【登場人物】
・佐藤会長…町内会長。雪かき歴40年のベテラン。ちょっと押しが強い。
・山田(30代)…雪国初心者の若パパ。昨年越してきて初めて本格的な冬を迎える。
・高橋さん(60代)…自称・健康のために雪かきをする男。口だけは元気。
・鈴木さん(50代)…共働き主婦。朝がとにかく忙しい。
・その他 町内の面々
【場面】
真冬の夜、町内会館。明日のドカ雪予報を受けて、「家の前の雪かきシフト」を決める緊急会議が開かれている——。
佐藤会長「えー、それではこれより、『雪かきシフト会議』を始めます!」
山田「(小声で)シフト制なんですね、雪かきって……会社みたいだ……」
鈴木さん「うちは朝、弁当3つと朝ごはん4人分なんで、とにかく早朝は勘弁してくださいね!」
高橋さん「ワシは健康のためなら、何時でも雪かきするよ! ……ただし、気温がマイナスじゃない時間帯にしてね」
佐藤会長「はいはい、それじゃあまず、問題の“朝4時枠”から決めましょうかね」
山田「(ビクッ)よ、4時……?」
佐藤会長「除雪車が通るのがだいたい5時。その前に家の前をざっとどかしておくと、道がきれいになるんですわ。ここが一番大事な時間帯!」
鈴木さん「一番大事で一番つらい……」
佐藤会長「じゃあ、4時枠、立候補の方!」
(沈黙)
山田「(心の声)誰か……誰か手を挙げてください……!」
高橋さん「……健康には、睡眠も大事だからね!」
佐藤会長「しょうがない。では、若い順に決めていきましょうか」
山田「そんな“体力オーディション方式”やめましょうよ!」
鈴木さん「会長、せめて“人気枠”から決めません? 例えば、朝8時とか」
佐藤会長「ほう、“人気枠”?」
鈴木さん「出勤前にちょっとだけスコップ持って、“いや〜今朝は大変だねぇ”ってご近所さんとしゃべる時間……」
高橋さん「それは確かに人気だな……!」
佐藤会長「では、8時枠に入りたい人?」
(全員、一斉に挙手)
山田「ですよね!」
佐藤会長「……はいじゃあ、8時枠は“全員希望”っと。意味ないですな」
山田「会長、こういうのって、スマホでシフト表作って、みんなで入力するとか……」
佐藤会長「出た、IT!」
高橋さん「ワシ、ガラケーなんだけど、雪も“パカッ”と折りたためたらいいのにねぇ」
鈴木さん「会長、紙でいいです。どうせ最後は“なんとなく”で決まりますから」
佐藤会長「よし、じゃあこうしましょう。4時〜6時は“早起き自慢組”、6時〜8時は“出勤前組”、8時以降は“余裕のある人組”」
山田「そのネーミングで、誰が4時に行きたがるんですか」
高橋さん「会長は早起きなんだろ? 4時、“会長専属枠”でいいじゃないか」
佐藤会長「いやいやいや、ワシにも睡眠というものが……」
鈴木さん「じゃあこうしましょう。4時枠、“会長と、その日たまたま目が覚めた人”」
山田「偶然頼み!!」
(1時間後、ホワイトボードには複雑な矢印と名前がびっしり)
山田「あの……これ、本当に誰がいつどこをやるのか、会長以外理解できてない気が……」
高橋さん「ワシも、自分の名前が3か所に書いてあるのが気になるんだが……」
鈴木さん「私なんて、『もし起きてたら手伝う枠』って、ほぼ“念”ですよね」
佐藤会長「大丈夫大丈夫! こういうのは“雰囲気”が大事なんですわ!」
(ガラッ、と誰かがドアを開ける)
近所のおじさん「会長ー! 今、外見たかね?」
佐藤会長「え? まだ会議中で……」
近所のおじさん「さっき市の除雪車がガーッと通っていって、道、もうピカピカだよ!」
(一同、外を見に出る)
山田「……ほんとだ、めちゃくちゃきれい……」
高橋さん「ワシらの“4時枠”とは、一体……」
鈴木さん「このホワイトボードに費やした1時間、何だったんでしょうね……」
佐藤会長「えー……では、本日の議題をまとめます!」
山田「(もうまとめるんだ……)」
佐藤会長「本日のシフト表は——」
(バサッと紙をひらひらさせ)
佐藤会長「“来年の予行練習”ということで、大事に保存しておきます!」
山田「来年も、きっと除雪車が全部やってくれますよ!」
高橋さん「その時はまた、予行練習しようじゃないか!」
鈴木さん「“雪かきより会議が好きな町内会”って、新潟あるあるなんですかね……?」
一同「……あるかもしれない……」
(外では、きれいになった道に、静かに雪が降り始めている)
いかがでしたか?笑っていただけましたか?
雪かきよりも、まず「雪かき会議」のほうが体力を使っているんじゃないかという一編でした。
4時枠が永遠に埋まらないホワイトボード、リアルに思い当たる方も多いのではないでしょうか。
「地域の力で雪と闘う!」と言いながら、実際に闘っているのは、
眠気と、早起きのプライドと、「できれば他の人がやってくれないかな」という人間の本音。
結局、除雪車が全部きれいにしてくれて、
「今日は予行練習だったことにしよう」というオチも、
どこか“日本の会議文化あるある”と重なって見えてきます。
本番よりも打ち合わせが長い。
雪かきよりも「雪かきシフト会議」のほうが豪雪。
そんな新潟の冬の人情とユーモアを、クスッと感じていただけたらうれしいです。
