2021年最後の木曜日になりました。
明日はいよいよ大晦日、明後日は2022年の元日で、一連の受験ロードが目の前に迫ってきます。
楽しい計画のある人も多いと思いますが、感染力が高いといわれるオミクロン株もじわじわと増えてきている状況です。
日本の新型コロナ対策は相変わらず不安なことばかりですが、今回のメルマガは、教育・受験に関していくつかの記事を引用して2021年の総括をさせていただきます。
まず、次のような記事(いずれも『朝日新聞デジタル』)がありました。
『「別室受験」を高校・中学受験でも検討 オミクロン株の濃厚接触者
https://digital.asahi.com/articles/ASPDW3W47PDWUTFK007.html
来年1月実施の大学入学共通テストなどでの対応をめぐり、松野博一官房長官は27日午前の記者会見で、新型コロナウイルスの変異株「オミクロン株」感染者の濃厚接触者について、大学受験だけでなく、高校や中学受験でも別室での受験を含めた機会の確保を検討していることを明らかにした。
松野氏は、「高校入試の対応も、大学入試の対応に準じた形で別室受験を含め、できる限り受験の機会を確保するように文部科学省において対応を検討中と承知している。中学も同様だ」と述べた。
これに先立ち、岸田文雄首相は、東京都内で記者団の取材に応じ、「できる限り受験機会を確保する方策について、文科相に検討を指示した」ことを正式に表明した。一両日中に具体的な方策を示せるとの見通しも示した。
オミクロン株の感染拡大が懸念されるなかでの受験については、文科省が今月24日、濃厚接触者となった受験生は、宿泊施設への滞在が求められている期間中は受験できず、追試験を受けてもらうことを大学などに通知していた。』
『共通テストの別室受験容認へ オミクロン株巡り、文科省3日で方針撤回
https://digital.asahi.com/articles/ASPDW6F62PDWUTIL00R.html?iref=comtop_7_03
来年1月実施の大学入学共通テストなどでの新型コロナ対応をめぐり、末松信介文部科学相は27日、記者会見を開き、オミクロン株感染者の濃厚接触者は、陰性で無症状であれば受験を別室などで認める方針を明らかにした。文科省は24日、オミクロン株感染者の濃厚接触者について、無症状でも本試験の受験を認めず追試に回ってもらうとの方針を発表していたが、受験生への影響を懸念した岸田文雄首相の指示を受け、3日で撤回した。
会見で末松文科相は「様々な意見が寄せられ、一人でも多くの受験生が適切に受けられるようにすることが必要と考えた」と説明。受験生を混乱させたことについては「もう少し時間をかけて検討すべきだった。不十分なところがあった」と述べた。
文科省は24日、各大学などに示しているコロナ対応のガイドラインを改めた。そのなかで、オミクロン株感染者の濃厚接触者については無症状であっても、PCR検査などで陰性の結果が出ていたとしても本試験の受験を認めず、追試験に回ってもらう方針を示していた。
24日の改定前のガイドラインでは、オミクロン株感染者の濃厚接触者も他の株の濃厚接触者も、「PCR検査で陰性」などの4条件をすべて満たせば、本試験の受験を認めていた。』
オミクロン株の影響で濃厚接触者の数も激増している今、受験生自身も受験生のいるご家族も気が気ではないでしょうが、文科省は相変わらずのドタバタです。
本当に情けない組織です。
いずれにしても、受験生予備軍のみなさんも、「賢い年末年始の過ごし方」の練習をしておいてくださいね。
次に、2021年も12月になって、次のような『産経新聞』の驚きのニュースもありました。
『教育改革で協議会設立へ 与野党幹部が参加
https://www.sankei.com/article/20211215-GKE5EHUWOBIDTGKYO53FAMKHSY/
教育改革で日本再建を目指す「教育立国推進協議会」の設立に向けた発起人総会が15日、東京都内で開かれた。超党派の国会議員らが発起人で、会長に自民党の下村博文元文部科学相、会長代行に日本維新の会の馬場伸幸共同代表や国民民主党の玉木雄一郎代表らが就任した。関係者によると安倍晋三、野田佳彦両元首相を顧問に迎え、来年1月に設立総会を開く。
定期的に会合を開催し、政府に教育改革案を提起する方針だ。会長代行には立憲民主党の中川正春元文科相と公明党の浮島智子元文科副大臣も就いた。
