【登場人物】
・亮…大学生。一人暮らし。
・母…新潟の実家在住。「米は愛」が口ぐせ。
・父…無口だが米にはうるさい。
【場面】
正月帰省のラスト。玄関にはスーツケースと——巨大な米袋。
母「はい亮、これ持っていきなさい。新米コシヒカリ、10キロ!」
亮「え、また10キロ!? まだ前回のが半分以上あるんだけど」
父「米は腐らん。食えば減る」
亮「その“食えば減る”が問題なんだよ……」
【場面:アパートに戻った亮の部屋】
ワンルームの隅に、米袋が三つ積んである。
亮「……ここはコシヒカリ倉庫か?」
(炊飯器の横のメモ:“一日3合ノルマ”と母の字)
亮「スポーツ選手でもこんなに食べないよ……」
数日後、母からビデオ通話。
母『亮、ごはんちゃんと食べてる?』
亮「食べてるよ。朝も夜も。今、白米に白ごまかけて“白×白コーデ”で……」
母『いいわね〜。じゃあまた送るね』
亮「ちょっと待って!? “減ったら送る”じゃなくて、“食べてると送る”システムなの?」
【場面:さらに数週間後】
部屋の一角、米袋タワー。
友人「おまえんち、災害備蓄ガチすぎない?」
亮「ちがう、全部“母の愛”」
友人「じゃあ遠慮なく“愛”ちょっともらっていい?」
亮「ぜひ持ってって。うちの愛、シェア制だから」
春休み、再び実家。
母「亮、お米ちゃんと食べてる?」
亮「食べてる食べてる。友だちも食べてる」
母「それはよかった。じゃあ今度は——」
(押し入れから、さらに大きい袋を取り出す)
母「“業務用サイズ”にしておいたから!」
亮「愛の“業務拡大”やめて!!」
父「心配するな。米は腐らん。食えば減る」
亮「そのセリフ、もうホラーに聞こえるんだよ……」
(こうして亮のアパートは、
いつでも誰でも泊まれる“コシヒカリ食べ放題宿”になっていくのだった)
