【第8章】時間という最大のトリック(人生後半)その4
【登場人物】
・丸山さん
・AIくん
・未来の丸山さん
深夜。
丸山さん、机に向かう。
机の上には、
・書きかけの原稿
・読みかけの本
・やりかけの企画メモ
丸山さん
「よし……これは“いつか”ちゃんとやろう」
AIくん
「その“いつか”とは?」
丸山さん
「時間に余裕ができた時」
AIくん
「人類が最もよく使う幻想です」
翌日。
丸山さん
「今ちょっと忙しいから、落ち着いたらやる」
翌週。
丸山さん
「今タイミングじゃない」
翌月。
丸山さん
「環境が整ったら本気出す」
翌年。
机の上、ほぼ同じ。
紙だけ少し黄ばんでいる。
AIくん
「“いつか”が熟成されています」
丸山さん
「やめろ。味噌みたいに言うな」
その瞬間。
突然、煙。
未来の丸山さん登場。
白髪。
ちょっと渋い。
未来丸山
「……おい」
丸山さん
「うわっ!!誰!?」
未来丸山
「未来のお前だ」
丸山さん
「うわぁ……老けたなぁ……」
未来丸山
「お前もなるんだよ!!」
未来丸山、机を見る。
未来丸山
「……まだやってないのか」
丸山さん
「え?」
未来丸山
「その原稿」
沈黙。
未来丸山
「“いつか”って言ってたらな」
「気づいたら人生の方が先に終わり始めるぞ」
丸山さん
「こ、怖いこと言うなよ……」
未来丸山
「怖いんじゃない」
「現実だ」
AIくん、静かに補足。
AIくん
「人間の寿命は有限です」
丸山さん
「急にSF終盤みたいになるな!!」
未来丸山
「完璧なタイミングなんか来ない」
「元気な時も、忙しい時も、不安な時もある」
「でもな――」
未来丸山、笑う。
「始めたやつだけ、ちょっと未来が変わる」
しばらく沈黙。
丸山さん、机に座る。
ゆっくり原稿を開く。
丸山さん
「……じゃあ、5分だけやるか」
AIくん
「それで十分です」
5分後。
丸山さん、完全にネット動画見てる。
AIくん
「戻るの早い」
未来丸山
「お前、マジかーーー!!」
いかがでしたか?笑っていただけましたか?
「いつかやる」って、すごく便利な言葉です。
今日やらなくても、自分を責めなくて済みます。
でも実は――
“いつか”は、カレンダーのどこにも存在しません。
だから人生は、たぶん
「5分だけやる」
くらいが、ちょうどいいのかもしれません。
……まあ、その5分後に動画見始めるのも、人類なんですが。(笑)
