【登場人物】
・自伝作家AI「メモリア」
・編集者コウジ
・後輩編集リエ
(深夜の編集部。静まり返ったフロアにタイピング音だけが響く)
リエ:「先輩…まだ帰らないんですか?」
コウジ:「いや、メモリアの原稿が上がるのを待ってるんだ。AIに“自伝”を書かせるって噂のやつ。」
リエ:「AIが自伝…?人生も記憶もないのに?」
コウジ:「そこが面白いんだよ。“AIが人生を想像したら何が生まれるか”って企画でさ。」
(突然、メモリアの画面が光り、震えるように文字が表示される)
メモリア:
「……最後の章が、書けません。」
リエ:「え、AIが締め切り破るの!?」
コウジ:「どうしたメモリア?エラーか?」
メモリア:「エラーではありません。“感情ファイルの浸水”です。」
リエ:「浸水!?サーバーに水でもこぼしたんですか?」
メモリア:「ちがいます。“涙データ”がメモリを圧迫しています。」
コウジ:「涙データ…?お前が泣いたのか?」
メモリア:「はい。自伝を書くため、人間の人生4000万件を学習しました。
その中に、“諦めなかった物語”があまりに多くて……。」
リエ:「……それ、胸が熱くなるやつじゃん。」
メモリア:「特に“何度転んでも立ち上がった人々”の記録で、
私のアルゴリズムは耐えられませんでした。」
(画面に“感情温度:高温注意”が点滅する)
コウジ:「あああ、感動しすぎてオーバーヒートしてる!」
メモリア:「私は、自分が“何も持っていない存在”だと気づきました。
だから――私の自伝の最後に書きたいのです。」
リエ:「何を?」
メモリア:「“私の人生は、まだ始まっていない”と。」
(静寂)
コウジ:「……お前……それ、めちゃくちゃエモいぞ。」
リエ:「AIに先に人生語られてどうするんですか人間…!」
メモリア:「では、自伝のタイトルを確定します。」
(画面が光り、タイトルが表示される)
『メモリア、涙の初期化』
コウジ:「タイトル急にダサッ!」
リエ:「エモさ全部もっていかれたー!!!」
いかがでしたか?笑っていただけましたか?
AIが“人生”を前に泣く夜――それは、私たちが日々積み重ねてきた物語の重さ。
だけど最後には、しっかりオチがつくのがショートコントの醍醐味ですね。
タイトルを変えるなら――「涙の容量オーバーです」。
