第69回青少年読書感想文全国コンクール「課題図書」~小学校低学年の部
https://www.dokusyokansoubun.jp/books.html

注)それぞれの本に関して、前半は、上記課題図書の紹介ページから引用させていただきました。
  後半の→以下が、私からの一言アドバイスです。


『それで、いい!』
 礒みゆき作 はたこうしろう絵 ポプラ社 1,430円

 きつねは絵をかくのが大好き。森の仲間は「へんな絵」とからかいます。でも、うさぎが「きつねの絵、大好き」といってくれて……。
【みどころ】
 絵をかくのが大好きなきつね。「へんな絵」などという友だちの言葉に、絵がかけなくなってしまいます。そんなとき、親友のうさぎに会い、絵が大好きな気持ちを思い出します。ありのままの自分のすてきさに気づくお話。
【選定理由】
 自己肯定感が小学校低学年なりに伝わってくる、自分のよさや自分の好きなものを考えられるような内容で、心がやさしく温かくなる。特に1年生に読んでほしいかわいい作品。

→今回の低学年対象の課題図書4冊の中では、一番感想文が書きやすいと思います。本の中の気になった場面を取り上げて、

「好きなものに、思いっきり夢中になる話」
「うまくいかなくて、苦しんだ話」
「親や友だちから励まされて、頑張れたた話」

など、自分だけの経験の世界に持ち込めば、オリジナルの感想文が書けると思います。
 最後に個人的な感想を一言。きつねとやまねこのイラストが怖い!!


『よるのあいだに…:みんなをささえる はたらく人たち』
 ポリー・フェイバー文 ハリエット・ホブデイ絵 中井はるの訳 BL出版 1,760円

 私たちがねている夜の間も、町ではたくさんの人が働いている。どんな人たちが、みんなのくらしを支えてくれているんだろう?
【みどころ】
 私たちが寝ている夜も、町には明かりがいっぱい。大きなビル、夜の道、線路の上……たくさんの人が働いている。ふだん直接目にすることの少ない、夜間に働く人たちの仕事を通して、社会や人々のつながりを描いた絵本。
【選定理由】
 人々が眠る夜間に働いている人々とその仕事が物語として描かれており、子どもの視野の広がりが得られる。翻訳絵本としての絵と文の表現が高く評価でき、紙の本のよさを再認識できる装丁。

→たくさんの人たちの労働のおかげで、私たちの生活が成り立っていることを親子でじっくり話してください。もちいろん、昼間働いている人たちに対しても、あらためて感謝したいものですね。
 感想文のポイントは、まず、この本の中の誰に焦点を当てるかだと思います。いろいろな職種に分散してしまうと、字数が足りなくなって感想文の中身が薄くなってしまいます。
 誰かに焦点を合わせた上で、自分の周りの人たちに対する感謝の気持ちへと視点を移して、個人的な思いをしっかり書き込むことをおススメします。
 あるいは、逆に、周りの人たちのために自分に何ができるかをたっぷり書くこともいいですね。社会の中の自分を見つめることですね。
 ただし、「私も頑張ります!」程度の「良い子の感想文」風のまとめにならないように気をつけてください。私だけが気づいた「労働の意味」「奉仕や感謝の意味」などに踏み込んでください。


『けんかのたね』
ラッセル・ホーバン作 小宮由訳 大野八生絵 岩波書店 1,430円

 ある日、家の中は大さわぎ。いぬはねこをおいまわし、4人きょうだいは大げんか。いったい何があったの? なかなおりできるの?!
【みどころ】
お父さんやお母さんがけんかのわけをきいても、子どもたちは口ぐちに、自分のせいじゃない!というばかり。じゃあ、だれのせい? 大きなもめごとも、はじまりは小さなできごと。日常のひとコマをゆかいに描きます。
【選定理由】
昔話のような、わかりやすく、オチのあるストーリーの中に、少し長めの文章をしっかり読ませるという文章の力を感じる作品。読んで楽しむのはもちろん、読書感想文を読みたくなる物語。

→うーん、「ひょんなことから大騒動にはなったけれど、みんな反省してやっぱりいい子でした」というお話です。
 小さなきっかけが大きな出来事にまで発展してしまうことは多いものですし、子どもが嘘や正直でない言い訳を口にして、さらに紛糾が拡大することも多いでしょう。
 大なり小なりよくあることといえばよくあることですから、

「自分の周りでも、同じような大騒動があった」
「自分も嘘の言い訳をして、かえって火に油を注いでしまった」

などの経験を丁寧に書けば、自分なりの感想文は完成すると思います。
 また、

「その後のねずみの一家の出来事」

について書くのもいいでしょう。
 最後に。
 個人的には、ねずみが自分の罪を認めてあっさり命を差し出そうとした心情や、プッスが、ねずみのその言い分を退けた理由が少々わかりにくいと思いました。
 また、そんなねずみの反応を退けた後、プッスがその足でボンゾーに謝ったところの心情の変化も少々わかりにくいと思いました。


『うまれてくるよ海のなか』
高久至 しゃしん かんちくたかこ ぶん アリス館 1,540円

 魚の卵、見たことある?親たちが、口やおなかの中でひっしに守り育て、生まれてきた子供たち。「がんばれ~!」と応援してね。
【みどころ】
魚の卵、見たことあるかな? 口の中で卵を守る、魚たち。お腹の中で子育てする、タツノオトシゴ。お父さんお母さんが、口やお腹の中でひっしに守り育て、生まれてきた海の子供たち。「がんばれ?!」と応援してね。
【選定理由】
海の中の生き物が、それぞれいろいろな場所で産卵し、それぞれの方法で育てていることがわかる。低学年向きの自然科学の本として、写真がよく、命の大切さや命を守る工夫が伝わってくる。

→この本で感想文を書くためには、まず、「海の生き物」に興味が持てるかどうかが大きなポイントになると思います。
 まず、興味を持った生き物の卵や子育てを紹介した後、自分が興味を持った理由やその子育ての気になる点を描写・分析して「感想文」に仕立て上げることになります。
 馴染みのない名前も多いと思いますので、感想文を書く前に、海遊館などの水族館にこの本を持っていってみるのもいいでしょう。
 「自分らしさ」を表現するためには、「卵をたくさん産む生き物・卵を少ししか産まない生き物」にテーマを広げるなど、かなり工夫が必要になるかもしれません。
 「感想文」というより、興味を持てた生き物の「自由研究」の参考にしたい本といったところでしょうか。

以上、簡単ではありますが、参考になれば幸いです。

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