【登場人物】
・黒田…北区在住の会社員。今朝もギリギリ。
・後藤…同じ会社の同僚。たまたま同じ道を走っている。
・カモたち…通勤時間帯にだけ現れるマイペース軍団。
【場面】
新潟市北区、通勤ラッシュの朝。
黒田の車は、いつもより手前のカーブでぴたりと止まっている。
黒田「なんだ…? 事故渋滞か?」
(前の車の向こうで、チョロチョロと動く影)
黒田「……あっ、今日もカモさんか」
田んぼの用水路から、カモの親子がテクテク横断中。
車はみんな、ちゃんと停車して見守っている。
(黒田のスマホが鳴る)
後藤「黒田さん、今どこですか? 道、混んでます?」
黒田「えーっと……“カモ6羽に足止めされてます”」
後藤「は?」
(先頭の軽トラのおじいちゃんが、窓を開けて)
軽トラのじいちゃん「はいはい、急がんでいいぞ〜。
信号よりよっぽど信用できる行列だわ」
(カモたち、完全にマイペースでトコトコ)
黒田「(心の声)この渋滞、クラクション鳴らしたら負けだよなぁ」
カモ軍団、ようやく道路を渡りきる。
最後尾の1羽が、なぜか振り返ってじっと車列を見る。
黒田「……今、会釈した?」
後藤(電話の向こう)「え、カモにまで“ありがとう妄想”してるんですか」
黒田「いや、北区では割と標準装備だから」
(車がゆっくり動き出す)
後藤「で、遅刻しそうなんですか?」
黒田「“理由:カモさん渋滞”って勤怠に書いてもいい?」
後藤「人事に“ほのぼの嘘つくな”って怒られますよ」
黒田「いやほんとなんだって……“北区あるある”なんだって……」
(フロントガラス越しに、
さっきのカモが田んぼの中でバシャバシャ遊んでいるのが見える)
黒田「……まぁいいか。今日は“カモさんの分だけ早足で”会社行こ」
(北区の朝は今日も、信号より弱いけど、
ちょっとだけ心がやわらかくなる“カモさん渋滞”から始まるのだった)
