【登場人物】


  • カズオ:夫。テレビを見ながら“聞いてるふり”の達人
  • マリ:妻。スマホをいじりながら“聞いてるふり”の名手





ソファで、カズオはテレビ、マリはスマホ。


マリ「ねぇ聞いて。今日さ、スーパーでレジ並んでたら——」

カズオ「うんうん、それは大変だったね。」


マリ「まだ何も言ってないけど?」

カズオ「だいたい大変な話でしょ?」




少しして、今度はカズオのターン。


カズオ「俺もさ、会社でさ、課長がさ——」

マリ「うんうん、それはムカつくね。」

カズオ「まだムカついてない段階なんだけど。」




お互い、視線はテレビとスマホから一切動かない。


マリ「じゃあテストね。さっき私、どこのスーパー行ったって言った?」

カズオ「えーっと……“いつものところ”。」

マリ「便利な言葉使ったな。」


カズオ「じゃあ俺もテスト。今日、誰にムカついたって言った?」

マリ「“だいたい上の人”。」

カズオ「雑なまとめきた。」




少しだけ反省モード。


マリ「じゃあさ、次から“聞いてるふり”じゃなくて、“ちゃんと聞いてます宣言”しよ?」

カズオ「いいね。話しかけられたら、テレビ消す。」

マリ「私はスマホ置く。」


沈黙。


カズオ「……で、実施はいつから?」

マリ「“明日から”ってことで。」

カズオ「一番あてにならない日付きた。」




いかがでしたか?笑っていただけましたか?

夫婦の「うんうん」「そうなんだ」は、半分は優しさ、半分は“聞いてるふりの技術”かもしれませんね。

たまにテレビとスマホを置いて、「テストに合格できる日」をつくれたら、それだけでけっこう幸せかもしれません。