3月最後の木曜日になりました。

日本中を熱狂の渦に巻き込んだWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)が終わり、多くの国民が「WBCロス」を感じているともいわれています。

私もWBCの熱戦は可能な限り視聴しましたが、一方、WBC後に行われたサッカー日本代表とウルグアイ、コロンビアとの親善試合はWBCほど盛り上がらなかった印象で、サッカーファンとしては残念でした。

もちろん、大谷選手やダルビッシュ選手らが牽引した「世界一の実績」は素晴らしいと思いますが、メディアの狂乱振りや感動の押し付けは少々食傷気味です。

実際に、次の『週刊女性PRIME』のような記事もみられました。

『「WBC早く負けて」発言で“野球嫌い芸人”ニューヨーク嶋佐が炎上、学校や職場で野球観てないと「非国民扱いされる」野球ハラスメントに悩む人続出の現状』
https://www.jprime.jp/articles/-/27230
(前略)
 WBC第1次ラウンドを4戦全勝、グループBを1位通過で突破した野球日本代表チーム「侍ジャパン」。TBSとテレビ朝日の系列局で中継された4試合は全て世帯視聴率40%超えで、他局も人気にあやかるようにニュース、情報番組やワイドショーで特集を組む力の入れようだ。
 まさに全国各地で“WBCフィーバー”が起きている、ように見えるのだが、一方でーー。
■野球ハラスメントにうんざり
《職場でWBC興味なくて見てないって言ってるのに昨日のWBC見た?って出勤すると聞かれるのなんなん》
《いい加減年寄りの野球ハラスメントにうんざり》
《サッカーの時も野球の時も興味が持てなくて今もリアルタイムで1度も観てないんだけど、仕事場とかで誰かにその話題を振られた時「観てなくて…」と答えると非国民扱いされるの意味わからん。応援したい人が応援するんじゃ駄目なの?》
 周囲の「WBCを観て、応援して当たり前」という風潮に、SNSでは悲鳴にも近いような「興味がない」ユーザーの声も上がっている。』

メディアには、伝えるべき情報が他にもたくさんあるはずです。

しかしながら、現状のメディアは、

「扱いやすい情報を目眩ましのように満艦飾で伝えるが、扱いづらい(扱いたくない)情報にはひたすら目を瞑る」

そんな腰抜け振りが続いています。

今は、たとえば次の記事(『JBpress』)が指摘するような議論が優先されるべきときではないでしょうか。

『放送法内部文書は何が問題か、官邸の“威光”背にした首相補佐官の個人的関心
黒塗りない行政文書ににじむ権力側の潜在的欲望、「政治的公平」再考の機会に
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/74279
 総務省の政治的公平文書に関心が集まっている(2023年3月7日、総務省HP「政治的公平に関する文書の公開について」)。
 立憲民主党の小西参議院議員が入手、公開したものだ。事後的に総務省も行政文書であることを認めた。
 当時総務大臣だった高市経済安全保障担当大臣は国会で小西氏の追及を受け、「捏造だ」「(真実なら議員辞職で)結構だ」といった発言をするなど乱戦模様だ。
 新聞見出しやネットでも「報道の自由への政権の介入」や「放送法解釈の変更」といった目を引く文言が踊る。だが、それらは刺激的であるだけに基本的な経緯に対する理解が追いついていない印象だ。
 本報道をリードした朝日新聞をはじめ新聞各紙では解説記事が出ているが、それらはネットではあまり展開されていないか、ペイウォールのなかだ。本稿では改めて経緯を解説し、読者の理解を促すとともに幾つかの解釈を示したい。
(中略)
■放送を「従属」させたい政権への向き合い方
 近年、霞が関お墨付きの行政文書といえば黒塗りが流行りだ。黒塗りもなしに、政策決定過程に関する文書が白日の下にさらされるケースは少ない。それだけに、政権周辺での政策調整を知ることができる点で貴重な資料だ。
 筆者は過去数年にわたって総務省の有識者会議等を構成している。だが、放送行政は大変複雑で正しく理解するのが難しい。多くの人にとってはなかなかその意義を体感しにくく、関係する通信放送業界と事業者、総務省、与党主導の政治的意向のみが反映されがちな印象だ。
 放送行政改革は過渡期にある。NHKのインターネット活用業務の本来業務化や、マスコミ集中排除原則の緩和など、放送・通信の融合に関連する大掛かりな改革だ。
 だが、それらに関しては野党も近年、放送行政に積極的に提案や批判をしてきたとはいえない。菅内閣における総務省接待スキャンダルのときのように、改革が止まることも懸念される。
 日本において放送行政がどうあるべきか。そして、官邸をはじめ政治の側に、広く国民にメッセージを伝える伝統的手段である放送を従属させたいという潜在的な欲望があるというとき、どのように放送(行政)の自立と自律を確保するべきか。
 本件を奇貨として、そういった議論が広く社会のなかで行われるべきだ。』

