【登場人物】
・父(健)…スタンプに火がつくと止まらない。
・母(恵)…最初は付き合い、途中から監督。
・ユウ(小学生)…本当は遊具で遊びたい。
【場面】
夏の新潟。家族ドライブ。
車内には「道の駅スタンプラリー台紙」が置かれている。
ユウ「ねぇ、今日どこ行くの?」
健「道の駅!」
ユウ「また!?」
恵「今日は海…とか言ってたよね?」
健「海は“道の駅のついで”にある」
ユウ「海がついでになる世界、こわい」
【場面:1か所目の道の駅】
健「よし!スタンプ台どこだ!」
ユウ「アイス食べたい!」
健「あとで!」
恵「順番が逆じゃない?」
(健、スタンプ台を発見し、息をのむ)
健「……あった……!」
(バン!)
ユウ「今のスタンプ、そんな重いの?」
【場面:2か所目】
恵「次はトイレ休憩ね」
健「トイレの前に、スタンプ」
恵「人間の優先順位を壊すな」
ユウ「ぼく、遊具!」
健「遊具の前に、スタンプ」
ユウ「全部スタンプに負けるじゃん!」
【場面:5か所目(夕方)】
ユウ「もう疲れた…」
恵「だよね。帰ろうか」
健「待って。あと3つで“Bコース達成”なんだ」
ユウ「Bコースってなに!?」
恵「健さん、最初“スタンプなんてついで”って言ってたよね」
健「ついでのはずが、本命になった…」
【ラスト】
家に帰宅。
ユウ「今日、海行ったっけ?」
恵「海…見たよ。車の窓から0.8秒」
ユウ「それ“海”じゃなくて“青い壁”だよ!」
健「でも見て!このスタンプの並び、完璧!」
ユウ「僕の思い出、薄い!」
(翌朝、ユウは自由帳にこう書いた)
「ぼくの家族は、スタンプに飼われている。」
いかがでしたか?笑っていただけましたか?
道の駅スタンプラリーは、最初は「旅の記念」のはずなのに、いつの間にか「集めること」そのものが目的にすり替わっていく
そんな大人のスイッチが入る瞬間を描いてみました。
子どもは遊具、景色、アイス。
親は地図、台紙、インクの残量。
同じドライブなのに、見ている世界がズレていくのが、なんとも言えず可笑しいですよね。
そして実はこの話、私の最近の
温泉スタンプラリーでも“あるある”です。
いよいよ最後、「ここさえ行けばコンプリート!」という山奥のかなり遠い温泉まで気合で辿り着いたのに——
「本日、ボイラー故障のため営業中止」
という、心が折れる貼り紙。
スタンプ帳を握りしめたまま、誰も悪くないのに、誰にもぶつけられない悔しさ。
あの瞬間の沈黙と、「……まあ、また来る理由ができたね」という無理やり前向きな一言まで含めて、ラリーは一つの物語なんだと思います。
スタンプは集まらなくても、思い出だけは確実に増えている——
そう信じて、今日もどこかで必死なラリー旅が続いているのかもしれません。