会合で下村氏は「これからの日本は教育でしか立て直しができない。国民運動の流れをつくりたい」とあいさつした。』
並んでいる政治家の名前をみて、みなさんはどうお感じでしょうか。
どう考えても、教育問題を担える人たちには思えません。
彼らがどのような「教育改革」を実行するつもりなのか、想像するだけで恐怖です。
この日本、政治も教育行政も本当にどうなってしまっているのでしょうか。
そんな中、大学受験に関しては次のような『日刊ゲンダイデジタル』の記事がありました。
『大学入試に異変! 18歳人口の減少のなか約半数の私大が定員割れに
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/299107
まもなくスタートする大学入試。年が明けて1月からは共通テストが始まり、受験生はラストスパートの時期だろう。コロナ禍、受験年齢の18歳人口の減少のなか、いま大学受験を巡って大きな異変が起きている。
全国の私立大学の約半数が入学者の定員割れだという。日本私立学校振興・共済事業団が調査した2021年度春の私立大学の入学志願者は、前年度から53万3000人減った383万4000人。
一方、定員に対し合格した学生が入学する入学者の割合(入学定員充足率)は99.81%と、同団体が調査を開始後初めて100%を切った。調査に回答した全国の私立大学597校のうち46.4%、実に約半数の私立大学が定員割れに追い込まれているのである。
合格者は143万7906人と前年比約9万人増えているが、これは大学が入学辞退者を予想し、入学者を確保するため合格者を増やした結果だ。
18歳人口は1992年の204万9000人をピークに減少をたどり、昨年は116万7000人、そして今年は114万1000人と減少している(文科省学校基本調査)。
大学入学者の定員割れ、志願者減による受験生への影響を流通科学大学特任教授・長田貴仁氏が説明する。
「この傾向は今後も変わりません。大学を選ばなければ100%入学は可能です。しかし、生き残る大学と残れない大学が出てくるでしょう。文部科学省の定員超過の是正指導で、難易度の高い大学の合格はさらに難しくなり、そこを狙っていた学生はその下のランクの大学を受験しています。その結果、ややランクの下がる大学も人気が出てランクを上げている」
ただ、地方の大学や小規模な大学は志願者の減少や定員割れで厳しい経営を迫られるという。
先の団体の調査でも、定員が1500人以上の大学は入学定員充足率が100%水準で定員を確保しているが、300人以上400人未満の大学は95.2%。100人未満では87.2%まで下がる。
少子化の影響は志願者、入学者が潤沢に集まる人気大学でも、学生確保のための改革は避けて通れず、規模の拡大と効率化のため統合、合併する大学が急増してきた。
国立大学では昨年4月に名古屋大学と岐阜大学が経営統合、来年4月には大阪市立大学と大阪府立大学が統合し日本最大の公立大学となる。私立大学でも同様で、昨年4月に関西国際大学と神戸山手大学が統合し関西国際大学に、23年には慶応義塾大学が東京歯科大学と統合する計画もあるという。一方、医療、調理系の専門職大学の新設も盛んだ。先の長田氏が言う。
「手に職をつけるだけではなく、4年間専門大学で経営も学ぶことで人生設計がより大きく描ける。低成長時代のなか、目的を持たず皆が行くからと大学進学する傾向はなくなるでしょう」
大学の在り方、意味が問われる時代になった。』
私立大学の中には、以前から
「定員数を確保できない」
「中途退学者が多い」
などの問題を抱えてきたところが少なくありません。
このような傾向がどう推移していくのかと、2018年1月のメルマガでも、
『喘ぐ私立大学』(2018年01月18日)
https://ameblo.jp/maruhide1958/entry-12345417157.html
としてすでに書いてきましたが、今回の上記記事にある通り、
「この傾向は今後も変わりません。大学を選ばなければ100%入学は可能です。しかし、生き残る大学と残れない大学が出てくるでしょう。文部科学省の定員超過の是正指導で、難易度の高い大学の合格はさらに難しくなり、そこを狙っていた学生はその下のランクの大学を受験しています。その結果、ややランクの下がる大学も人気が出てランクを上げている」
