【第8章】寄り道が本編だった
――最短距離では見えない景色がある。
【登場人物】
・男(65歳)
・妻
・宇宙人
65歳の男が、人生を振り返っていた。
その瞬間。
ドッカーーーーン!!
庭に巨大な宇宙船が墜落した!
宇宙船から宇宙人が飛び出してきた。
宇宙人:「ついに発見したぞ!」
男:「な、何だ!?」
宇宙人:「あなたを探していた!」
男:「俺を!?」
宇宙人:「銀河系全域で捜索していたんです!」
宇宙人:「お願いです! 地球を救ってください!」
男:「はあ!?」
宇宙人:「実は、地球の未来を決める宇宙会議が開かれます」
男:「それで?」
宇宙人:「地球代表を選ぶため、全人類の人生を分析しました」「成功者、科学者、政治家、経営者……」
男:「すごい人ばかりだ」
宇宙人:「ところが、誰も地球全体を理解していない!」「みんな目的地に一直線だからです!」
男:「……なるほど」
宇宙人、男の肩をつかむ。
「しかし、あなたは違う!」
男:「えっ?」
宇宙人:「人生で道を間違え続け、誰より多くの景色を見た!」
男:「褒められてるのか?」
宇宙人:「地球代表に任命します!」
妻:「まあ!」
男:「俺が地球代表!?」
翌日。
銀河宇宙会議。
何千もの宇宙人が見守る。
議長:「地球代表よ。あなたは人生で何を学びましたか?」
男、ゆっくり立ち上がる。
「人生に、無駄な遠回りなどありません」
会場、静まり返る。
男:「道に迷ったから、人と出会えた」
宇宙人たち、うなずく。
男:「失敗したから、知らない世界を見られた」
議長、涙ぐむ。
男:「最短距離では見えない景色があるんです!」
会場、割れんばかりの拍手!
宇宙人:「素晴らしい!」
議長:「地球を救うにふさわしい人物だ!」
男、感激。
議長:「では、地球代表に最後の質問です」
男:「何でしょう?」
議長:「地球は、宇宙のどの方向にありますか?」
男:「…………」
議長:「あなた、地球から来たんですよね?」
男:「はい」
議長:「帰り道は?」
男:「……分かりません」
議長:「えっ?」
男:「宇宙船の中で寝てたもんで」
議長:「地球代表が地球に帰れない!?」
男、胸を張る。
「大丈夫です! 遠回りすれば、いつか着きます!」
それから100年後。
宇宙の果て。
男の乗った宇宙船が、まだ飛んでいる。
男:「いやぁ、いろんな星を見たなぁ!」
宇宙人:「地球、まだ見つかりません……」
男:「でも、景色だけは誰より見たぞ!」
宇宙人、泣きながら叫ぶ。
「もう地球を救う前に、宇宙を全部観光してるじゃないですかーーー!!」
いかがでしたか?笑っていただけましたか?
人生、遠回りばかり。
でも、そのおかげで見られた景色があります。
失敗も、転職も、思いがけない出会いも、すべてが自分だけの風景になる。
人生、だいたい予定外。
