【登場人物】

  • ユウジ(50代、頑固な夫。口下手)
  • ミホ(50代、冷静な妻。料理上手)
  • 長女(影ナレのみ)

【場面】

土曜の朝、リビング。

空気は冷蔵庫より冷たい。

夫婦喧嘩、3日目突入。

【本編】

ユウジ(新聞をめくりながら、チラ見)

「……」

ミホ(台所で洗い物をしているが、目も合わさない)

「……」

(静寂の中、炊飯器の「ピピッ♪」という音だけが元気)

ユウジ(小声で)

「…あのさ、今日は昼…何か…食べる?」

ミホ

「別に。冷蔵庫に昨日の残りあるでしょ」

ユウジ(むっすぅ)

「……別に聞いてみただけだよ!」

(それから1時間後)

テーブルの上に、海苔で顔が描かれたおにぎりが2つ置かれている。

ひとつは“すまし顔”、もうひとつは“怒り顔”。

ユウジ

「…なにこれ」

ミホ

「あなたが“すまし”で、私が“怒り”ね」

ユウジ(思わず吹き出す)

「怒り顔にしては…かわいいじゃん…」

ミホ

「その“すまし顔”の口元、にやけてるけど?」

(2人、無言でおにぎりを手に取る)

ユウジ

「……梅干しか、俺の好きなやつ」

ミホ

「…こっちはツナマヨ。私の」

(もぐもぐ。なぜか涙目)

長女(ナレーション風)

「こうして、我が家の冷戦は、おにぎりによって終結した。

なお現在、母は“おにぎり仲裁人”として、近所で密かに人気である」



いかがでしたか?笑っていただけましたか?

夫婦の関係って、言葉よりも“ごはん”が効く時があるんですよね。

特におにぎり、あれはもう“平和の象徴”です。

のりで顔描いて渡されたら、そりゃ笑うでしょ。

※ただし「顔にするな」って怒られるパターンもあります。ご注意を。