という少々不思議な現象も起こっています。
従来の「人気大学とそうでない大学との二極化」という単純な図式ではなく、かなり複雑な状況が進んでいくということでしょうか。
前々回のメルマガにも書きましたが、自分の子どもが大学受験に向けて一歩一歩進んでいくとき、今までとは異なる価値観も必要になってくるということですね。
一方中学受験に関しても、次のような『日刊ゲンダイデジタル』の記事がありました。
『中学受験は人気が二極化 定員割れでも大学進学実績で躍進のケースも
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/299097
9月に行われた四谷大塚、日能研、SAPIX、首都圏模試の4つの模試の受験者数の大幅増加により、2022年度の中学入試に挑む小学6年生の総数は増加の見込みだという。
ご三家や有名大学付属、都立一貫校といった人気校は例年出願倍率が2~4倍で推移していて、競争が激しい。一方で、定員割れしている学校も少なくないという。
中堅校の事情に詳しい進学個別桜学舎塾長の亀山卓郎氏はこう言う。
「首都圏模試の偏差値30~40台のいわゆる中堅以下の学校と難関校では人気が二極化している状況です」
募集に苦労している学校の多くが女子校で、そもそも第1志望ではなく滑り止めとして受験する生徒が多いほか、外部へのアピール不足など、定員割れの理由はさまざまだという。
「多くの受験生が偏差値の高い学校、つまり卒業生の大学進学実績のいい学校を目指すため、当然の結果ではあります。ただ、大学入試の傾向が学科試験中心の一般選抜から、学校推薦選抜やかつてAO入試といわれた総合型選抜への比重が大きくなっていて、今では入試全体の6割ほどになっています。そのため、中堅以下の学校で教育内容を先進的なものに変えた結果、進学実績が上がっている学校が出始めていて、“中学受験では入りやすいのに入学後にしっかり伸びて、出口がいい”お買い得な学校が少しずつ増えている印象です」(亀山氏)
従来の教科学習のほか、ICT教育やグローバル化はもとより、生徒自ら課題を探し調査やまとめを行い、プレゼンを行う探求型学習を推し進めている中堅校から、難関大合格を勝ち得た生徒が増え始めているとのこと。
「総合型選抜では課題提出、小論文、面接などで合否が判定されますが、東京都立大学理学部のゼミナール入試のように、書類選考をして実際に大学で講義、演習を受け、リポートを提出するなど、長期間かけて選考を行うケースもあります。変化する時代に合わせて大学入試も学科一辺倒ではなくなってきているなか、中学入試も偏差値だけでは測れない状況になりつつあります」(亀山氏)
当然、基礎学力は重要だが、詰め込み学習では伸ばせない能力を磨く学校が増えてきているという。こうした中堅レベル以下の学校の躍進が、中学受験の勢力図に少なからず影響を与えるかもしれない。』
いかがでしょうか。
「多くの受験生が偏差値の高い学校、つまり卒業生の大学進学実績のいい学校を目指すため、当然の結果ではあります。ただ、大学入試の傾向が学科試験中心の一般選抜から、学校推薦選抜やかつてAO入試といわれた総合型選抜への比重が大きくなっていて、今では入試全体の6割ほどになっています。そのため、中堅以下の学校で教育内容を先進的なものに変えた結果、進学実績が上がっている学校が出始めていて、“中学受験では入りやすいのに入学後にしっかり伸びて、出口がいい”お買い得な学校が少しずつ増えている印象です」
とある通り、大学受験と同様に、中学受験でも「難関中学とそうでない中学との二極化」という単純な図式では対応できない時代が到来しているようです。
新型コロナの発生以来、世の中はますます混沌としてきていますが、教育・受験の世界でも混沌としてきました。
と同時に、「中学受験の新しい図式」が生まれてきているわけです。
特に日本では、司法・立法・行政のどこをみても道理が通らないことばかり、三権分立の大原則さえ危うい状況です。
そんな日本で子どもたちが生き抜いていくためには、「真の意味で賢くなること」「自分の頭で正しく判断できるようになること」が必須でしょう。
年頭に当たって、お子さんと一緒に「新しい生き方」について考えてみるのもいいのではないでしょうか。
今回はこのへんで。
今年一年、お付き合いありがとうございました。
来年もどうぞよろしくお願いします。