メディアに携わるみなさん、メディア人としての矜持はどこにしまい込んだのでしょうか。

また、最近話題の「ChatGPT」(次の記事は『東洋経済オンライン』)に関しては、みなさんどうお感じでしょうか。

『"宿題を解くAI"が現実に登場「ChatGPT」凄い中身
小論文の執筆や数学、物理の問題もこなす対話型AI
https://toyokeizai.net/articles/-/644031
小林 雅一 : KDDI総合研究所リサーチフェロー 
 ここ約10年にわたって、世界的なブームを巻き起こしたAI(人工知能)が今、次なるフェーズに突入しようとしている。それはAIが言葉の意味を理解し、私たち人間(ユーザー)と自由に会話したり、共同作業したりできるようになる段階だ。
 その先駆けといえそうのが、昨年11月末にリリース(一般公開)された「ChatGPT(チャット・ジーピーティー)」と呼ばれるAIだ。文字どおり「チャットボット(人間とおしゃべりをする対話型の人工知能)」の一種だが、開発元であるアメリカのOpenAIによればリリースから5日間で利用者数が100万人を突破したという。
 ちなみにフェイスブックが同100万人を突破するまでに約10カ月、インスタグラムでは約2カ月半かかっているから、これらに比べて5日間という異例のスピードはChatGPTに対する注目度の高さをうかがわせる。
■あらゆる質問に筋の通った回答をする
 なぜ、これほど大きな関心を集めたのだろうか。』

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インターネット以降の世界では、子どもたちの「調べ学習」にも大きな変化が生まれました。

「検索」の力に頼る部分がどんどん大きくなって、子どもたちの口から

「ググったらいいんちゃう?」

という言葉が出てくるのも日常茶飯事です。

一方、先生が、

「ウィキペディアの丸写しはアカンで~!」

などと釘を刺すのも、定番のセリフになりました。

ところが、「ネット上で検索し、該当するサイトの情報をコピー&ペーストして、なんとかレポートの体裁を整える」時代が終わろうとしています。

いくつかのキーワードをそろえてAIに問いかければ、すぐさまその答えとなる「一定量の文章」を生成してくれるのです。

この記事の中でも、この種のAIテクノロジーは今後ますます進化していくという展望であり、調べ学習やレポート提出などの課題は、先生の目の前で完成・提出させる形を取らない限り、どこまでが本人の実力のなせる業なのかわからなくなってしまう時代が目前です。

とはいえ、現在でも、

「作文の得意なお母さんが、子どもの読書感想文を書きました」
「塾の宿題の方が大事なので、親が資料を全部そろえました」

などなど、あちこちから聞こえてきますし、

「子どもの字そっくりに書けるようになったわ~!」

という声を聞いたこともあります。

今後、「テクノロジーの進化と学びの関係」はどうなっていくのでしょうか。

さて、最後に最近読んだ本を紹介させていただきます。

国語の読解に関する

『国語の成績は観察力で必ず伸びる』久松由理著 かんき出版

です。

『国語が苦手な子に共通するのは、見た文字を正しく捉えて解釈する「観察力」が足りていないということ。』
『目の前にある情報を見落とさない「気づく目」
自分の考えに固執せず、広い視野でものを見る「客観的な目」
行間を読み、物事の本質を見抜く「見えないものを観る目」』
『本書では、「読解力トレーニング」という新しいアプローチにより、この3つの観察眼を身につけ、読解力と作文力をぐんと伸ばす方法をお伝えします。』

などが謳い文句の本です。

かなり魅力的な内容に思えますね。

実際、「第1章 世界をどう見ているかが、子どもの人生を左右する」の中の

『2 読書を観察してわかった! 読めない子の3つの「読みグセ」
    国語が苦手な子の「読みグセ」①「飛ばし読み」タイプ
    国語が苦手な子の「読みグセ」②「主観読み」タイプ
    国語が苦手な子の「読みグセ」③「文字通り読み」タイプ』

という分析には、私も思い当たるところがありますので、お家でできる練習を考えてみたいと思います。

①「飛ばし読み」タイプとは、一言でいえば、「きちんと文字を追えていない、文字を追うことに慣れていない」タイプでしょう。

小学校の低学年によくある現象ですので、短めの文章から始めて、黙読と音読を丁寧に繰り返してどれだけ文字を追えているかを確認する必要があります。

②「主観読み」タイプとは、「自分なりにこんな内容だなと決めつけて読み進む」タイプといえるでしょう。

このタイプの子どもたちは、ある程度文字を追えるようになっているはずですので、その内容を説明させる練習に進むことが必要でしょう。

「段落ごと、場面ごとに内容について問いかけて、ずれていれば修正する」という作業を繰り返すわけですね。

その際、重要な語や表現を確認しながら語彙力を強化することも必要です。

子どもたちは、思った以上に「言葉を知らない」ことがあります。

③「文字通り読み」タイプは、「文字や語句をきちんと読み取れているが、その奥にある情報を意識できていない」タイプといえるでしょう。

たとえば「先生の難しい話が続いた」とあれば、「先生」「難しい」「話」「続く」というそれぞれの語は読み取れているものの、

「どうして先生が話し始めたのか?」
「話の内容は、どんなものなのか?」
「どんなところが難しいのか?」
「どうして先生は話し続けたのか?」

などにまで「読解」が至っていないわけですね。

このタイプも、内容に関してじっくり親子で「対話」して、深く読む練習を積む必要があります。