【登場人物】


  • ヒロシ:鈍感寄りの夫
  • アヤ:感情は隠すタイプだと思っている妻





夕食後のリビング。


ヒロシ「ただいまー。今日さ、飲み会延長しちゃってさ〜。」

アヤ「ふーん。」


ヒロシ「……怒ってる?」

アヤ「怒ってないよ?」


(※声のトーンは−5度、皿を片づける音は+300%)




ヒロシ「えっと、LINE返せなくてさ、電話も——」

アヤ「べつに。そういう人だって分かってるから。」


ヒロシ「いや、それはもう“見限りコメント”なんよ。」




沈黙の中、アヤがお茶を置く。

コトン(やや強め)。


ヒロシ「その“コトン”の強さで気持ち伝えるのやめて。」

アヤ「普通だけど?」


ヒロシ「普通の音に“話しかけるなオーラ”乗ってるのよ。」




少しして。


ヒロシ「ごめん。心配させたのは、悪かった。」

アヤ「……別に、心配なんてしてないし。」


ヒロシ「してたでしょ?」

アヤ「……ちょっとだけ。」


ヒロシ「“ちょっとだけ怒ってる”くらいのほうが助かるな。」

アヤ「なんで?」

ヒロシ「“怒ってない(=MAX怒ってる)”より分かりやすいから。」


アヤ、吹き出してしまう。


アヤ「……次からは“普通に怒る”から気をつけて。」

ヒロシ「それはそれでこわい。」




いかがでしたか?笑っていただけましたか?

「怒ってないよ?」ほど、世界でいちばん信用ならない言葉はないかもしれませんね。

遠回しのサイン合戦より、ちょっとだけ素直に「怒ってる」と言えたほうが、案外平和なのかもしれません。