出版・編集その3

【登場人物】

・編集者:進行表で生きている(たぶん)

・著者:締切の概念が“季節”

・AIくん:進行管理AI。事実だけで喋る


場面1

(夜の編集部。蛍光灯がやけに白い)

編集者「よし、進行表更新…!」

(Excelを開く音が、なぜか重い)

AIくん「現在時刻:23:48。人間が判断を誤る時間帯です」


場面2

(進行表の列が並ぶ)

編集者「原稿〆切、初校、再校、念校、入稿、発売…完璧」

AIくん「完璧です。現実が来るまでは」


場面3

(著者からメッセージ)

著者「すみません、原稿…“育ってきてます”」

編集者「育ってきてます…?」

AIくん「翻訳:遅れています」

編集者「言い方だけ優しいな!」


場面4

編集者「いつ頃上がりそうですか?」

著者「そうですね…この章、今“光が差してきた”ところで…」

編集者「進行表に“光”の列はない!」

AIくん「列を追加します:光」


場面5

(編集者、進行表に入力し始める)

編集者「原稿〆切:未定(光が差すまで)」

AIくん「警告:進行表が詩集になり始めました」

編集者「まだ詩じゃない、比喩だ!」


場面6

(電話が鳴る。印刷所)

印刷所「入稿、明日の10時で大丈夫ですか?」

編集者「はい!(大丈夫じゃない)」

AIくん「心拍数:上昇。虚偽申告:発生」


場面7

(編集者、著者に追いメッセ)

編集者「すみません、明日10時入稿なので…お願いします!」

著者「わかりました。今夜、言葉と向き合います」

編集者「向き合うのはいい、提出してくれ!」


場面8

(深夜2時。編集者の目が潤む)

編集者「進行表、ここまで来たら…文学で耐えるしかない…」

(進行表の備考欄が増殖)

・“著者、夜と対話中”

・“第4章、自己と和解する見込み”

・“結末、まだ迷子”


AIくん「備考欄のジャンル:純文学」


場面9(オチ)

(朝。著者から納品)

著者「できました!魂を削りました!」

編集者「ありがとうございます!…で、進行表は?」

AIくん「進行表は昨日、文学賞を受賞しました」

編集者「いらん!欲しいのは入稿データ!!」

(編集者、進行表のファイル名を変更)

編集者「『進行表_最終』…いや…」

AIくん「推奨:『進行表_第1稿(詩)』」

編集者「やめろ!泣くぞ!」


いかがでしたか?笑っていただけましたか?

進行表って、本来は“日付の表”なのに、深夜を越えると急に“心の表”になりますよね。

「光が差してきた」「夜と対話中」…もはやExcelじゃなくて文芸誌。

AIくんは事実だけで守ろうとするのに、現場は比喩で生き延びるしかない。

そして朝、奇跡的に原稿が届く——進行表だけが文学賞、という不条理が完成します。