【登場人物】
・浩一…40代。最近「村上サーモン」に目覚めた父。沼。
・彩…その妻。家計担当。
・娘・はるか(中2)…冷静ツッコミ役。
・ばあちゃん…なんでも昔と比べる。
【場面】
田中家の食卓。今夜のおかずは——「村上サーモン尽くし」。
はるか「……ねぇママ。今日のメニュー説明してくれる?」
彩「えーと、サラダ、茶わん蒸し、味噌汁、卵焼き……と、“謎のオレンジ色の何か”」
浩一「全部! 村上サーモンだ!」
はるか「知ってた。」
浩一「聞いてくれ。村上サーモンはな、刺身よし、焼いてよし、のせてよし。つまり——“世界の上に乗れる魚”なんだ」
彩「世界に乗せる前に、家計に乗っかってるけどね、この値段」
ばあちゃん「昔はな、鮭カマを焼いて、それで十分贅沢だったんだわ」
浩一「ばあちゃん、それはそれ、これはこれ!さぁ見てくれ、“村上サーモン on 白ごはん”!」
はるか「それはわかる。王道。」
浩一「続いて、“村上サーモン on 冷ややっこ”!」
彩「豆腐が急にパリピみたいになったね」
はるか「たんぱく質 on たんぱく質で、筋トレ系インフルエンサーの飯みたい」
浩一「トドメはこれだ。“村上サーモン on プリン”!」
全員「やめろぉぉぉ!!」
彩「スイーツにまで領土拡大するのはやめて!」
ばあちゃん「そんなことするなら、ばあちゃんに一切れよこしなさい」
浩一「いや待て、見た目はアレだけど、“塩味×甘味”のマリアージュってやつで——」
はるか「パパ、それは“迷走”って読みます」
(プリンからサーモンを救出して皿に移す彩)
彩「ルール決めます。村上サーモンに“のせていいもの”は、ごはん・パン・サラダ・豆腐まで!」
浩一「じゃあ、ケーキは?」
はるか「アウト。バースデーケーキの上で、サーモンがロウソクみたいに立ってたら泣く」
ばあちゃん「でもまあ……」
ばあちゃん「何にでも乗せたくなるくらい、うまいってことだわね」
彩「ほどほどにしてくれるなら、たまにはいいよ。村上サーモンの日」
浩一「本当か!? じゃあ次は——」
はるか「その前に、“村上サーモン貯金”から始めてください。家計が沈む前に」
(テーブルの真ん中には、プリンから救出された村上サーモンが、
ちょっとだけホッとした顔で輝いている——気がした)
