく進まない場合は、もう一度①、②に戻ります。子どもはすぐに、「覚えてない」「忘れた」といいますが、「最初はどんな場面だった? 次にどこに行った? 何を食べてた? そのあと誰が来た?」というように、イエス・ノーで答えられない問いかけで、上手に子どもの記憶を引っ張り出してください。

⑤ ④で書き出した印象に残ったことに対して、そこを読んでどう思ったのかという感想を引き出してメモを取る。

注:上記③~⑤の際に、親子でゆっくり話して子どもの記憶や印象を引き出すことが大切です。親の方から「○○は面白かった? △△のことは覚えてる? □□はかわいそうだよね?」などと限定的に誘導するのはNGです。

⑥ ③~⑤で、時系列に沿って「印象に残ったこと+子どもの感想」のセットがいくつかでき上がっているはず。それらのセットの中で、「そういえば自分にも同じようなことがあった」と自分の経験を付け加えられるものを大切に。「印象に残ったこと+感想+自分の経験」と、セットのボリュームを膨らませていく。(これ以降、「印象に残ったこと+感想+自分の経験」を「重要セット」と呼ぶ)


<手順2:いよいよ原稿用紙へ>

① この段階は、本を開いて、あやふやな部分を訂正・加筆しながら進める。まず、感想文の冒頭で、「自分の感想文の中の主人公」を紹介する。もちろん「お話本来の主人公」と一致する必要はない。本を読んで、一番自分の印象に残ったキャラクターを意識する。原稿用紙五行以上が目安。

(書き出しの例)
 クマの子は、森の公園が大好きな男の子です。晴れの日も曇りの日も、暑い日も寒い日も、雨の日も雪の日も、いつも森の公園で遊んでいました。森の動物たちも、人間の子どもたちも、仲良く遊んでいました。公園で遊んでいるクマの子は、とっても楽しそうでした。

② 続いて、1つ目の「重要セット」の中の印象に残った場面を、本を読んでいない人にもわかるように丁寧に描写する。もちろん本文の丸写しはダメだが、ここで「本文を上手に利用してまとめる」ことができればボリュームを稼げる。なお、<手順2>の①と②が合体していても可。

(第二段落の例)
 ある日、いつものようにクマの子が森の公園で遊んでいると、今まで一緒に仲良く遊んでいた人間の子どもたちが、誰も遊びにやって来ませんでした。
(おかしいなあ。どうしたんだろう)
 やっと遊びに来た男の子も、クマの子の顔を見るとそそくさと帰っていきました。
(ぼくのこと、嫌いになっちゃったのかなあ)
 クマの子は、悲しくて寂しくてたまりませんでした。

③ ②の描写である程度のボリュームを稼いだら、段落をかえて、②の場面・出来事に対する感想を書く。原稿用紙三行以上が目標。

(第三段落の例)
 一人ぼっちのクマの子を見ていると、ぼくも悲しくなりました。
(森の動物たちはどうしたのかなあ。せめて仲良しのウサギさんやキツネさんが来てくれればいいのに)
 クマの子のお友だちを呼びに行ってあげたくなりました。

④ 続いて、同じような自分の経験を、段落をかえて書く。原稿用紙五行以上が目安だが、ここでさらに段落を二つ、三つに分けられるほどボリュームを稼げるなら、「重要セット」が2セットもあれば、原稿用紙2枚程度は十分突破できる。

(第四段落の例)
 ぼくも、みんなと公園で遊んでいるときに、いつの間にか一人ぼっちになったことがあります。みんなのお母さんが迎えにきたのに、ぼくのお母さんだけちっとも迎えにこなかったのです。
(おかあさん、どうしちゃったのかなあ)
 一人でポツンと公園で待っているのは、悲しくて寂しくてたまりませんでした。にぎやかな公園がだんだん静かになっていくと、怖くなってきました。

⑤ 以上のような「重要セット」を時系列に沿って2セット目、3セット目と順に書き進めていく。どうしてもボリューム感が出ないセットは、思い切って割愛して次のセットに進む。

⑥ 最後に、全体の感想を書く。原稿用紙五行以上が目安。

(最後の段落の例)
(こんなクマの子がいる公園があったらいいなあ)
 ぼくも、毎日遊びに行きたくなりました。ケンカをすることがあるかもしれませんが、人間も動物も一緒に遊べる公園なら、たくさんの友だができて、きっと素敵な公園だと思います。
 夏休みになったら、こんな公園をさがしに行きます!

⑦ 最後の段落まで書き終えたら、一番印象に残ったこと、一番詳しく書けたことを中心にタイトルをつける。『○○を読んで』などという陳腐なタイトルはつけない。短めでインパクトのあるタイトルを。

(タイトル例)
『クマの子、負けないで!』


<どうしても書けないときのアドバイス>

① どうしても描写のボリュームが出ない場合は、まず一文目を親子で考えて書き、一文目の中の語句を取り入れて二文目へ、二文目の中の語句を取り入れて三文目へと描写を広げてください。

(描写を広げる例)
クマの子は森の中の「公園」が大好きです。
  ↓
「公園」はとても気持ちいい場所で、「みんなが集まって」くるからです。
  ↓
「みんなが集まって」遊んでいる毎日は、とても楽しいものでした。

② 「印象に残ったこと+感想」のセットを書いていると、短めの段落ばかりが並んでしまって「あらすじみたいだ」という印象を受けるかもしれません。しかしながら、段落分けがきちんとできているだけでも見栄えがします。感想文の最初の一歩としては、まずまずの出来ではないでしょうか。
 もちろん、「自分の感想」「自分の経験」をたっぷり付け加えることができるようになれば問題はなくなります

③ 最終的には、「重要セット」数は1つか2つ(できれば1つだけ)で書き上げられるようになりたいものですね。ポイントは、やはり、「感想+自分の経験」の部分のボリュームがどれだけ膨らんでいくかです。

④ 会話文「~」や独白文(~)を上手に取り入れると、改行が増えてボリュームを稼げますし、また、字がぎっしり詰まった文章より読みやすくなります。
 ただし、

お母さんは、
「○○○○○○」
といいました。

とか、

ぼくは、
(○○○○○)
と思いました。

という書き方は冗長な印象を与えるので、できる限り避けたいと思います。会話文「~」や独白文(~)だけで、誰の会話・独白かわかるように工夫して書いてください。

(親子の会話例)
「ぼくのどこが悪かったのかなあ」
「あわてないで、ゆっくり考えてごらんなさい」

 この例では、「男の子→お母さん」だということがわかりますよね。


注:多少加筆・訂正しましたが、基本的に以前のバージョンと同じ内容です。
  ご質問などがありましたら、『にしきた学習教室』のホームページからお問い合わせください。