【登場人物】

・健司…毎年フラグを立てる男。

・麻衣…慎重派。

・近所の佐藤さん…経験値が高い。

・スタッドレス(心の声)…外されると寂しい。




【場面】

3月下旬。道路は乾き、空は青い。

健司は車の前で、スタッドレスを見つめている。




健司「……もう雪、降らんでしょ」


(スタッドレス心の声)

スタッドレス「その一言が一番こわい」


麻衣「やめて、“言ったら降る”やつ」

健司「いや、今年は違う。空が春だ」




【場面】

タイヤ交換後。

スタッドレスは玄関脇に整列し、少ししょんぼり。


(スタッドレス心の声)

スタッドレス「役目を終えた感…

でも本当は、もう一回呼ばれる気がする…」




その夜、天気予報。


アナウンサー「明日の朝、新潟県内は山沿いを中心に…」

麻衣「ほら来た」

健司「山沿いでしょ?」


アナウンサー「平地も大雪のおそれ」


健司「……平地も?」

(スタッドレス心の声)

スタッドレス「おかえり、って言っていい?」




【場面】

翌朝。窓の外は真っ白。ドカ雪。


健司「……え」

麻衣「伝統行事、完了」


(車庫でノーマルタイヤがつぶやく)

ノーマル「俺、聞いてない…」




【ラスト】

近所の佐藤さんが外で雪かきをしている。


佐藤さん「おー健司さん、替えたね?」

健司「……はい」

佐藤さん「春はね、“焦った人”から叩くんさ」


麻衣「名言みたいに言うな」


(スタッドレスは玄関で静かに泣いていた。

“春よ来い”と。)


いかがでしたか?笑っていただけましたか?


新潟の春は、カレンダーではやって来ますが、

実際に来るかどうかはタイヤが一番よく知っています。


「もう雪降らんでしょ」

この一言は、ほぼ呪文。

唱えた翌日にドカ雪が来るあたり、もはや年中行事です。


スタッドレスを外した瞬間に感じる、

あの小さな不安と謎の胸騒ぎ。

そして翌朝、窓を開けたときの

「……知ってた」という静かな絶望。


それでも毎年やってしまうのが、新潟県民。

春を信じたい気持ちと、雪を恐れる理性のせめぎ合い。

このコントは、

そんな“希望と後悔の境目”に立つすべての人へ捧げます。


来年もきっと、

同じセリフを言って、

同じ雪を見ます。